文献情報
文献番号
201420003A
報告書区分
総括
研究課題名
一類感染症の患者発生時に備えた治療・診断・感染管理等に関する研究
課題番号
H26-新興行政-指定-001
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 康幸(独立行政法人国立国際医療研究センター 国際感染症センター国際感染症対策室)
研究分担者(所属機関)
- 西條 政幸(国立感染症研究所 ウイルス第一部)
- 下島 昌幸(国立感染症研究所 ウイルス第一部第一室)
- 黒須 一見(東京都保健医療公社荏原病院 感染管理室)
- 冨尾 淳(東京大学大学院医学系研究科 公衆衛生学分野)
- 足立 拓也(東京都保健医療公社豊島病院 感染症内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
18,462,000円
研究者交替、所属機関変更
研究者追加
研究分担者 足立拓也(平成26年10月1日以降)
所属機関変更
研究分担者 冨尾淳
東京大学医学部附属病院災害医療マネジメント部( 平成26年4月1日~26年5月31日)→ 東京大学大学院医学系研究科公衆衛生学分野(平成26年6月1日以降)
研究報告書(概要版)
研究目的
先行研究班(H23-新興―一般―006)が作成したウイルス性出血熱-診療の手引き(以下,手引き)の内容を関係者に周知させ,想定訓練等を実施しながら,第一種感染症指定医療機関(以下,指定機関)での治療・診断・感染管理等の対応能力を向上させることを目的とする.また,西アフリカにおけるエボラ出血熱(EVD)の流行を受けて,指定機関の緊急支援,西アフリカに派遣される専門家の研修,国外視察等を実施することとした.
研究方法
EVD患者が国内で発生した場合に即応するために,治療,検査診断,感染管理に関して文献的検討,国外視察を行った.得られた知見を基に研修資料を作成し,できるだけ多くの指定機関において行政等と合同でワークショップ,都内で臨床検査技師向けの研修会を開催することとした.指定機関の事前準備状況の評価を行うために,暫定版チェックリストを作成し,試験的に運用することとした.また,西アフリカへの派遣を控えた日本人専門家を対象に派遣前研修を行うこととした. さらに,国内の20歳から69歳の男女1,040名を対象とし,EVDに対するリスク認識等についてインターネットを通じて収集することとした.
結果と考察
今回のEVD流行は,手引きの内容が十分に周知されない状況で発生した.本研究班に期待されるところも大きいと考えられ,班員は西アフリカでの現地支援,指定機関における研修会における指導など多面的な活動を行うこととなった.
19の指定機関におけるワークショップを通じて,EVD患者を診療する際の基本項目が確認され,当事者意識が醸成されつつあることは評価すべき点である.チェックリストによる評価は初めての試みだが,指定機関の標準化と質の維持・向上につながるものと期待される.
指定機関の医師以外への職種への研修はこれまで十分に行われてこなかったと考えられる.今回,看護師を米国に派遣したことは大きな成果があったと考えられる.また,44の指定機関から臨床検査技師が参加した研修会を通じて,マラリアやデング熱の迅速診断試薬の早期承認,稀少感染症に対する診断技術の向上・維持が課題と考えられた.
PPEに関しては,先行研究班が推奨した内容で概ね問題がないと考えられた.電動ファン式呼吸保護具(PAPR)は米国CDCが推奨するようになったが,WHOや欧州では必ずしも推奨しておらず,エアロゾルが発生する手技を行う場合などでの使用経験を蓄積していく必要がある.
欧米では,EVD患者に血液浄化療法や人工呼吸も行われている.患者移送手段の整備と特定感染症指定医療機関の機能強化を図っていく必要がある.エボラウイルスに曝露した人に対するfavipiravirの予防投与は正当化できると考えられる.
西アフリカ派遣前専門家研修には29名が参加し,うち9名が実際に派遣された.国内対策と国際支援に関わる者は必ずしも一致する必要はないが,指定機関の医療従事者が国内対策が疎かになるという理由で,国外派遣を妨げられた面があったと考えられる.現行の指定機関の数と配置は人材の分散化を来している面がある.
インターネット調査の結果から,EVDに対する知識は国民の間に十分に普及していないことが明らかになった.また,国際支援の重要性は認識されているものの,自分や家族を含め,人的支援に対しては消極的である傾向がみられた.かかりつけ医療機関にEVD患者が入院したという想定に基づく受診意思については,予定どおり受診する者は50%未満にとどまっており,転医や中断を選択する者も少なからずみられた.効果的なリスク・クライシスコミュニケーションの方法について,今後検討が必要である.
19の指定機関におけるワークショップを通じて,EVD患者を診療する際の基本項目が確認され,当事者意識が醸成されつつあることは評価すべき点である.チェックリストによる評価は初めての試みだが,指定機関の標準化と質の維持・向上につながるものと期待される.
指定機関の医師以外への職種への研修はこれまで十分に行われてこなかったと考えられる.今回,看護師を米国に派遣したことは大きな成果があったと考えられる.また,44の指定機関から臨床検査技師が参加した研修会を通じて,マラリアやデング熱の迅速診断試薬の早期承認,稀少感染症に対する診断技術の向上・維持が課題と考えられた.
PPEに関しては,先行研究班が推奨した内容で概ね問題がないと考えられた.電動ファン式呼吸保護具(PAPR)は米国CDCが推奨するようになったが,WHOや欧州では必ずしも推奨しておらず,エアロゾルが発生する手技を行う場合などでの使用経験を蓄積していく必要がある.
欧米では,EVD患者に血液浄化療法や人工呼吸も行われている.患者移送手段の整備と特定感染症指定医療機関の機能強化を図っていく必要がある.エボラウイルスに曝露した人に対するfavipiravirの予防投与は正当化できると考えられる.
西アフリカ派遣前専門家研修には29名が参加し,うち9名が実際に派遣された.国内対策と国際支援に関わる者は必ずしも一致する必要はないが,指定機関の医療従事者が国内対策が疎かになるという理由で,国外派遣を妨げられた面があったと考えられる.現行の指定機関の数と配置は人材の分散化を来している面がある.
インターネット調査の結果から,EVDに対する知識は国民の間に十分に普及していないことが明らかになった.また,国際支援の重要性は認識されているものの,自分や家族を含め,人的支援に対しては消極的である傾向がみられた.かかりつけ医療機関にEVD患者が入院したという想定に基づく受診意思については,予定どおり受診する者は50%未満にとどまっており,転医や中断を選択する者も少なからずみられた.効果的なリスク・クライシスコミュニケーションの方法について,今後検討が必要である.
結論
西アフリカにおける過去最大のEVD流行を受けて,指定機関に対する緊急支援,西アフリカに派遣される専門家や指定機関の臨床検査技師を対象とした研修,患者の診療を経験した米国関係機関の視察,手引きの改訂等を実施した.国内でVHF患者が発生した際に適切な医療を提供するため,抗ウイルス薬治療の検討,検査体制の整備,指定機関評価体制の整備,リスクコミュニケーションの検討も併せて行った.我が国の健康危機管理のために寄与するものと期待される.
公開日・更新日
公開日
2015-05-28
更新日
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