文献情報
文献番号
201417004A
報告書区分
総括
研究課題名
介護予防プログラム開発に関する研究
課題番号
H24-長寿-一般-004
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
島田 裕之(独立行政法人国立長寿医療研究センター 老年学・社会科学研究センター 予防老年学研究部)
研究分担者(所属機関)
- 鈴木 隆雄(独立行政法人国立長寿医療研究センター 研究所)
- 下方 浩史(名古屋学芸大学大学院)
- 伊藤 健吾(独立行政法人国立長寿医療研究センター 認知症先進医療開発センター)
- 朴 眩泰(パク ヒョンテ)(独立行政法人国立長寿医療研究センター 研究所)
- 久保田 進子(名古屋芸術大学音楽学部音楽文化創造学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
9,435,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究では、知的活動を取り入れたプログラムが、MCI高齢者の認知機能維持・向上効果を有するか検証することを目的とした。また、分担研究の1)認知機能得点の予測因子については、地域在住の高齢者において、認知機能の指標であるMMSE (Mini Mental State Examination)を予測する知能、記憶検査を明らかにすることを目的とし、2)脳機能画像活用の検討では、白質病変と白質密度に焦点を当てて評価指標としての妥当性の検討を行い、3)新規評価指標の開発では、運動と認知のdual-taskの評価指標としての有用性を検討し、4)学習プログラムの探索では、音楽を介した学習プログラムに関する先行研究を概観した。
研究方法
介護予防プログラムの効果判定は、4,023名の母集団からすべての検査を受け、同意が得られた286名のMCI高齢者の中で、201名が介入研究の対象となった。対象者は、楽器演奏プログラム群67名、社交ダンスプログラム群67名、および対照群67名にランダム割り付けられた。対象者は、介入前後に各種認知機能検査と脳画像検査を受けた。
楽器演奏とダンスプログラム群の介入は、週1回(1回60分間)の教室を計40回実施した。介入期間は、10か月間とした。対照群には、認知症に関係するテーマ以外の健康講座(60分間)を介入期間中の10か月間で3回実施した。
分担研究の1)認知機能得点の予測因子では、60歳以上の地域在住高齢者1197人を分析対象とし、MMSE得点の27/28カットオフ値による2群間での、各検査項目の得点の差をt検定にて検定した。また、ROC曲線にてMMSE得点の27/28カットオフ値による2群を判別する各検査項目の得点のカットオフ値、感度、特異度、AUCを求めた。
分担研究2)脳機能画像活用の検討は、ランダムに抽出した500名の高齢者にダイレクトメールによるMR検査受診の勧誘を実施し、87例の白質病変の評価を実施した。
分担研究3)の新規評価指標の開発では、104名のMCI高齢者のデータでdual-task歩行能力の評価を実施した。
分担研究4)学習プログラムの探索は、音楽を介した学習プログラムについて、先行研究やその他の知見を文献考察した。
楽器演奏とダンスプログラム群の介入は、週1回(1回60分間)の教室を計40回実施した。介入期間は、10か月間とした。対照群には、認知症に関係するテーマ以外の健康講座(60分間)を介入期間中の10か月間で3回実施した。
分担研究の1)認知機能得点の予測因子では、60歳以上の地域在住高齢者1197人を分析対象とし、MMSE得点の27/28カットオフ値による2群間での、各検査項目の得点の差をt検定にて検定した。また、ROC曲線にてMMSE得点の27/28カットオフ値による2群を判別する各検査項目の得点のカットオフ値、感度、特異度、AUCを求めた。
分担研究2)脳機能画像活用の検討は、ランダムに抽出した500名の高齢者にダイレクトメールによるMR検査受診の勧誘を実施し、87例の白質病変の評価を実施した。
分担研究3)の新規評価指標の開発では、104名のMCI高齢者のデータでdual-task歩行能力の評価を実施した。
分担研究4)学習プログラムの探索は、音楽を介した学習プログラムについて、先行研究やその他の知見を文献考察した。
結果と考察
介入研究の結果、共分散分析にて、全般的認知機能の指標であるMMSE(P = 0.013)および物語記憶も遅延再生(P = 0.033)において、それぞれ群要因が有意に関連していることが認められた。MMSEに関しては、対照群と比較して楽器演奏プログラム群で有意な向上が認められた(p = 0.045)。また、物語記憶の遅延再生に関しては、対照群と比較して社交ダンスプログラム群で有意に向上した(p = 0.024)。脳容量については、健康講座群においてのみ関心領域の萎縮度に有意な変化みとめられ、萎縮が進行していることが明らかとなった(p < .01)。また、全脳萎縮領域の割合については健康講座群と楽器演奏群で有意な変化(p < .01)がみられ、脳全体の中で萎縮している領域が大きくなっていたが、ダンス群では脳全体の萎縮に変化はみられなかった(p > .05)。
分担研究1)認知機能得点の予測因子の検討では、MMSE得点27/28の2群間での知能・記憶検査得点の差が認められ、この2群へのROC曲線から求めたAUCが最も大きかったのは推定IQであった。推定IQは感度が0.782と高かったが、特異度が最も高かったのは数唱の0.683であった。
分担研究2)脳機能画像活用の検討では、白質病変の程度によって重度群では、軽度群と比較して傍側脳室の深部白質領域に白質密度の有意な低下が認められた。
分担研究3)新規評価指標の開発では、ベースライン時のdual-task能力は、実行機能と処理速度と有意な相関が認められた。介入前後の結果を見ると、dual-task能力は対照群においては、有意な差はみられなかったが、楽器演奏介入群においては、有意な介入効果が確認された。
分担研究4)学習プログラムの探索では、2つ以上の刺激間で集中する課題を切り替えるという交互的注意を促す内容が認知機能の向上に重要であると考えられた。
分担研究1)認知機能得点の予測因子の検討では、MMSE得点27/28の2群間での知能・記憶検査得点の差が認められ、この2群へのROC曲線から求めたAUCが最も大きかったのは推定IQであった。推定IQは感度が0.782と高かったが、特異度が最も高かったのは数唱の0.683であった。
分担研究2)脳機能画像活用の検討では、白質病変の程度によって重度群では、軽度群と比較して傍側脳室の深部白質領域に白質密度の有意な低下が認められた。
分担研究3)新規評価指標の開発では、ベースライン時のdual-task能力は、実行機能と処理速度と有意な相関が認められた。介入前後の結果を見ると、dual-task能力は対照群においては、有意な差はみられなかったが、楽器演奏介入群においては、有意な介入効果が確認された。
分担研究4)学習プログラムの探索では、2つ以上の刺激間で集中する課題を切り替えるという交互的注意を促す内容が認知機能の向上に重要であると考えられた。
結論
認知症予防プログラムとして、楽器演奏プログラム、および社交ダンスプログラムの実施は、限定的ではあるが、高齢者の認知機能の低下抑制に対して有意であることが示唆された。今後、楽器演奏プログラムや社交ダンスプログラムのマニュアルを作成し、利用可能なツールとして広く紹介していく予定である。また、知能や記憶力検査、脳機能画像、dual-task課題は、認知症のリスクを有する高齢者のスクリーニングやプログラムの効果検証のために有益である可能性が示された。
公開日・更新日
公開日
2017-10-03
更新日
-