ワクチンにより予防可能な疾患に対する予防接種の科学的根拠の確立及び対策の向上に関する研究

文献情報

文献番号
201420012A
報告書区分
総括
研究課題名
ワクチンにより予防可能な疾患に対する予防接種の科学的根拠の確立及び対策の向上に関する研究
課題番号
H24-新興-一般-003
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
大石 和徳(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
研究分担者(所属機関)
  • 明田 幸宏(大阪大学微生物病研究所)
  • 石和田 稔彦(千葉大学 真菌医学研究センター)
  • 井上 直樹(岐阜薬科大学 感染制御学研究室)
  • 庵原 俊昭(国立病院機構三重病院)
  • 生方 公子(慶應義塾大学 医学部)
  • 大日 康史(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
  • 岡田 賢司(福岡歯科大学 全身管理・医歯学部門)
  • 岡部 信彦(川崎市健康安全研究所)
  • 蒲地 一成(国立感染症研究所 細菌第二部)
  • 吉川 肇子(慶應義塾大学 商学部)
  • 木所 稔(国立感染症研究所 ウイルス第三部)
  • 齋藤 昭彦(新潟大学大学院 医学部)
  • 砂川 富正(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
  • 多屋 馨子(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
  • 富樫 武弘(札幌市立大学 看護学部)
  • 中山 哲夫(北里大学 北里生命科学研究所)
  • 平原 史樹(横浜市立大学 大学院医学研究科)
  • 細矢 光亮(福島県立医科大学 小児科)
  • 宮崎 千明(福岡市立心身障がい福祉センター)
  • 森 康子(神戸大学 大学院医学研究科)
  • 吉川 哲史(藤田保健衛生大学 小児科)
  • 吉田 弘(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
42,749,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者 石和田 稔彦 千葉大学医学部附属病院(平成26年4月1日~平成27年3月31日)→ 千葉大学真菌医学研究センター(平成26年11月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的として以下の内容が挙げられる。(1) 2015年の麻しん排除認定の取得を次の目標とする。また、先天性風疹症候群の有効な発生予防策の考案、妊婦の風疹罹患時の相談体制の整備とその検証を可能にする。(2)水痘ワクチンの2回目接種時期を明らかにし、またムンプスワクチンの有効性を評価する。 (3) ムンプスウイルスの国内流行状況、流行の変遷を明らかにする。(4)ロタウイルスワクチン導入後の腸重積の罹患率の変化を明らかにする。(5) 環境中のポリオウイルスの侵入を早期探知する。(6) 乾燥細胞培養日本脳炎ワクチンの市販後の安全性に関する調査と、接種勧奨再開後の接種動向を明らかにする。(7)Hibワクチン、小児用肺炎球菌ワクチンの公費助成開始後の侵襲性感染症原因菌の動向を明らかにする。(8)百日咳の血清診断法を確立する事により成人百日咳の実態を明らかにし、国内臨床分離株の遺伝子型ならびに病原因子発現の解析をする。(9) ワクチンの意義と価値、およびデメリットを含めてその情報を適切に伝えることができるよう、適切なリスクコミュニケーションを推進する。
研究方法
本研究班は研究代表者1名と臨床から9名、基礎から9名の研究者および疫学研究者4名、合計23名の分担研究者が協力して実施している。
結果と考察
1.2014年にアジア諸国(主にフィリピン)からの輸入例を発端として、麻疹の地域流行が発生した(患者報告数463名)。しかし、全国の保健所・医療機関・地方衛生研究所等の関係部署が連携した「1名発生したらすぐ対応」の実践と、予防接種率の向上により大規模流行には至らずに終息した。2.2013年に見られた風疹の14,000人を越える大規模な流行は終息し、2014年の患者報告数は321名であった。しかし、2014年までに45名が先天性風疹症候群(congenital rubella syndrome: CRS)と診断された。45例のうち情報の得られた33例について、うち8例がカリニ肺炎やRSウイルス感染症などで既に死亡していることが判明した。3.公費助成により、1歳児の水痘ワクチン接種率は80%程度に上昇したが、水痘ワクチン1回接種では水痘患者数が著明に減少するまでに7年間必要であった。4. 解析の結果、2014年の流行の主体は従来同様に遺伝子型 Gであったが、昨年度までとは異なり、いわゆる西日本型(Gw)のみが全国的に流行していた。5. DTaP-sIPV4回接種後の百日せき、ジフテリア、破傷風、ポリオに対する抗体価の推移を検討し、追加接種の必要性を評価した。本年度は、対象児が4歳時点での各疾患に対する抗体陽性率を示した。6.2014年10月採水時の検査で2年ぶりに環境水より3型ワクチン株が検出され、ポリオ感染源調査の有用性が確認された。7. ロタウイルス導入前の後ろ向き調査では2,352例、前向き調査では1,072例の報告があった。ワクチン導入前後で性差(男女比2:1)、最も多い患者年齢層(1歳児)に差はなかったが、3か月児の報告例がワクチン導入後でやや多くなっている。転帰はほぼ同様であり、ワクチン導入前に3例あった死亡例もワクチン導入後には認められていない。ワクチン接種回数別にみると、初回接種後の発症例は接種後1週間に発症している事例が接種後1週間以内に7例認められ、ワクチン接種との関連性が疑われた。8.同種造血幹細胞移植後患者における肺炎球菌ワクチン(PPSV23, PCV13-PPV23)接種の免疫原性及びその安全性を検討した。その結果、PPSV23では、接種前と比較して、有意な特異抗体量及びオプソニン活性の上昇がワクチン接種後1年まで維持されることが明らかとなった。9.社会全体の百日咳の侵淫調査のため、血清中PT抗体保有状況を調査した、小学1年生で128/243 (53%)が陰性で、中学1年生では250/624 (40%), 専門学校では 20/78 (26%)とワクチン接種歴はないが陰性率が減少し陽性に転じていた。10.親が児に予防接種を打たせる(受諾する)際に鍵となる情報や意思決定プロセスを実験的に解明し、ワクチンに関する適切なリスクコミュニケーションのあり方につき検討を行うことで、今後の予防接種推進政策に役立てる。
結論
麻疹、風疹、水痘、ムンプス、百日咳、ポリオ、ロタウイルス、肺炎球菌に対するワクチンと各疾患及び関連疾患に対するサーベイランスに関する新たなエビデンスを提供した。また、ワクチンに関するリスクコミュニケーションの研究を推進した。

公開日・更新日

公開日
2015-05-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2016-05-13
更新日
-

文献情報

文献番号
201420012B
報告書区分
総合
研究課題名
ワクチンにより予防可能な疾患に対する予防接種の科学的根拠の確立及び対策の向上に関する研究
課題番号
H24-新興-一般-003
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
大石 和徳(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
研究分担者(所属機関)
  • 明田 幸宏(大阪大学微生物病研究所)
  • 石和田 稔彦(千葉大学 真菌医学研究センター)
  • 井上 直樹(岐阜薬科大学 感染制御学研究室)
  • 庵原 俊昭(国立病院機構三重病院)
  • 生方 公子(慶應義塾大学 医学部)
  • 大日 康史(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
  • 岡田 賢司(福岡歯科大学 全身管理・医歯学部門)
  • 岡部 信彦(川崎市健康安全研究所)
  • 蒲地 一成(国立感染症研究所 細菌第二部)
  • 吉川 肇子(慶應義塾大学 商学部)
  • 木所 稔(国立感染症研究所 ウイルス第三部)
  • 齋藤 昭彦(新潟大学大学院 医学部)
  • 砂川 富正(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
  • 多屋 馨子(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
  • 富樫 武弘(札幌市立大学 看護学部)
  • 中山 哲夫(北里大学 北里生命科学研究所)
  • 平原 史樹(横浜市立大学 大学院医学研究科)
  • 細矢 光亮(福島県立医科大学 小児科)
  • 宮崎 千明(福岡市立心身障がい福祉センター)
  • 森 康子(神戸大学 大学院医学研究科)
  • 吉川 哲史(藤田保健衛生大学 小児科)
  • 吉田 弘(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的として以下の内容が挙げられる。(1) 2015年の麻しん排除認定の取得を次の目標とする。また、先天性風疹症候群の有効な発生予防策の考案、妊婦の風疹罹患時の相談体制の整備とその検証を可能にする。(2)水痘ワクチンの2回目接種時期を明らかにし、またムンプスワクチンの有効性を評価する。 (3) ムンプスウイルスの国内流行状況、流行の変遷を明らかにする。(4)ロタウイルスワクチン導入後の腸重積の罹患率の変化を明らかにする。(5) 環境中のポリオウイルスの侵入を早期探知する。(6) 乾燥細胞培養日本脳炎ワクチンの市販後の安全性に関する調査と、接種勧奨再開後の接種動向を明らかにする。(7)Hibワクチン、小児用肺炎球菌ワクチンの公費助成開始後の侵襲性感染症原因菌の動向を明らかにする。(8)百日咳の血清診断法を確立する事により成人百日咳の実態を明らかにし、国内臨床分離株の遺伝子型ならびに病原因子発現の解析をする。(9) ワクチンの意義と価値、およびデメリットを含めてその情報を適切に伝えることができるよう、適切なリスクコミュニケーションを推進する。
研究方法
本研究班は研究代表者1名と臨床から9名、基礎から9名の研究者および疫学研究者4名、合計23名の分担研究者が協力して実施している。
結果と考察
1.2014年にアジア諸国(主にフィリピン)からの輸入例を発端として、麻疹の地域流行が発生した(患者報告数463名)。しかし、全国の保健所・医療機関・地方衛生研究所等の関係部署が連携した「1名発生したらすぐ対応」の実践と、予防接種率の向上により大規模流行には至らずに終息した。2.2013年に見られた風疹の14,000人を越える大規模な流行は終息し、2014年の患者報告数は321名であった。しかし、2014年までに45名が先天性風疹症候群(congenital rubella syndrome: CRS)と診断された。45例のうち情報の得られた33例について、うち8例がカリニ肺炎やRSウイルス感染症などで既に死亡していることが判明した。3.公費助成により、1歳児の水痘ワクチン接種率は80%程度に上昇したが、水痘ワクチン1回接種では水痘患者数が著明に減少するまでに7年間必要であった。4. 解析の結果、2014年の流行の主体は従来同様に遺伝子型 Gであったが、昨年度までとは異なり、いわゆる西日本型(Gw)のみが全国的に流行していた。5. DTaP-sIPV4回接種後の百日せき、ジフテリア、破傷風、ポリオに対する抗体価の推移を検討し、追加接種の必要性を評価した。本年度は、対象児が4歳時点での各疾患に対する抗体陽性率を示した。6.2014年10月採水時の検査で2年ぶりに環境水より3型ワクチン株が検出され、ポリオ感染源調査の有用性が確認された。7. ロタウイルス導入前の後ろ向き調査では2,352例、前向き調査では1,072例の報告があった。ワクチン導入前後で性差(男女比2:1)、最も多い患者年齢層(1歳児)に差はなかったが、3か月児の報告例がワクチン導入後でやや多くなっている。転帰はほぼ同様であり、ワクチン導入前に3例あった死亡例もワクチン導入後には認められていない。ワクチン接種回数別にみると、初回接種後の発症例は接種後1週間に発症している事例が接種後1週間以内に7例認められ、ワクチン接種との関連性が疑われた。8.同種造血幹細胞移植後患者における肺炎球菌ワクチン(PPSV23, PCV13-PPV23)接種の免疫原性及びその安全性を検討した。その結果、PPSV23では、接種前と比較して、有意な特異抗体量及びオプソニン活性の上昇がワクチン接種後1年まで維持されることが明らかとなった。9.社会全体の百日咳の侵淫調査のため、血清中PT抗体保有状況を調査した、小学1年生で128/243 (53%)が陰性で、中学1年生では250/624 (40%), 専門学校では 20/78 (26%)とワクチン接種歴はないが陰性率が減少し陽性に転じていた。10.親が児に予防接種を打たせる(受諾する)際に鍵となる情報や意思決定プロセスを実験的に解明し、ワクチンに関する適切なリスクコミュニケーションのあり方につき検討を行うことで、今後の予防接種推進政策に役立てる。
結論
麻疹、風疹、水痘、ムンプス、百日咳、ポリオ、ロタウイルス、肺炎球菌に対するワクチンと各疾患及び関連疾患に対するサーベイランスに関する新たなエビデンスを提供した。また、ワクチンに関するリスクコミュニケーションの研究を推進した。

公開日・更新日

公開日
2015-05-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201420012C

収支報告書

文献番号
201420012Z