エビデンスに基づいた神経免疫疾患の早期診断基準・重症度分類・治療アルゴリズムの確立

文献情報

文献番号
201415109A
報告書区分
総括
研究課題名
エビデンスに基づいた神経免疫疾患の早期診断基準・重症度分類・治療アルゴリズムの確立
課題番号
H26-難治等(難)-一般-074
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
松井 真(金沢医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 池田 修一(信州大学 医学部)
  • 荻野 美恵子(北里大学 医学部)
  • 梶 龍兒(徳島大学 大学院)
  • 神田 隆(山口大学 大学院医学系研究科)
  • 吉良 潤一(九州大学 大学院医学研究院)
  • 楠 進(近畿大学 医学部)
  • 久保田 龍二(鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 桑原 聡(千葉大学 大学院医学研究院)
  • 清水 潤(東京大学 医学部)
  • 清水 優子(東京女子医科大学)
  • 鈴木 則宏(慶應義塾大学 医学部)
  • 錫村 明生(名古屋大学 環境医学研究所)
  • 園生 雅弘(帝京大学 医学部)
  • 祖父江 元(名古屋大学 大学院医学系研究科)
  • 田中 正美(国立病院機構宇多野病院 神経内科)
  • 中辻 裕司(大阪大学 医学系研究科)
  • 新野 正明(国立病院機構北海道医療センター 臨床研究部)
  • 西澤 正豊(新潟大学 脳研究所)
  • 野村 恭一(埼玉医科大学 総合医療センター)
  • 原 寿郎(九州大学 大学院医学研究院)
  • 藤原 一男(東北大学 大学院医学研究科)
  • 松尾 秀徳(国立病院機構長崎川棚医療センター 臨床研究部)
  • 横田 隆徳(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 本村 政勝(長崎総合科学大学 工学部)
  • 山村 隆(国立精神・神経医療研究センター 神経研究所)
  • 吉川 弘明(金沢大学 保健管理センター)
  • 渡邊 修(鹿児島大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
23,308,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、難治性疾患克服研究事業「免疫性神経疾患に関する調査研究班」で長年にわたって行われて来た研究のうち、8主要疾患すなわち多発性硬化症(MS)、重症筋無力症(MG)、ギラン・バレー症候群(GBS)、フィッシャー症候群(FS)、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)、多巣性運動ニューロパチー(MMN)、クロウ・深瀬症候群、HTLV-I関連脊髄症(HAM)については早期診断基準の策定、重症度分類や判定基準を客観的に示すことにより個々の患者の社会的ニーズに応じた医療行為や社会資源の効率的な利用に寄与すること、さらには治療アルゴリズムを確立することによって標準的な治療水準を高めるとともに、個々の患者の病態に応じた治療手段を選択することができるような医療体制の改善を包括的に行うことを目的として構築した。さらに近年の研究により、免疫異常の関与が明らかにされつつある神経疾患群も研究対象とした。これらは免疫異常の関与した神経疾患であるため、早期診断、重症度、治療選択基準のいずれもが、免疫異常や標的組織破壊といったバイオマーカー(研究室レベルでの研究)が判断に大きく寄与する可能性が指摘できる。すなわち、臨床的な有用性に焦点を絞った研究室レベルでの研究成果と、実際の患者予後やQOLに直結する臨床データを直結させ、しかも経時的にその研究成果の社会への貢献度が追えるような研究を行なうこととした。
研究方法
この目的のためには縦断的な研究が不可欠であるため、患者登録システムを構築する必要があるが、対象とする疾患が多岐にわたるため、領域担当幹事を6名指名し、リーダーとしてグループ内で意見を調整しながら具体的かつ主体的に調査研究を進めることとした。平成26年度は各疾患の重症度分類を従来の疫学調査成果に基づいて完成させ、患者登録データの選択に役立つ臨床情報を得ることを主たるテーマに据えた。さらにMSでは、2010版以来のガイドライン改訂に着手する方針を立てた。
結果と考察
MSおよび視神経脊髄炎(NMO)の診断基準と重症度分類を策定した。MGの診断基準は従来のものをそのまま使用し、その重症度分類については使用すべき基準についての資料を整理した。GBSの疾患概要を改訂するとともに、ビッカースタッフ脳幹脳炎の診断基準を提示した。CIDPについては、亜型の治療反応性や予後・重症度分類を確定するための前向きコホート研究の準備を開始した。クロウ・深瀬症候群の最新の情報を取り入れた疾患概要を作成し、またその診断基準を提唱した。新たな神経免疫疾患として、封入体筋炎の診断基準案を作成するとともに重症度分類の策定を行った。さらに、肥厚性硬膜炎の疾患概要の作成と診断基準案を作成した。HAMについての診断基準は確定したものがあるが、重症度分類は納の運動障害度が優れていることを再確認した。
 MS/NMOについては、2004年に両者を区別せずに行なった全国調査を2-3年以内に実施すべく、そのための臨床指標を確立することが急務である。本件の達成のためには、MRIや他の測定系バイオマーカーを用いた早期診断と重症度分類に寄与する指標の確立が必要であり、調査研究の対象患者数を増やして検査データ候補のリストアップを積極的に行なう必要がある。また、高次脳機能障害に焦点を当てたMSの重症度分類の確立が急がれる。MS診療ガイドラインはH27年度中に粗稿を完成させなければならない。MGの診断基準は新たなものが2014ガイドラインで提唱されているが、検討を加えた上で、H27年度中に、班としての正式な診断基準を提出する必要がある。GBSやビッカースタッフ脳幹脳炎、CIDPやMMNについての早期診断基準や重症度分類の確定には、前向き共同研究が不可欠であり、実用化研究班との密な連携を要する。また、中枢末梢連合脱髄症の全国疫学調査結果によれば、いまだ40症例の集積であり、啓蒙を行なって患者の発掘を行なうとともに、さらなる追跡調査を行なって疾患単位としての独自性があることを検証する必要がある。従来大きくは注目されなかった、自己免疫性脳炎や肥厚性硬膜炎その他の疾患について、疾患概念を樹立して患者診療に役立てることは本班の本務の一つであり、重点を置くべき疾患を会議の中で討論しながら選定し、効率的に調査を行う必要がある。
結論
政策研究班としての本研究班であるが、神経免疫疾患という対象は内容が多岐に渡っており、共通項として得られた結論としては、実用化研究班における基礎分野の学際的研究や動物実験の成果があってこそ、本班において対象疾患への応用(早期診断基準の抽出や重症度分類など)を実現化するための原動力となることが、関連疾患合同報告会での活発な討論から明らかになった。

公開日・更新日

公開日
2017-03-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201415109Z