次世代視覚障害者支援システムの実践的検証

文献情報

文献番号
201419069A
報告書区分
総括
研究課題名
次世代視覚障害者支援システムの実践的検証
課題番号
H25-感覚-一般-005
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
仲泊 聡(国立障害者リハビリテーションセンター 病院)
研究分担者(所属機関)
  • 西田 朋美(国立障害者リハビリテーションセンター 病院 )
  • 岩波 将輝 (国立障害者リハビリテーションセンター 病院 )
  • 宮内 哲(独立行政法人 情報通信研究機構 )
  • 小川 景子(広島大学大学院 総合科学研究科 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
5,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究の目的は、視覚障害者支援のあり方モデルの実践的検証である。視覚障害者支援のあり方モデルとは、平成22-24年度研究にて提唱したファーストステップと中間型アウトリーチ支援を中軸とする視覚障害者に対する次世代支援モデルのことである。またファーストステップとは、インターネットで約20の質問で支援ジャンルとナレッジバンク関連ページへのリンクが提示され、それと同時に利用した視覚障害者のマクロな実態とニーズが調査可能なソフトのことで、ナレッジバンクとは、インターネット上の視覚障害者支援関連用語解説および相談窓口連絡先リストのことである。そして中間型アウトリーチ支援とは、通所型とアウトリーチ型の中間的方法で、視覚障害当事者が日常通う施設に視覚障害者支援専門家が訪問し支援を行うことであり、これらはいずれも視覚障害者支援のあり方モデルの中で重要なシステム要素となっている。これに向けた当初の目標は、ここで要となるファーストステップの正答率を上げるための新たな視点を確立することであった。そのため、今回、視線移動データを分析し視野を推定するという原理に基づく、眼球運動に伴う総合的な視覚の有効範囲(アクティブ視野)を測定する装置の開発を推進した。本年度は、この視野計を使用して視野障害患者のIADL(Instrumental activities of daily living)との関連を推定し、ファーストステップの改良を計画した。
研究方法
1) ナレッジバンクの強化
 リンク先増設のため、日本盲人社会福祉施設協議会加盟187施設に参加依頼及び、相談窓口となりうる支援項目についてのアンケートを行った。また、視覚障害者の実態把握のため、眼科通院中の視覚に障害のある患者数についてのアンケートを行った。
2) アクティブ視野の生理学的基礎を探る実験
 アクティブ視野と脳波の同時計測を行い、ラムダ波の起源について検討した。また、視標の厳密な色度測定に基づき、網膜神経節細胞の一つであるミジェット細胞に選択的な刺激を作成し、これによる視線変換の特性を調査した。
3) アクティブ視野に高相関するIADL変数の同定と当該変数によるファーストステップの最適化
 優先的にファーストステップの判定基準へ組み込む項目を選定するため、視力良好な視野障害を有する19名の患者に対して、アクティブ視野計測とIADL評価を行い、アクティブ視野に関連の大きなIADL評価項目について検討した。
4) 視野狭窄リハビリテーション訓練法の開発
 視覚健常者20名を対象として視覚探索訓練・視覚走査訓練・眼球運動訓練によるアクティブ視野への効果を検討した。
5) アクティブ視野計測システムの改良
 視覚健常者及び視力良好な視野障害を有する患者のアクティブ視野計測を行い、計測精度向上及び被検者の負担を低減するためのシステムの改良を試みた。
結果と考察
1) ナレッジバンクの強化
 リンク先施設を従来の41施設から99施設に倍増し、トップページへのアクセス数は平成27年3月28日時点で4550回を越えた。また、340名の眼科医に電子メールでアンケートを実施し、視覚に障害を有する患者2483名分のデータを得た。
2) アクティブ視野の生理学的基礎の探求
 ラムダ波のうちP1が中心視野にP2が周辺視野に関連することを見出した。また、ミジェット細胞選択的刺激では、視線変換の潜時の延長を認めた。
3) アクティブ視野に高相関するIADL変数の同定と当該変数によるファーストステップの最適化
 IADLに最も高相関するアクティブ視野指数は、平均視標捕獲誤差であることが判明し、IADL項目の「外出」「すれ違う人の顔をみわけること」を用いて、これを説明するモデルを提案した。
4) 視野狭窄リハビリテーション訓練法の開発
 訓練により視線変換の振幅が増大することがわかった。
5) アクティブ視野計測システムの改良
 眼球運動検出アルゴリズムやノイズ除去法などの改良を行った。アクティブ視野と同時に従来視野計による視野に近い視機能も評価できることがわかった。さらに、連鎖して生じる場合の急速眼球運動間潜時に注目することで、視野狭窄患者の日常生活における視野活用力を評価できた。
結論
本研究は、視覚障害者支援システムのあり方モデルを検証することを目的として遂行してきた。そして、その副産物であるアクティブ視野計測システムによって得られた視機能が、視覚障害者の生活に密接に繋がっていることがわかった。さらに、これまであまり顧みられてこなかった視野狭窄に対するリハビリテーション訓練やその効果判定に本システムが有用である可能性が示された。よって、今後もこのシステムの成熟を図る意義は大きい。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201419069Z