難治性聴覚障害に関する調査研究

文献情報

文献番号
201415067A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性聴覚障害に関する調査研究
課題番号
H26-難治等(難)-一般-032
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
宇佐美 真一(国立大学法人信州大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 福田 諭(北海道大学大学院医学研究科耳鼻咽喉科・頭頸部外科学分野)
  • 佐藤 宏昭(岩手医科大学耳鼻咽喉科学講座)
  • 原 晃(筑波大学医学医療系・耳鼻咽喉科)
  • 石川 浩太郎(国立障害者リハビリテーションセンター)
  • 池園 哲郎(埼玉医科大学耳鼻咽喉科)
  • 野口 佳裕(埼玉医科大学耳鼻咽喉科)
  • 熊川 孝三(虎の門病院耳鼻咽喉科)
  • 加我 君孝(東京医療センター 臨床研究センター)
  • 松永 達雄(東京医療センター臨床研究センター)
  • 小川 郁(慶應義塾大学医学部・耳鼻咽喉科)
  • 山岨 達也(東京大学医学部耳鼻咽喉科)
  • 坂田 英明(目白大学保健医療学部言語聴覚学科)
  • 岡本 牧人(北里大学医学部耳鼻咽喉科)
  • 岩崎 聡(信州大学医学部耳鼻咽喉科)
  • 曽根 三千彦(名古屋大学大学院 医学系研究科耳鼻咽喉)
  • 内藤 泰(神戸市立医療センター中央市民病院)
  • 西崎 和則(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科耳鼻咽喉科)
  • 羽藤 直人(愛媛大学医学部耳鼻咽喉科)
  • 中川 尚志(福岡大学医学部耳鼻咽喉科)
  • 東野 哲也(宮崎大学医学部耳鼻咽喉科)
  • 高橋 晴雄(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科耳鼻咽喉・頭頸部外科学領域)
  • 小橋 元(放射線医学総合研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
難聴は音声言語コミュニケーションの際に大きな障害となるため、日常生活や社会生活の質(QOL)の低下を引き起こし、長期に渡って生活面に支障を来たすため、診断法・治療法の開発が期待されている重要な疾患のひとつである。しかしながら、①聴覚障害という同一の臨床症状を示す疾患の中に原因の異なる多くの疾患が混在しており、②各疾患ごとの患者数が少なく希少であるため、効果的な診断法および治療法は未だ確立されていない状況である。本研究では、急性高度感音難聴(突発性難聴、急性低音障害型感音難聴、外リンパ瘻、自己免疫性難聴、ムンプス難聴、音響外傷、薬剤性難聴)および、慢性高度難聴(遺伝性難聴、特発性難聴、症候群性難聴、外耳・中耳・内耳奇形、耳硬化症、サイトメガロ難聴)を対象に、All Japanの研究体制で調査研究を行う事により、希少な疾患の臨床実態および治療効果の把握を効率的に実施し、診断基準の改訂、重症度分類の改訂および科学的エビデンスに基づいた診療ガイドラインの策定を目的としている。
研究方法
平成26年度は当初計画通り、診断基準改定、診療ガイドライン策定および改訂のための基盤情報となる症例登録(臨床情報調査)に向けた基盤整備を中心に研究を行った。具体的には、臨床調査項目の検討、症例登録票の作成、症例登録レジストリ・ソフトウエアの開発、各施設において倫理委員会承認のプロセスを経て症例登録を開始した。また、各施設過去20年分(電子カルテの導入時期により過去10年分)の臨床データの収集を目標にデータ収集を行った。また、突発性難聴と遺伝性難聴に関しては、共に現時点で1,000例を超える症例の詳細な臨床情報家族歴、聴力像、随伴症状、重症度)および治療実態(治療法とその効果)のデータが収集された疾患に関しては、治療法の有効性に関して検討を行った。
結果と考察
平成26年度は当初計画通り、臨床調査項目の検討、症例登録票の作成、症例登録レジストリ・ソフトウエアの開発、各施設において倫理委員会承認のプロセスを経て症例登録を開始し効率的にデータを収集できている状況である。
特に、突発性難聴では、本年度収集された情報より、重症度・治療効果に関連した因子を検討したところ、難聴の重症度については めまい症状、糖尿病、心疾患の既往、発症時年齢が、治療効果については、めまい症状、高脂血症の有無、心疾患の既往、初診時聴力(重症度)、治療開始までの日数、発症時年齢がそれぞれ関連していることが明らかとなった。これらの項目の多くは局所循環障害による病態を示唆する結果であるため、今後、血圧やLDLコレステロール値、TGなどの指標に関してさらに2次調査を行う事で、より詳細なメカニズムに迫ることができると考えられる。また、近年実施されるようになったステロイド鼓室内投与については、特に糖尿病を合併する患者において、全身状態の悪化を防ぐ目的で多く実施される傾向があった。初回治療としてのステロイド鼓室内投与の治療効果は比較的良好であることが示された。糖尿病の既往のある症例に対して全身の血糖コントロールの上でも有用であるため、今後さらに症例を収集してエビデンスを強固なものにし、診療ガイドラインに盛り込む計画である。また、日本人難聴患者においては、GJB2遺伝子変異による難聴症例の頻度が群を抜いて高く、次いでCDH23、SLC26A4などの遺伝子変異が中程度の頻度であり、その他多くの稀な原因遺伝子変異が関与することを明らかにした。この情報は発症メカニズムの解明や、今後の新たな治療法開発のための重要な基盤情報となることが示唆される。
結論
平成26年度は当初計画通り、診断基準改定、診療ガイドライン策定および改訂のための基盤情報となる症例登録(臨床情報調査)に向けた基盤整備を中心に研究を実施、臨床調査項目の検討、症例登録票の作成、症例登録レジストリ・ソフトウエアの開発、各施設において倫理委員会承認のプロセスを経て症例登録を開始した。また、突発性難聴と遺伝性難聴に関しては、共に現時点で1,000例を超える症例の詳細な臨床情報家族歴、聴力像、随伴症状、重症度)および治療実態(治療法とその効果)のデータが収集されており、当初の予定を上回るスピードで順調に進行している。今後、データの解析や遺伝学的検査の結果に基づくサブタイプ分類を進め、診療指針の改訂を目指す。また、遺伝性難聴の診断基準・重症度分類・診療指針について策定を行った。また騒音性難聴、音響外傷、サイトメガロウイルス感染による難聴の診断基準を策定した。

公開日・更新日

公開日
2017-03-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2016-05-13
更新日
-

収支報告書

文献番号
201415067Z