未受診・未回収対策を含めた介護予防標準化に向けたテーラーメード型介護予防法の開発

文献情報

文献番号
201417001A
報告書区分
総括
研究課題名
未受診・未回収対策を含めた介護予防標準化に向けたテーラーメード型介護予防法の開発
課題番号
H24-長寿-一般-001
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
荒井 秀典(京都大学 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 青山 朋樹(京都大学 医学研究科)
  • 大倉 美佳(京都大学 医学研究科)
  • 山田 実(筑波大学大学院人間総合科学研究科)
  • 荻田 美穂子(京都光華女子大学健康科学部)
  • 宮松 直美(滋賀医科大学臨床看護学講座成人看護学・成人保健学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
13,354,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者 荒井秀典 京都大学医学研究科 教授( 平成26年4月1日~26年12月31日)→ 京都大学医学研究科 客員研究員                          (兼)国立長寿医療研究センター 副院長(平成27年1月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
介護予防に関するチラシを配布することによる行動変容の有無を検証し、血清マーカーと要介護認定との関連性を検証する。また、地域在住高齢者において健診受診行動に関連する要因を明らかにするとともに、身体活動量および強度の特徴を把握し、身体活動とフレイルとの関連を明らかにする。さらに、ペット飼育と身体的・精神的・社会的健康との関連を検証する。
研究方法
1.各家庭に介護予防に関するチラシを月に1回の頻度で配布し、行動変容の有無を検討した。2.地域在住高齢者において血清バイオマーカーと要介護認定発生との関連を調査した。3.高齢者のフレイルに関連する要因分析と健診受診に関連する要因の分析を行った。4.介護予防教室参加者107名に対しライフコーダを用いて、身体活動の評価を行い、フレイルとの関連を解析した。5. ペット飼育と身体的・精神的・社会的健康との関連を検討した。
結果と考察
1. チラシ配布により約50%の高齢者の意識が変容し、約35%には行動も変容した。2.要介護認定を受けた高齢者と非認定者であった高齢者のベースラインを比較したところ、年齢、基本チェックリスト、BMI、血清アルブミン、Hb、LDLコレステロール、血糖、クレアチニン、eGFRにおいて有意な差を認めた。3.周囲からの受診勧奨により約1.5~2.2倍健診参加の増加を認めた。4.男性は女性よりも身体活動が少なく、年齢階級が上がるごとに身体活動が減少していた。また、運動量・歩数・活動時間は基本チェックリストと負の相関が認められた5.ペット飼育による運動機能向上、良好な主観的健康感、活発な社会活動との関連が示された。
結論
介護予防に関するチラシ配布により、高齢者の意識と行動も変容していることを明らかにし、要介護につながるバイオマーカーの意義を明らかにした。また、高齢者の健康受診行動を促進するためには、本人への働きかけのみならず、周囲への啓発活動が重要であることが示唆された。身体活動と基本チェックリスト25項目総得点とは負の相関を示し、4-6metsの活動時間が短いほど運動機能低下者が増加する傾向が示唆された。ペットの世話を自ら行っている者は運動機能・主観的健康感・社会活動・交流が良好に維持されている可能性が高いため、地域在住高齢者の身体的・精神的・社会的健康を包括的に維持させていくために「ペット飼育」が効果的な役割を果たす可能性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2017-10-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-23
更新日
-

文献情報

文献番号
201417001B
報告書区分
総合
研究課題名
未受診・未回収対策を含めた介護予防標準化に向けたテーラーメード型介護予防法の開発
課題番号
H24-長寿-一般-001
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
荒井 秀典(京都大学 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 青山 朋樹(京都大学 医学研究科 )
  • 大倉 美佳(京都大学 医学研究科 )
  • 山田 実(筑波大学大学院人間総合科学研究科)
  • 荻田 美穂子(京都光華女子大学健康科学部)
  • 宮松 直美(滋賀医科大学臨床看護学講座成人看護学・成人保健学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
介護給付費および医療費の両側面から介護予防事業の費用対効果を検討するとともに,従来の事業から有用なプログラムを再構築し,要支援高齢者における重度化予防のための有用な介護サービス利用の在り方を検討し,介護予防の標準化を図ることが本研究の目的である。
研究方法
Ⅰ.全国自治体を対象とした介護予防事業の実態把握のための悉皆調査を行った。Ⅱ.地域在住高齢者に対して、基本チェックリスト項目を含む健康・生活実態に関する調査を行い、未回収者に対しては訪問聞き取り調査を行った。a.フレイルの有無を従属変数とし、性別、年齢を調整した多変量ロジステック回帰分析により、フレイルの要因分析を行った。b.地域在住高齢者の健康診査の受診行動に関連する要因について、本人の健診に対する意識および周囲からの受診勧奨に関する検討を行った。c.各地域在住高齢者個人の健康・生活実態と医療費を突合させ、1年後の要介護高齢者の発生割合,医療費への影響を検討した。Ⅲ.9小学校区を介入エリア、別の9区をコントロールエリアとしてクラスターRCTを実施した。月に1度介護予防に関するチラシをポスティング配布した。Ⅳ.16種類の介護予防事業について、どのような事業が最も介護予防に効果的であるのかを検証した。Ⅴ.デイサービスにおける運動器機能向上サービスの効果を検討した。
結果と考察
Ⅰ.要介護認定者割合は17.0%(高齢者人口比)であり、高齢者割合に正比例した。一方、介護予防事業に携わる常勤職員一人あたりの高齢者人数は高齢者割合に反比例した。高齢者人口に比して要介護認定者割合が増す現状を踏まえ、介護予防事業に携わる常勤職員や介護予防に関する費用の配分を増やすことができるような公的補助を検討する必要性が示唆された。Ⅱ.a.フレイルに関連する各要因のオッズ比は、円背あり2.52、奥歯でかむ力が弱い2.24、睡眠不良3.10、内服薬あり2.14、調査記載者が本人以外3.33であった。今後、フレイルの各影響要因に対する早期予防介入方法、特に円背、奥歯でかむ力と栄養に関する客観的な指標との関連を検討していく必要がある。b.高齢者の健診受診行動には、健診受診に対する個人の意識以上に周囲からの受診勧奨による影響力が大きかった。健診受診行動の促進には、本人への働きかけのみならず、周囲への啓発活動が重要であり、ソーシャル・キャピタルを高める地域づくりが必要である。c.受診・回収群を参照水準として、1年後の新規介護認定者割合への影響を性別・年齢を調整した結果、オッズ比は受診・未回収群1.8、未受診・回収群2.3、未受診・未回収群4.0であった。また、推定総医療費が高額であることへの影響については、未受診・回収群1.4、未受診・未回収群1.3であった。Ⅲ.介入地区ではコントロール地区と比べて有意に運動時間が増加していた。なお、介入地区でチラシを見ていたのは42.9%、意識が変化したのは24.8%、習慣が変化したのは16.4%、新たに運動習慣を獲得したのは13.7%であった。Ⅳ.ロジスティック回帰分析による多変量解析の結果、事業内容としては開催回数が12回以上であることのみ有意な関連要因として抽出された。Ⅴ.6ヶ月間では運動器機能向上サービス実施の有無は有意な差を認めなかったが、12ヶ月間では有意な差を認め運動器機能向上サービスを実施している施設で介護度を抑制していた。
結論
地域在住高齢者における要介護リスクとして、円背、奥歯で噛む力、睡眠、社会参加数が同定された。また、健診未受診者は総医療費が高く、健診の受診行動を促進するためには、本人への働きかけのみならず、周囲への啓発活動が重要である。介護予防に関するチラシ配布によって、介入地区では運動時間が増加した。様々な介護予防教室の中でも特に新規要介護認定者数を抑制するためには、少なくとも12回以上の教室開催が必要であることが示唆された。運動器機能向上サービス利用で、開始より12ヶ月間の介護度悪化は有意に抑制された。

公開日・更新日

公開日
2017-10-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-23
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201417001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
高齢化に伴い、要介護高齢者が増加することは不可避ではあるが、2006年から始まった介護予防事業において、多くの自治体で、介護予防の取り組みがなされてきた。しかしながら、多くの事業においては、科学的な裏付けがなされておらず、波及効果が期待できなかった。本研究成果は介護予防事業における貴重な科学的エビデンスを提供するものとして評価でき、多くの自治体での利用を介しての波及効果が期待できる。
臨床的観点からの成果
現在の健診制度では、75歳以上は義務化されていないが、本研究成果は75歳以上においてコレステロール、アルブミン、クレアチニンなどのバイオマーカーが要介護リスクの予測に使える可能性を示唆しており、地域、診療レベルいずれにおいても血液検査の有用性を示すものとして評価できる。75歳以上の健診実施の可否を判定する際の貴重なエビデンスになることが期待できる。
ガイドライン等の開発
現時点では、本研究成果がガイドラインにエビデンスとして採用されてはいないが、現在長寿医療研究開発費において介護予防に関するエビデンスを解析し、ガイドラインを作成しようとしている。本ガイドラインにおいて、重要なエビデンスを複数提供できると確信している。
その他行政的観点からの成果
複数の自治体から研究成果について問い合わせがあった。デイサービスにおける介入方法やチラシのポスティングなどについては、今後複数の自治体で実施され、研究成果が波及することが期待される。
その他のインパクト
今回の研究成果に関して、マスコミに取り上げられてはいないが、複数の自治体からの問い合わせはあった。公開シンポジウムに関して、現時点までで研究成果に関するものは実施していないが、今後開催を検討している。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
12件
その他論文(和文)
5件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
12件
学会発表(国際学会等)
10件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Malinowska KB, Okura M, Ogita M, et al.
Effect of self-reported quality of sleep on mobility in older adults.
Geriatr Gerontol Int  (2015)
10.1111/ggi.12468
原著論文2
Sewo Sampaio PY, Sampaio RA, Yamada M, et al.
Comparison of frailty among Japanese, Brazilian Japanese descendants and Brazilian community-dwelling older women
Geriatr Gerontol Int  (2014)
10.1111/ggi.12348
原著論文3
Sewo Sampaio PY, Sampaio RA, Yamada M, et al.
Comparison of frailty between users and nonusers of a day care center using the Kihon Checklist in Brazil
Journal of Clinical Gerontology and Geriatrics , 5 (3) , 82-85  (2014)
10.1016/j.jcgg.2014.02.005
原著論文4
Yamada M, Moriguch Y, Mitani T, et al.
Age-dependent changes in skeletal muscle mass and visceral fat area in Japanese adults from 40 to 79 years-of-age
Geriatr Gerontol Int , Suppl 1 , 8-14  (2014)
10.1111/ggi.12209
原著論文5
Sampaio RA, Sewo Sampaio PY, Yamada M, et al.
Arterial stiffness is associated with low skeletal muscle mass in Japanese community-dwelling older adults
Geriatr Gerontol Int , Suppl 1 , 109-114  (2014)
10.1111/ggi.12206
原著論文6
Sewo Sampaio PY, Sampaio RA, Yamada M, et al.
Validation and translation of the Kihon Checklist (frailty index) into Brazilian Portuguese
Geriatr Gerontol Int , 14 (3) , 561-569  (2014)
10.1111/ggi.12134
原著論文7
Sampaio RA, Sewo Sampaio PY, Yamada M, et al.
Self-reported quality of sleep is associated with bodily pain, vitality and cognitive impairment in Japanese older adults
Geriatr Gerontol Int , 14 (3) , 628-635  (2014)
10.1111/ggi.12149
原著論文8
Sampaio RA, Sewo Sampaio PY, Yamada M, et al.
Factors associated with falls in active older adults in Japan and Brazil
Journal of Clinical Gerontology and Geriatrics , 4 (3) , 89-92  (2013)
http://dx.doi.org/10.1016/j.jcgg.2013.04.003
原著論文9
Okura M, Ogita M, Yamamoto M, Nakai T, Numata T, Arai H.
Community Activities Predict Disability and Mortality in Community-Dwelling Older Adults.
Geriatr Gerontol Int  (2018)
10.1111/ggi.13315
原著論文10
Okura M, Ogita M, Yamamoto M, Nakai T, Numata T, Arai H.
Health checkup behavior and individual health beliefs in older adults.
Geriatr Gerontol Int , 18 (2) , 338-351  (2018)
10.1111/ggi.13169
原著論文11
Okura M, Ogita M, Yamamoto M, Nakai T, Numata T, Arai H.
The relationship of community activities with cognitive impairment and depressive mood independent of mobility disorder in Japanese older adults.
Arch Gerontol Geriatr , 70 , 54-61  (2017)
10.1016/j.archger.2016.12.010
原著論文12
Okura M, Ogita M, Yamamoto M, Nakai T, Numata T, Arai H.
Self-assessed kyphosis and chewing disorders predict disability and mortality in community-dwelling older adults.
J Am Med Dir Assoc , 18 (6) , 550.e1-550.e6  (2017)
10.1016/j.jamda.2017.02.012
原著論文13
Okura M, Ogita M, Kami town municipal office staff,Arai H
Self-reported cognitive frailty predicts adverse health outcomes for community-dwelling older adults based on an analysis of sex and age
J Nutr Health Aging  (2019)

公開日・更新日

公開日
2023-02-14
更新日
-

収支報告書

文献番号
201417001Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
17,360,000円
(2)補助金確定額
17,360,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 4,306,447円
人件費・謝金 1,434,379円
旅費 835,792円
その他 6,777,382円
間接経費 4,006,000円
合計 17,360,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2017-10-03
更新日
-