重症多形滲出性紅斑に関する調査研究

文献情報

文献番号
201415116A
報告書区分
総括
研究課題名
重症多形滲出性紅斑に関する調査研究
課題番号
H26-難治等(難)-一般-081
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
塩原 哲夫(杏林大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 佐山 浩二(愛媛大学 医学部)
  • 相原 道子(横浜市立大学 大学院医学研究科)
  • 末木 博彦(昭和大学 医学部)
  • 森田 栄伸(島根大学 医学部)
  • 浅田 秀夫(奈良県立医科大学 医学部)
  • 椛島 健治(京都大学 大学院医学系研究科)
  • 小豆澤 宏明(大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 橋爪 秀夫(市立島田市民病院)
  • 阿部 理一郎(北海道大学 医学研究科)
  • 高橋 勇人(慶應義塾大学 医学部)
  • 黒沢 美智子(順天堂大学 医学部)
  • 莚田 泰誠(独立行政法人理化学研究所 統合生命医科学研究センター)
  • 外園 千恵(京都府立医科大学 大学院医学研究科)
  • 井川 健(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 佐藤 貴浩(防衛医科大学校 医学教育部医科学進学課程)
  • 魚島 勝美(新潟大学 大学院医歯学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
22,847,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
重症多形滲出性紅斑は皮膚と粘膜を侵襲する疾患群で、Stevens-Johnson症候群(SJS)、中毒性表皮壊死症(TEN)、過敏症症候群 (DIHS)などが含まれる。本疾患群は、急性期の多彩な臨床症状と複雑な臨床経過に加え、慢性期に重症の眼後遺症や多臓器障害、さらに自己免疫疾患を発症する点で、極めて特異な疾患群である。その病態は移植片対宿主病(GVHD)や免疫再構築症候群などの難治性疾患と共通しており、遺伝的因子に加え、ヘルペスウイルスの再活性化や基礎疾患などが重症度、後遺症、予後に大きな差をもたらす。一方、これらの疾患群は、初期の診断が極めて難しく、初期治療の遅延が予後に大きく影響を与えることも知られている。このため、治療指針を含めた診療ガイドラインが必要である。本研究では総括的な診療ガイドライン作成を最終目的として研究を遂行した。
研究方法
1)SJS、TEN、DIHS、扁平苔癬、GVHDの診断基準について、今まで使用時に誤解が生じやすかった診断基準項目の皮膚病変の表記、また、既存の診断基準で明確性に欠けていた皮膚病理組織所見の評価などについての検討、海外の診断基準との整合性についての調整、DIHSの重症度基準の作成を行う。2)SJSとTENに関しては、新規難病登録個人調査票の作成及び難病登録のためのテキストの作成を行う。3)重症多形滲出性紅斑群において、発症初期に予後を予知しえるマーカーはないことから、SJS、TEN、DIHSの早期診断法の確立を行う。4)SJS、TEN、DIHS、扁平苔癬の疫学実態調査、続発症や後遺症を知るための予後追跡調査を実施する。5)治療法の普及及び新規治療法の確立を行う。6)遺伝的背景因子の検証を進める。7)創薬及び発症機序の追求を行うなどの方法で研究を進めた。
結果と考察
SJS及びTEN診断基準の再評価については、既存の診断基準の表記の変更、皮膚病理組織所見などの追加を検討して改定案作成まで進め、また、扁平苔癬においては疾患の定義を確立した。SJSとTENにおいては難病登録のための個人調査票案の入力項目の設定、さらに登録を容易にするための難病テキストを完成させた。DIHSにおいては重症度基準の作成に着手した。重症多形滲出性紅斑群の早期診断のための検査手段は今まで皆無であったが、本年度は多種類のサイトカイン・ケモカインを検証し、これらのバイオマーカーの組合せによる評価が、予後を左右する臨床病型の決定や病態の進展予知に役立つという結果を得た。これらの測定・評価は初期の重症多形滲出性紅斑を的確な診断に導くとともに、治療の選択に極めて有用な情報として、予後の改善に直結すると考えられる。今後は、実際の運用においての問題点を検証する必要がある。SJS及びTENの疫学実態調査では、両疾患の受給者数、受給者の重症度スコアなどが明らかになったが、患者登録者数が少ないという実態も判明した。今後は、SJSとTENの疾患登録システムを認知させるための普及活動が必要である。扁平苔癬においても実態調査を施行し、診療ガイドライン作成のための金属アレルギーの実状、病理組織検査の実施状況、悪性腫瘍との関連などを把握した。SJSとTENの眼病変の予後追跡調査では、年齢・病型・原因薬剤において眼後遺症をもたらす有意なリスクファクターを見いだした。一方、治療面ではSJSとTENへの免疫グロブリン製剤大量療法という新規治療法の臨床研究に協力し、その実用化まで達成し、国内外に発信した。この成果をもとに、この新規治療法を含めて治療指針改訂案の作成まで進展させた。また、ステロイドパルス療法については、本邦での治療実績を基に国際臨床治験を主導し、実施案作成まで進めた。次年度からの実施・運用が期待できる。遺伝的背景因子の研究では、カルバマゼピンやアロプリノールの薬疹に関与する新たな遺伝的背景因子を同定できた。これらは、今後、重症多形滲出性紅斑群の発症回避に大きく寄与すると確信できる。この他、今までに確立させた疾患動物モデルを用いた治療・創薬への応用、発症機序の解明、ウイルス再活性化と治療の関係、診断に役立つ検査法などの検証において研究の進展が得られた。
結論
本年度の研究で得られた重症多型滲出性紅斑の既存の診断基準の改訂や新規追加事項は、早期の確実な診断をもたらし、疾患の診断精度の向上に貢献する。加えて、治療の選択に際しても有用性を発揮し、ひいては予後を改善すると思われる。また、早期診断に有用なバイオマーカーの検出、遺伝的背景因子の解明などの成果は、重症多形滲出性紅斑群の診療ガイドライン作成のための基盤となる情報と位置づけられる。これらの成果に基づいた診療ガイドライン作成は、国民の健康維持や医療の向上に寄与すると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2015-06-26
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2016-05-13
更新日
-

収支報告書

文献番号
201415116Z