文献情報
文献番号
201415026A
報告書区分
総括
研究課題名
VCP阻害剤を用いた眼難治疾患に対する新規治療法開発
研究課題名(英字)
-
課題番号
H25-難治等(難)-一般-018
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
池田 華子(京都大学医学部附属病院 臨床研究総合センター)
研究分担者(所属機関)
- 吉村 長久(京都大学大学院 医学研究科)
- 辻川 明孝(香川大学 医学部)
- 垣塚 彰(京都大学大学院 生命科学研究科)
- 清水 章(京都大学医学部附属病院 臨床研究総合センター)
- 池田 隆文(京都大学医学部附属病院 臨床研究総合センター)
- 三村 治(兵庫医科大学 医学部)
- 石川 裕人(兵庫医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
125,462,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
虚血性視神経症は、50歳以上の年間発症率が2-10人/10万人とされる希少疾患であり、同様に眼虚血症候群に分類される網膜中心動脈閉塞症は、さらに発症人数が少なく、ともに網膜神経節細胞を中心とした網膜内層の変性・脱落による不可逆的な極度の視力・視野障害がおこる。両疾患ともに、詳細な発症機構は不明であり、確立した治療法が存在しないため、生活面での永続的な支障は大きい。
VCP(valosin-containing protein)は、細胞がストレス応答を引き起こす過程で重要な働きをする蛋白質である。京都大学ではVCPと呼ばれる細胞内の主要 ATPaseに対する阻害剤(KUS:Kyoto University Substance化合物)の開発に成功し、細胞種を超えてin vivoでの細胞死を防御する作用、網膜の細胞を細胞死から保護する作用を有し、緑内障や網膜変性モデルマウスへの投与実験にて、網膜神経節細胞、視細胞の変性抑制効果のみならず網膜電図での機能保持が認められることが明らかになってきた。したがって、この薬剤は緑内障や網膜色素変性のみならず、虚血性視神経症や中心動脈閉塞症など眼難治疾患に対しても、新たな治療薬となる可能性を検証する意義が生じてきた。
本研究では、希少眼難治疾患である虚血性視神経症および網膜中心動脈閉塞症に対し、京都大学で開発されたKUS剤を用い、医師主導治験を実施していく礎として、1)両疾患に対する非臨床薬効薬理試験をおおまかに完了させること、2)KUS剤のGMP製造検討を行い、GMP製造体制を確立すること、3)第Ⅰ相医師主導治験に必要最低限のGLP毒性試験に着手・完了を目指すこと、4)さらに、被験者リクルートの観点から疾患レジストリの構築を行うことを目的とした。
VCP(valosin-containing protein)は、細胞がストレス応答を引き起こす過程で重要な働きをする蛋白質である。京都大学ではVCPと呼ばれる細胞内の主要 ATPaseに対する阻害剤(KUS:Kyoto University Substance化合物)の開発に成功し、細胞種を超えてin vivoでの細胞死を防御する作用、網膜の細胞を細胞死から保護する作用を有し、緑内障や網膜変性モデルマウスへの投与実験にて、網膜神経節細胞、視細胞の変性抑制効果のみならず網膜電図での機能保持が認められることが明らかになってきた。したがって、この薬剤は緑内障や網膜色素変性のみならず、虚血性視神経症や中心動脈閉塞症など眼難治疾患に対しても、新たな治療薬となる可能性を検証する意義が生じてきた。
本研究では、希少眼難治疾患である虚血性視神経症および網膜中心動脈閉塞症に対し、京都大学で開発されたKUS剤を用い、医師主導治験を実施していく礎として、1)両疾患に対する非臨床薬効薬理試験をおおまかに完了させること、2)KUS剤のGMP製造検討を行い、GMP製造体制を確立すること、3)第Ⅰ相医師主導治験に必要最低限のGLP毒性試験に着手・完了を目指すこと、4)さらに、被験者リクルートの観点から疾患レジストリの構築を行うことを目的とした。
研究方法
H26年度は以下を実施した
1) KUS剤の網膜中心動脈閉塞症に対する非臨床薬効薬理試験
2) KUS剤の虚血性視神経症に対する非臨床薬効薬理試験
3) KUS剤の受容体結合試験
4) KUS剤の製造法検討、GLP原薬製造
5) KUS剤の製剤化検討
6) KUS剤の安全性試験
7) 疾患レジストリ作成
8) PMDA相談
1) KUS剤の網膜中心動脈閉塞症に対する非臨床薬効薬理試験
2) KUS剤の虚血性視神経症に対する非臨床薬効薬理試験
3) KUS剤の受容体結合試験
4) KUS剤の製造法検討、GLP原薬製造
5) KUS剤の製剤化検討
6) KUS剤の安全性試験
7) 疾患レジストリ作成
8) PMDA相談
結果と考察
1) KUS剤の網膜中心動脈閉塞症に対する非臨床薬効薬理試験
虚血再灌流ラットにおいて、KUS剤投与群では、網膜菲薄化が有意に抑制され、網膜神経節細胞の減少が有意に抑制された。また、網膜電図においても、対照群と比較して有意に振幅が大きく、視機能も保たれていることが明らかになった。
2) KUS剤の虚血性視神経症に対する非臨床薬効薬理試験
本法では、虚血性視神経症の有効なモデル作成ができなかった。引き続き、条件検討が必要である。
3) KUS剤の受容体結合試験
ERα、ERβ、AR、PR、GR、RARα、RARβ、RARγ、RXRαの各受容体に関して、KUSとの結合性は認めなかった。
4) KUS剤の製造法・プロセス検討
これまでのKUS121剤の製造工程を変更し、より高純度の原薬製造が可能となった。改良法にてGLP試験用原薬を合成した。純度も99.2%で他特に大きな問題もなかった。
5) KUS剤の製剤化検討
治験薬の製剤化に関して、安定な処方がほぼ確定した。今後、処方検討や無菌化検討を実施する必要がある。
6) KUS剤の安全性試験
KUS121のfirst in human前に必要最低限と考えられる安全性試験を実施した。
6-1) 反復投与毒性試験(GLP)
6-2) 局所刺激試験(GLP)
6-3) 安全性薬理試験(GLP)
6-4) 遺伝毒性試験(GLP)
7) 疾患レジストリ構築
網膜中心動脈閉塞症および虚血性視神経症に関して、自然経過をみる前向き臨床研究を実施、無治療では、視機能予後が極めて不良であることを確認。さらに、発症早期での患者紹介体制構築を行った。
虚血再灌流ラットにおいて、KUS剤投与群では、網膜菲薄化が有意に抑制され、網膜神経節細胞の減少が有意に抑制された。また、網膜電図においても、対照群と比較して有意に振幅が大きく、視機能も保たれていることが明らかになった。
2) KUS剤の虚血性視神経症に対する非臨床薬効薬理試験
本法では、虚血性視神経症の有効なモデル作成ができなかった。引き続き、条件検討が必要である。
3) KUS剤の受容体結合試験
ERα、ERβ、AR、PR、GR、RARα、RARβ、RARγ、RXRαの各受容体に関して、KUSとの結合性は認めなかった。
4) KUS剤の製造法・プロセス検討
これまでのKUS121剤の製造工程を変更し、より高純度の原薬製造が可能となった。改良法にてGLP試験用原薬を合成した。純度も99.2%で他特に大きな問題もなかった。
5) KUS剤の製剤化検討
治験薬の製剤化に関して、安定な処方がほぼ確定した。今後、処方検討や無菌化検討を実施する必要がある。
6) KUS剤の安全性試験
KUS121のfirst in human前に必要最低限と考えられる安全性試験を実施した。
6-1) 反復投与毒性試験(GLP)
6-2) 局所刺激試験(GLP)
6-3) 安全性薬理試験(GLP)
6-4) 遺伝毒性試験(GLP)
7) 疾患レジストリ構築
網膜中心動脈閉塞症および虚血性視神経症に関して、自然経過をみる前向き臨床研究を実施、無治療では、視機能予後が極めて不良であることを確認。さらに、発症早期での患者紹介体制構築を行った。
結論
KUS剤の薬効薬理試験、GMP製造準備、GLP安全性試験が、順調に実施され、特に問題となる事項はなかった。製剤化検討、原薬GMP製造を引き続き行い、医師主導治験を実施予定である。
公開日・更新日
公開日
2017-03-31
更新日
-