文献情報
文献番号
201415119A
報告書区分
総括
研究課題名
小児呼吸器形成異常・低形成疾患に関する実態調査ならびに診療ガイドライン作成に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H26-難治等(難)-一般-084
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
臼井 規朗(大阪府立母子保健総合医療センター 小児外科)
研究分担者(所属機関)
- 田口 智章(九州大学大学院医学研究院 小児外科学分野)
- 早川 昌弘(名古屋大学医学部附属病院総合周産期母子医療センター 新生児科)
- 奥山 宏臣(大阪大学大学院医学系研究科 小児成育外科)
- 吉田 英生(千葉大学大学院医学研究院 小児外科)
- 増本 幸二(筑波大学医学医療系 小児外科)
- 金森 豊(国立成育医療研究センター臓器運動器病態外科部 小児外科)
- 高橋 重裕(国立成育医療研究センター周産期・母性診療センター 新生児科)
- 漆原 直人(静岡県立こども病院 小児外科)
- 川瀧 元良(東北大学周産母子センター 産婦人科)
- 稲村 昇(大阪府立母子保健総合医療センター 小児循環器科)
- 木村 修(京都府立医科大学大学院 小児外科)
- 岡崎 任晴(順天堂大学医学部附属浦安病院 小児外科)
- 豊島 勝昭(神奈川県立こども医療センター 新生児科)
- 黒田 達夫(慶應義塾大学外科学 小児外科)
- 渕本 康史(国立成育医療研究センター臓器運動器病態外科部 小児外科)
- 松岡 健太郎(国立成育医療研究センター 病理診断部)
- 野澤 久美子(神奈川県立こども医療センター 放射線科)
- 前田 貢作(兵庫県立こども病院 小児外科)
- 西島 栄治(愛仁会高槻病院 小児外科)
- 守本 倫子(国立成育医療研究センター感覚器形態外科 耳鼻咽喉科)
- 肥沼 悟郎(慶應義塾大学 小児科)
- 二藤 隆春(東京大学医学部附属病院 耳鼻咽喉科)
- 藤野 明浩(慶應義塾大学 小児外科)
- 小関 道夫(岐阜大学医学部附属病院 小児科)
- 岩中 督(東京大学大学院医学系研究科 小児外科)
- 上野 滋(東海大学医学部外科学系 小児外科学)
- 森川 康英(国際医療福祉大学 小児外科)
- 野坂 俊介(国立成育医療研究センター放射線診療部 放射線診断科)
- 木下 義晶(九州大学大学院医学研究院 小児外科学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
児呼吸器形成異常・低形成疾患には、先天性横隔膜ヘルニア、先天性嚢胞性肺疾患(先天性嚢胞状腺腫様肺形成異常、肺分画症、気管支閉鎖症)、気道狭窄(咽頭狭窄、喉頭狭窄、気管・気管支狭窄)、頚部・胸部リンパ管腫・リンパ管腫症などが含まれる。本研究の目的は、小児呼吸器形成異常・低形成疾患に関して、既に終了した実態調査に加えて新たに気道狭窄についても実態調査を実施して科学的根拠を集積・分析し、診断基準や重症度分類を作成したうえで、全ての疾患について主たる学会・研究会との連携の下に診療ガイドラインを作成し、難病の指定や小児慢性特定疾患の指定を通じて医療政策や社会保障制度の充実に資することである。
研究方法
調査研究において、先天性横隔膜ヘルニア、先天性嚢胞性肺疾患、頚部・胸部リンパ管腫・リンパ管腫症の3疾患では先行研究として実施した際のデータベースを用いた。気道狭窄については咽頭狭窄、喉頭狭窄、気管狭窄、気管・気管支軟化症の4疾患に細分化して新たに調査を実施した。先天性横隔膜ヘルニア、先天性嚢胞性肺疾患、頚部・胸部リンパ管腫・リンパ管腫症の3疾患では、診療ガイドラインの作成に着手した。先天性横隔膜ヘルニア診療ガイドラインの作成は、日本医療機能評価機構のMinds 2014診療ガイドライン作成の手引きに基づいて作成した。重要臨床課題(CQ)を11個策定し、各CQにおける科学的根拠を系統的文献検索とメタ解析により解析し、Grading of recommendations assessment, development and evaluation(GRADE)を用いてエビデンスの質の評価を行い推奨の強さや推奨文を策定した。
結果と考察
先天性横隔膜ヘルニアでは、11のCQに対して網羅的系統的検索により延べ2113件の文献を得て、448件の本文を批判的吟味し、最終的に質の高い科学的根拠といえる89件を採用した。GRADEによる文献の批判的吟味を行い、インフォーマルコンセンサス法により11の推奨文とそれに関する解説文を作成した。先天性嚢胞性肺疾患では428例がデータベース化され解析された。新生児期の重症度、病理診断、治療法、予後などが明らかになり、新たな疾患定義、新分類試案、重症度分類案、クリニカル・クエスチョン試案が策定された。気道狭窄の解析適格例の内訳は、咽頭狭窄61例(12.2%)、喉頭狭窄224例(44.8%)、気管・気管支狭窄82例(16.4%)、気管・気管支軟化症143例(28.6%)であった。いずれの疾患も気道確保が適切になされれば肺機能自体は良好であった。頚部・胸部リンパ管腫・リンパ管腫症では縦隔内で気道狭窄を生じているリンパ管腫、頚部の気道周囲のリンパ管腫に対する硬化療法、舌のリンパ管腫に対する外科的切除、新生児期の乳び胸水に対する積極的な外科的介入、難治性の乳び胸水や呼吸障害を呈するリンパ管腫症に対する治療法に関するクリニカル・クエスチョンが策定された。
本研究によって、わが国で初めて先天性横隔膜ヘルニアに対する診療ガイドラインが作成された。希少疾患である先天性横隔膜ヘルニアの診療ガイドラインが作成されたことは意義深く、このような希少疾患に対する診療ガイドラインを作成すること自体の困難さが実感された一方で、これらの経験が同様の希少疾患である先天性嚢胞性肺疾患、気道狭窄、頚部・胸部リンパ管腫・リンパ管腫症の診療ガイドラインを作成する上で大いに参考になるものと思われた。気道狭窄については、咽頭狭窄、喉頭狭窄、気管・気管支狭窄、気管・気管支軟化症に分類したうえで、本邦で初めて大規模な実態調査が実施された。適切に診断され、初期治療として気道確保された小児気道狭窄症例の生命予後は不良ではないものの、根治的な治療法の確立には至っておらず、長期間の治療を要する症例が多いことが明らかとなった。
本研究によって、わが国で初めて先天性横隔膜ヘルニアに対する診療ガイドラインが作成された。希少疾患である先天性横隔膜ヘルニアの診療ガイドラインが作成されたことは意義深く、このような希少疾患に対する診療ガイドラインを作成すること自体の困難さが実感された一方で、これらの経験が同様の希少疾患である先天性嚢胞性肺疾患、気道狭窄、頚部・胸部リンパ管腫・リンパ管腫症の診療ガイドラインを作成する上で大いに参考になるものと思われた。気道狭窄については、咽頭狭窄、喉頭狭窄、気管・気管支狭窄、気管・気管支軟化症に分類したうえで、本邦で初めて大規模な実態調査が実施された。適切に診断され、初期治療として気道確保された小児気道狭窄症例の生命予後は不良ではないものの、根治的な治療法の確立には至っておらず、長期間の治療を要する症例が多いことが明らかとなった。
結論
希少疾患である先天性横隔膜ヘルニア診療ガイドラインの作成経験は、今後同様の希少疾患である先天性嚢胞性肺疾患、気道狭窄、頚部・胸部リンパ管腫・リンパ管腫症の診療ガイドラインを作成する際の参考になると思われた。先天性嚢胞的肺疾患では、疾患定義(診断基準)、重症度分類案、疾患分類試案を新たに定め、データベースの解析による実態調査結果を踏まえて診療ガイドラインの作成に着手した。気道狭窄では本邦で初めて大規模な実態調査が実施され、小児気道狭窄の実態が明らかとなり、診療ガイドライン作成のために有用な情報が蓄積された。頚部・胸部リンパ管腫・リンパ管腫症では、解決すべき臨床重要課題を解決するために5つのクリニカル・クエスチョンを決定し、今後文献的検索や評価に加え、Web調査による調査研究を行うこととした。
公開日・更新日
公開日
2015-06-26
更新日
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