ハンセン病の予防法及び診断・治療法の開発・普及に関する研究

文献情報

文献番号
201420018A
報告書区分
総括
研究課題名
ハンセン病の予防法及び診断・治療法の開発・普及に関する研究
課題番号
H24-新興-一般-009
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
向井 徹(国立感染症研究所 ハンセン病研究センター 感染制御部)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木定彦(北海道大学 人獣共通感染症リサーチセンター)
  • 牧野正彦(国立感染症研究所 ハンセン病研究センター 感染制御部 )
  • 石井則久(国立感染症研究所 ハンセン病研究センター)
  • 宮本友司(国立感染症研究所 ハンセン病研究センター 感染制御部 )
  • 前田百美(国立感染症研究所 ハンセン病研究センター 感染制御部 )
  • 鮫島朝之(国立療養所星塚敬愛園)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
31,367,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ハンセン病の制圧は、世界共通の目的である。現状では世界的に毎年の新規登録患者数は横ばいであり、加えて薬剤耐性菌による発症、再発・再燃も年々数を増すなど新たな問題も浮上している。また、わが国では症例数が極めて少ないため、一般人、医療従事者等へのハンセン病に関する知識の啓発・教育の必要性が存在する。これら諸問題の解決を目的とし以下の研究を行った。
1.らい菌の特性に関する研究(宮本)
2.薬剤耐性獲得機構解明とその迅速感受性試験法開発への応用(鈴木)
3.再燃・再発に関する免疫学的診断法の開発(鮫島)
4.免疫療法の開発(前田)
5.ハンセン病・結核共通ワクチンの免疫学的評価(牧野)
6.ハンセン病ワクチンの開発(向井)
7.ハンセン病の診療ネットワークと啓発に関する研究(石井)
研究方法
1.らい菌及び対照としてM. bovis BCG菌より菌体内成分を抽出し蛋白・脂質成分を除去後CE-MSにより代謝化合物の定性・定量比較解析を行った。
2.組換えらい菌Gyr A及びGyr B蛋白を発現・精製し、 ジャイレース活性の定量・反応速度定性を行い、簡易検出法の開発を進めた。
3.回復者末梢血単核球細胞の菌体成分等による刺激に対し産生される各種サイトカインをELISA、フローサイトメトリーによりハンセン病病型ごとに検討した。
4.らい菌感染樹状細胞より放出されるエキソソームを分離精製し、免疫活性化能・含有蛋白解析・含有miRNAの解析を行った。
5.新規組換えBCGワクチン候補の免疫学的活性・らい菌増殖抑制効果をマウス足蹠法により検討した。
6.各種新規組換えBCGワクチンの長期にわたる抗原発現安定性及びらい菌接種サルの鼻腔洗浄液、血清を経時的に採取し観察を進めた。
7.ハンセン病診療に欠けている要素を抽出し、それらを補う資料や情報を提供した。皮膚科医師等を対象にハンセン病講習会を開催した。新規患者に対する検査・鑑別・診療の指導を行った。
結果と考察
1. らい菌とBCGのCE-MS代謝関連物質比較の結果、らい菌ではアミノ酸関連代謝物質が質・量ともに偏在した。これは、他の抗酸菌と比べ非常に特徴的であり病態解明の一助と考えられた。
2. 組換えジャイレース蛋白の諸活性比較より、変異導入は薬剤耐性のみならず酵素活性速度にも大きな差が生じるものが存在した。しかし、臨床上の耐性菌の配列と矛盾するものがあり、耐性に関し未知の補完的機構の存在が示唆された。
3. ELISA, FACSの結果より、少菌型でIL-10の産生が有意に高かった。再燃例の解析より、再発の早期診断にはサイトカイン産生解析に加え、細胞群のフェノタイプ解析が有用であることが判明した。
4. らい菌感染樹状細胞より放出されるエキソソームの解析より、刺激法によりCD63の含有量及び各種miRNAの存在比が異なることが判明し、新たな発想に基ずく治療法の開発が期待された。
5. 新規組換えBCGは、抗原性において、効率的な免疫誘導とらい菌増殖抑制を惹起し、有望なワクチン候補であることを示した。
6.各種新規組換えBCGワクチンの細菌学的検討により非常に強いpromoterでは、長期継代により発現が不安定になったが、弱、中のpromoterでは安定した抗原の発現・分泌が観察され、実用応用が可能であると考えられた。らい菌接種カニクイザル1頭より鼻腔洗浄液中に菌の排泄が検出され、持続感染していることが判明した。
7. 講習会には17名の皮膚科医が参集し、継続した教育機会が必要と考えられた。本年度の新規患者は5名で、日本人は1名、他は外国人であった。
結論
各研究課題は、ハンセン病対策にさらなる発展を示す成果と考えられた。

公開日・更新日

公開日
2015-04-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201420018B
報告書区分
総合
研究課題名
ハンセン病の予防法及び診断・治療法の開発・普及に関する研究
課題番号
H24-新興-一般-009
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
向井 徹(国立感染症研究所 ハンセン病研究センター 感染制御部)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木定彦(北海道大学 人獣共通感染症リサーチセンター)
  • 牧野正彦(国立感染症研究所 ハンセン病研究センター 感染制御部 )
  • 石井則久(国立感染症研究所 ハンセン病研究センター)
  • 宮本友司(国立感染症研究所 ハンセン病研究センター 感染制御部 )
  • 前田百美(国立感染症研究所 ハンセン病研究センター 感染制御部 )
  • 鮫島朝之(国立療養所星塚敬愛園)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ハンセン病の制圧は、世界共通の目的である。現状では世界的に毎年の新規登録患者数は20数万人のまま横ばいであり、加えて薬剤耐性菌による発症、再発・再燃も年々数を増すなど新たな問題も浮上している。また、わが国では症例数が極めて少ないため、一般人、医療従事者等へのハンセン病に関する知識の啓発・教育の必要性が存在する。これら諸問題の解決を目的とし以下の研究を行った。

1.らい菌の特性に関する研究(宮本)
2.薬剤耐性獲得機構解明とその迅速感受性試験法開発への応用(鈴木)
3.再燃・再発に関する免疫学的診断法の開発(鮫島)
4.免疫療法の開発(前田)
5.ハンセン病・結核共通ワクチンの免疫学的評価(牧野)
6.ハンセン病ワクチンの開発(向井)
7.ハンセン病の診療ネットワークと啓発に関する研究(石井)
研究方法
1.らい菌の代謝に関し、M. smegmatisの予想相同遺伝子破壊株解析およびらい菌体内成分を抽出し蛋白・脂質成分を除去後CE-MSにより代謝化合物のBCGとの定性・定量比較解析を行った。
2.各種変異導入組換えらい菌Gyr A及びGyr B蛋白を発現・精製し、各種キノロン系薬剤によるジャイレース活性の定量・反応速度定性を行い、簡易検出法の開発を進めた。
3.回復者末梢血単核球細胞の菌体成分等による刺激の条件検討および産生される各種サイトカインをELISA、フローサイトメトリーにより病型ごとに検討した。
4.らい菌感染樹状細胞より放出されるエキソソームを分離精製条件の検討を行い、免疫活性化能・含有蛋白解析・含有miRNAの解析を行った。
5.新規組換えBCGワクチン候補のヒト末梢血単核球による免疫学的活性・マウス足蹠によるらい菌増殖抑制効果を検討した。
6.強度の異なる3種のpromoterによる新規組換えBCGワクチンの長期抗原発現安定性及びらい菌接種サルの鼻腔洗浄液、血清を経時的に採取し観察を進めた。
7.ハンセン病診療に欠けている要素を抽出し、それらを補う資料や情報を提供した。皮膚科医師等を対象にハンセン病講習会を開催した。新規患者に対する検査・鑑別・診療の指導を行った。
結果と考察
1. 遺伝子破壊株解析より特定の遺伝子がアミノ酸類の産生量の変化が認められ、らい菌体のCE-MSの結果、らい菌ではアミノ酸関連代謝物質が質・量ともに偏在した。これは、他の抗酸菌と比べ非常に特徴的であり病態解明の一助と考えられた。
2. 組換えジャイレース蛋白の諸活性比較より、変異導入は薬剤耐性のみならず酵素活性速度にも大きな差が生じるものが存在し、また、新規キノロンが低濃度で薬剤耐性配列に効果を有することを示した。
3. 刺激の条件を検討後、ELISA・FACSの結果より、少菌型でIL-10産生が有意に高かった。再燃例の解析より、再発の早期診断にはサイトカイン産生能に加え、細胞群のフェノタイプ解析が重要な因子であることが判明した。
4. らい菌感染樹状細胞より放出されるエキソソームの解析より、らい菌由来抗原、CD63の含有量及び各種miRNAの存在比が異なることが判明し、新たな発想に基づく治療法の開発が期待された。
5. 新規組換えBCGは、抗原性において効率的な免疫誘導とらい菌増殖抑制を惹起し、有望なワクチン候補であることを示した。
6.各種新規組換えBCGワクチンの構築をかくにん完了し、細菌学的検討により非常に強いpromoterでは、長期継代により発現が不安定になったが、弱、中のpromoterでは安定した抗原の発現・分泌が観察され、実用応用が可能であると考えられた。らい菌接種カニクイザル数頭より鼻腔洗浄液中に菌の排泄が検出され、持続感染していることが判明した。
7. 講習会は年一回大阪市、福岡市、札幌市において開催し、計56名の皮膚科医が参集し、継続した教育機会が必要と考えられた。3年間の新規患者は11名で、日本人は5名、他は外国人であった。
結論
各研究課題は、ハンセン病対策の今後につながる成果を得たと考えられた。

公開日・更新日

公開日
2015-04-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201420018C

収支報告書

文献番号
201420018Z