運動失調症の医療基盤に関する調査研究

文献情報

文献番号
201415065A
報告書区分
総括
研究課題名
運動失調症の医療基盤に関する調査研究
課題番号
H26-難治等(難)-一般-030
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
水澤 英洋(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 病院)
研究分担者(所属機関)
  • 石川 欽也(東京医科歯科大学)
  • 宇川 義一(福島県立医科大学)
  • 岡澤 均(東京医科歯科大学)
  • 吉良 潤一(九州大学大学院医学研究院)
  • 桑原 聡(千葉大学 医学部)
  • 佐々木 秀直(北海道大学大学院医学研究科)
  • 佐々木 真理(岩手医科大学医歯学総合研究所)
  • 祖父江 元(名古屋大学医学部)
  • 高嶋 博(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科)
  • 瀧山 嘉久(山梨大学 医学部)
  • 武田 篤(国立病院機構 仙台西多賀病院)
  • 辻 省次(東京大学医学部神経内科)
  • 中島 健二(鳥取大学医学部医学科脳神経内科)
  • 西澤 正豊(新潟大学脳研究所)
  • 宮井 一郎(社会福祉法人 大道会森之宮病院)
  • 吉田 邦広(信州大学医学部神経難病学講座)
  • 若林 孝一(弘前大学大学院医学研究科)
  • 高橋 祐二(国立精神・神経医療研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
27,231,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
対象疾患は脊髄小脳変性症、多系統萎縮症及び痙性対麻痺。共通課題は診断基準・ガイドライン・重症度指標の作成、鑑別診断と重症度評価のバイオマーカー・最適リハビリテーション法の開発、小脳機能定量的評価法の開発、遺伝要因の探索研究を実施。脊髄小脳変性症は、診断基準改訂、患者登録、自然歴調査、生体試料収集、遺伝子診断標準化を実施。多系統萎縮症は、診断基準改訂、自然歴収集、早期鑑別診断のバイオマーカー開発を実施。痙性対麻痺は、JASPACの活動により臨床試料の収集を継続。
研究方法
1.診療ガイドライン ガイドライン小委員会を設立。リハビリテーションの有効な課題と訓練手法、効果判定スケールの開発を推進。2.診断基準 臨床像・画像所見・分子疫学の検討を行い、診断基準を作成。 3.重症度指標 評価基準案を再検討し、有用性について検証。4.患者登録・自然歴調査・臨床試料収集コンソーシアムJ-CATを構築、共通の指標で自然歴調査。遺伝子検査を標準化。多施設共同研究組織JASPACとJAMSACを継続。5.疫学・臨床病理 疫学、臨床症状、検査所見、最終診断、遺伝性疾患との鑑別、神経病理所見を検討し疾患の実態と鑑別指標を明らかにする。6.MRI・機能画像MRI、PETを用いて早期鑑別診断に有用な画像指標を確立。 7.分子バイオマーカー 診断と病態評価に応用できる分子マーカーを開発。8.小脳機能定量的評価法 プリズム眼鏡による小脳機能定量評価法、上肢小脳機能の定量的評価法、3軸加速度計を用いた歩行障害の定量的評価法を開発。
結果と考察
2014年7月合同で班会議を開催し、研究方針等を確認、テーマ毎に研究を推進。1.診療ガイドライン 運動失調症:日本神経学会と協力して診療ガイドライン小委員会を設立、委員会を開催。リハビリテーション:エビデンスと今後蓄積が必要なデータを整理。2.診断基準は家族歴の有無、除外診断、MSAの除外、遺伝性SCDの遺伝子検査などの分析結果を踏まえてCCAの診断基準案を策定。痙性対麻痺の診断基準案の尤度比を算出し、有用性を明らかにした。3.重症度分類 運動機能としてのmRS、呼吸機能、食事・栄養機能の3軸で評価する共通重症度分類を作成。多系統萎縮症の統一された日本語版の妥当性・信頼性を検討。4.患者登録・自然歴調査・臨床試料収集 J-CATにおけるWeb患者登録システムを構築。遺伝子検査の検体ロジスティックスを整備。Machado-Joseph病、脊髄小脳失調症6型:3年間の調査により自然歴を明らかにした。SCA6の追跡結果を論文化した。多系統萎縮症:レジストリー・システムの予備的検討。痙性対麻痺:JASPACによる臨床試料の収集と網羅的遺伝子診断サービス。 5.疫学・臨床病理 脊髄小脳変性症:成人発症で緩徐進行性小脳性運動失調を呈する患者181名において21名がCCAと診断。脊髄小脳失調症36型(SCA36):全SCAの中の頻度は2%以下程度であった。聴力低下、位置性振戦、認知機能障害、眼瞼下垂、感覚神経優位の軸索障害を合併した。多系統萎縮症:発症年齢は33~79歳(平均61.6歳)、発症から診断までは3.2 ± 2.3年であった。エクソーム解析:軸索ニューロパチーを伴う脊髄小脳失調症を呈する2家系で、新規の原因遺伝子を同定した。病理学的検討: Unverricht-Lundborg病の臨床および病理所見を明らかにした。特定疾患研究事業調査:孤発性55.4%、常染色体優性遺伝性31.1%、常染色体劣性遺伝性1.3%、痙性対麻痺7.9%、不明 3.2% 6.MRI・機能画像 [11C]BF-227 PETが、多系統萎縮症とパーキンソン病との鑑別に有用。拡散尖度画像(DKI)による新たな画像指標dMRPIの疾患識別能の感度は80~100%、特異度は80-93%であった。多系統萎縮症で、被殻と、淡蒼球、小脳、前頭葉の一部との皮質下の機能的回路の障害を認めた。 7.分子バイオマーカー MSA-C群で髄液中サイトカインが高値で、罹病期間や橋の萎縮と相関していた。SCA1のバイオマーカー候補分子の検討を開始。8小脳機能の定量的評価法iPataxを用いた視標追跡課題が小脳性運動失調の重症度評価に有用であった。プリズム順応検査の最適化。3軸加速度計では、直線歩行時の左右平均振幅が重症度と相関した。立位保持の動揺性、歩行の速度、ストライド長、ピッチ、歩行の規則性、動揺性が有用。
結論
診断基準・重症度分類の策定、診療ガイドライン委員会の設立、患者登録システムの構築、疫学情報の充実、画像・分子マーカー候補の発見、運動失調症状の定量的評価法の確立を達成。運動失調症の医療基盤の整備に向け、着実に研究が遂行されている。次年度も、さらに強力に研究を推進していく予定。

公開日・更新日

公開日
2015-06-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

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研究成果の刊行に関する一覧表
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公開日・更新日

公開日
2017-03-31
更新日
-

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文献番号
201415065Z