様々な依存症の実態把握と回復プログラム策定・推進のための研究

文献情報

文献番号
201419033A
報告書区分
総括
研究課題名
様々な依存症の実態把握と回復プログラム策定・推進のための研究
課題番号
H25-精神-一般-003
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
宮岡 等(北里大学 1)医学部精神科学2)東病院精神神経科)
研究分担者(所属機関)
  • 樋口 進(独立行政法人国立病院機構 久里浜医療センター)
  • 松本 俊彦(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所)
  • 小泉 典章(長野県精神保健福祉センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
11,077,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では1)回復プログラムの普及・均てん化が求められる薬物依存、2)実態把握や診断・治療ガイドラインが十分ではないインターネット嗜癖、3)回復プログラムの策定が求められる病的ギャンブリング、4)地域差の大きい薬物依存に対する行政機関間連携を対象に研究を行う(以下、1)-4)に沿って記す)
研究方法
1)初年度:包括的治療プログラム開発。2・3年度:治療効果の検証とともに国内各地への普及・均てん化。2)初年度:専門外来受診患者対象調査、若年者対象縦断研究調査開始。2・3年度:WHO共同プロジェクトの実施、診断ガイドライン作成。3)初・2年度:債務問題関連機関対象調査、家族、家族に対する自助グループ対象調査開始。3年度:家族への心理教育プログラム開発と有効性検討、本人への回復プログラム試案作成。4)初年度:精神保健福祉センターと保健所の連携体制に関する意見集約。2年度:連携のためのガイドライン運用と連携意識調査。3年度:職員対象研修と有効性の検討。
結果と考察
1)開発した包括的治療プログラムの普及、均てん化を図りデータ収集継続し、効果的なものにする上で示唆に富む結果が得られている。2)年齢、性別の傾向、症状特性、併存精神障害が明らかになるとともに、若年者対象縦断研究調査を継続している。3)家族、自助グループ員対象調査により家族の実感するに至るステップ、精神健康度、関与する要因が明らかになり、家族への心理教育プログラム開発上示唆に富む結果が得られている。債務問題関連機関対象調査は継続中である。4)全国精神保健福祉センター、保健所から意見集約、対応ガイドライン運用に基づく連携意識調査を実施している。
研究の達成度としては研究班2年目の現時点で、解析中のものもあるが概ね予定通り進行している。薬物依存研究においては、回復を阻害する要因が明らかとなっている。インターネット嗜癖研究においては、わが国では研究蓄積がほとんどない状況にあり、学術的な意義は大きい。病的ギャンブリング研究においては、債務問題関連機関、家族を対象とした研究はわが国にはなく、その学術的意義は大きい。行政的な意義としては、これまでわが国の精神科医療は、薬物依存に対する治療体制の整備が不十分だったが、本研究の成果は「第三次薬物乱用防止五カ年計画(2008)」と「薬物乱用防止戦略加速化プラン(2010)」において強調された薬物再乱用防止のためのアフターケア、ならびに2012年に「自殺総合対策大綱(2012改訂)」に明記された、自殺ハイリスクグループの一つである薬物依存者支援に対して、具体的な治療・援助のツールとして貢献をすると確信している。若年者の学業不振、引きこもり、犯罪被害との関連も指摘されているインターネット嗜癖に関して、わが国に研究蓄積はほとんどなく、診断・治療についても遅れている。嗜癖の実態や病態像を明らかにすると同時に、わが国の実情に即した診断・治療ガイドラインを作成する。今後のインターネット嗜癖の予防や治療の発展に大きく貢献すると期待される。ギャンブルのもたらす影響は「自殺総合対策大綱(2012改訂)」にも取り上げられている。多重債務との関連も指摘され、近年は統合リゾート推進法案の議論においても指摘されている。自殺ハイリスクグループの一つである病的ギャンブリング本人および家族の支援において、具体的な回復プログラムとして貢献すると確信している。薬物事犯の刑の一部執行猶予制度の実施に向けて、地域差や連携の不足が指摘されている、精神保健福祉センターや保健所等行政機関の薬物依存症への対応の均てん化、連携体制の構築が期待できる。
結論
1)再乱用防止プログラムSMARPP及びCRAFTを基礎に開発される包括的治療プログラムは、社会的にも重要視されている危険ドラッグを含む薬物依存者支援の普及・均てん化に寄与するとともに、自殺ハイリスクグループの一つである薬物依存者支援に大きく貢献することが期待できる。2)研究蓄積が無く診断・治療についても遅れているインターネット嗜癖の実態や病態像を明らかにすると同時に、わが国の実情に即した診断・治療ガイドラインを作成し、その予防や治療の発展に貢献すると期待される。3)わが国にはこれまでに無い病的ギャンブリング回復ツールとしての家族への心理教育プログラム(病的ギャンブリング版CRAFT)、本人への回復プログラム(病的ギャンブリング版SMARPP)の開発に寄与するとともに、自殺ハイリスクグループの一つである病的ギャンブリング支援に大きく貢献することが期待できる。4)薬物依存への支援における精神保健福祉センターと保健所の役割や連携機能を明確にし、機関間や部署間の連携意識を高める研修を開発することは、自治体間に生じやすい援助体制の差を減じ、均てん化に寄与することが期待できる。

公開日・更新日

公開日
2015-05-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-

収支報告書

文献番号
201419033Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
14,400,000円
(2)補助金確定額
14,400,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 482,869円
人件費・謝金 4,197,310円
旅費 225,382円
その他 6,171,439円
間接経費 3,323,000円
合計 14,400,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2017-05-23
更新日
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