加齢による運動器への影響に関する研究-サルコペニアに関する包括的検討-

文献情報

文献番号
201417011A
報告書区分
総括
研究課題名
加齢による運動器への影響に関する研究-サルコペニアに関する包括的検討-
課題番号
H25-長寿-一般-004
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
原田 敦(独立行政法人国立長寿医療研究センター 病院)
研究分担者(所属機関)
  • 徳田 治彦(独立行政法人国立長寿医療研究センター 内科)
  • 下方 浩史(名古屋学芸大学大学院 栄養科学研究科)
  • 橋本 有弘(独立行政法人国立長寿医療研究センター 研究所)
  • 江頭 正人(東京大学医学部附属病院 )
  • 重本 和宏(東京都健康長寿医療センター 研究所)
  • 金 憲経(東京都健康長寿医療センター 研究所)
  • 鈴木 隆雄(独立行政法人国立長寿医療研究センター 研究所)
  • 島田 裕之(独立行政法人国立長寿医療研究センター 研究所)
  • 神崎 恒一(杏林大学医学部)
  • 村木 重之(東京大学大学院医学系研究科)
  • 宮地 元彦(独立行政法人国立健康・栄養研究所)
  • 石橋 英明(医療法人社団愛友会 伊奈病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
14,770,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
サルコペニア(以下SP)の概念は、筋量と筋力の低下で身体障害をもたらす症候群と定義され、歩行速度と筋量を診断や介入の基準とするなど、最近欧米で大きく変化した。これに対応して我が国でも日本人データでSPの運動器への影響を明らかにすることが求められている。そこで、これまでの研究を発展させ、SPの現状と機序を研究し、予防、診断、治療の包括的検証を実施し、マニュアルを作成する。
研究方法
診断の研究では、椅子片足立ち上がりテストにより四肢筋量指数推定、四肢筋量指数の代替指標となりうるかを検討、バイオマーカーの生物学的意義と評価的評価の根拠を定めるためシナプスの維持機構を詳細に解明する必要があるので抗Lrp4抗体で発症する重症筋無力症の動物モデルを作成、高齢女性を対象にDXAで身体組成評価、関連因子を検討、大学病院通院患者を対象にSP頻度を調査、地域在住中高年者を対象にSPとロコモティブシンドローム(以下ロコモ)判定基準を含む様々な指標による調査、日本人高齢者集団を対象にAWGS基準に基づいて解析、SPをターゲットにした高齢地域住民コホートにおいて下肢筋力と膝痛との関連を解析、若年者における筋力、神経筋協調機能と運動機能との関連について検討、都市在住高齢女性でSO該当者を選定、アレンドロネートとアルファカルシドール併用あるいはアルファカルシドールの無作為比較対照試験を実施、糖尿病患者にSP評価、長寿ドックサンプルに血清25(OH)ビタミンD3測定、マウスの骨折筋損傷モデルを用いてアレンドロネートの筋再生に対する影響を解析。
結果と考察
椅子片足立ち上がりテストは四肢筋量指数の代替指標として十分な予測感度を有していないことが示唆、Lrp4は生体神経筋シナプスの構造維持において必須分子で、Lrp4の機能抑制が神経筋シナプスの変性を介して筋力低下を引き起こすと示され、SPによる筋萎縮・筋力低下メカニズムを解明する上で有用。筋力低下は身体機能低下、総テストステロン値低下やFGF-23上昇と関連が認められ、身体組成を考慮した診療が重要と示唆。大学病院通院患者のSP頻度は高く、SP進行すると筋肉量、筋力、歩行速度の低下とともにバランス能力が低下し老年症候群が増加。SP判定指標ある筋量、握力、歩行速度を調べたところ、歩行速度基準(0.8m/s未満)の該当率は極めて低かった。ロコモ評価法であるロコモーションチェック、立ち上がりテスト、2ステップテスト、ロコモ25は、他運動機能測定値との関連が高く、運動機能を代表する力があると考えられた。AWGS基準に基づくSP有病率は男性で9.6%、女性で7.7%、有病率推計値は男性で132万人、女性で139万人となった。下肢筋力は握力や下肢筋量よりも膝痛と強く関連していることが明らかとなり、下肢筋力と膝痛の関連は、年齢、BMI、膝OAで補正しても有意に保たれており、下肢筋力は肥満やOAと独立して膝痛に影響を与えると示唆された。縦断データより膝OAが痛みやADL障害に与える影響に筋力が強くかかわっていることも明らかとなった。さらに歩行速度と筋量や筋力との関連は認められず、外乱負荷後の前脛骨筋反応時間との関連が認められた。また、筋力や筋量と重心動揺には全条件で関連がみられなかった。sarcopenic obesity (以下SO)高齢者中、介入参加者と不参加者を比較したところ、介入不参加者は参加者に比べて、下肢筋力のみならず上肢筋力の衰え、歩行速度低下、さらに定期的運動習慣を持ってない者の割合が高いとの特徴が観察された。アレンドロネートによるRCTを継続中、糖尿病患者においてSP例は1例のみで、長寿ドック受診者における血清25(OH)D3レベルはSMIあるいは握力と明瞭な相関を示した。アレンドロネートは、骨折を伴う外傷による筋損傷時には、未分化筋細胞の損傷部位への遊走および損傷部位における増殖を選択的に抑制することが示唆された。
マニュアル作成は分担テーマ決定し進行中
結論
SPの診断予防治療に関する多領域研究を行った。

公開日・更新日

公開日
2017-10-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2016-05-13
更新日
-

収支報告書

文献番号
201417011Z