文献情報
研究課題名
多発性硬化症の新規免疫修飾薬を検証する医師主導治験
研究代表者(所属機関)
山村 隆(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 神経研究所疾病研究部)
研究分担者(所属機関)
- 佐藤典子(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 放射線診療部)
- 三宅幸子(順天堂大学医学部免疫学講座)
- 大木伸司(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター神経研究所免疫研究部)
- 佐藤和貴郎(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター神経研究所免疫研究部)
- 佐藤準一(明治薬科大学薬学部生命創薬科学科)
- 案浦洋一(アスビオファーマ株式会社生物医学研究所創薬化学研究部)
- 木村 円(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター トランスレーショナル・メディカルセンター臨床研究支援部)
- 米本直裕(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所精神薬理研究部)
- 服部正平(東京大学大学院新領域創成科学研究科)
- 村田美穂(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター病院)
- 鈴木麻衣子(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター トランスレーショナル・メディカルセンター臨床研究支援部)
- 中村治雅(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター トランスレーショナル・メディカルセンター臨床研究支援部)
- 岩渕和也(北里大学医学部免疫学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究者交替、所属機関変更
研究分担者交替について
中村治雅(平成26年4月11日より追加登録)
米本直裕(平成26年6月11日までで終了)
岩渕和也(平成26年6月12日より追加登録)
研究報告書(概要版)
研究目的
多発性硬化症(MS)は人生の開花期を迎える若年者に発症し、患者の人生に影響を与える深刻な疾病である。本研究の目的は、国産の経口薬OCHをMSの標準薬として開発することである。OCHはNKT細胞を活性化して免疫バランスを修飾する糖脂質医薬である(Nature 413:531, 2001)。
研究方法
本研究ではOCHのFirst in human試験を医師主導治験として実施して、OCHのヒトにおける安全性および薬物動態を検証するとともに、フェーズ2試験以降の薬物開発に有用な情報を得るための研究を進めている。OCHの投与は国立精神・神経医療研究センター(NCNP)病院、リンパ球解析はNCNP神経研究所において実施した。試験に参加したMS患者血液サンプルを、多色素フローサイトメーター、DNAマイクロアレイ、nCounterなどにより解析したほか、リンパ球をミエリン塩基性タンパク(MBP)で刺激して、そのサイトカイン産生を測定した。
結果と考察
平成26年3月に開始されたMS患者に対してOCHを週に1回投与する投与試験(STEP2試験)を継続した。3ヶ月間投与完了症例2例を含む6症例に対する投与が実施された。バイオマーカー解析では、健常者と同様に、MS患者においても、GM-CSF産生T細胞の減少、NK細胞の増加、抗原提示細胞のHLA-DR抗原発現低下などの変化が確認された。OCHを複数回投与することによるNKT細胞数の変化については、有意な結果が得られなかったが、NK細胞数の増加傾向が見られた。
結論
OCHの開発は、シーズの探索、前臨床試験、医師主導治験までを一貫してNCNPで行うという前例のない試みであるが、MS患者対象の反復投与試験の実現にまで到達した。新薬の開発においてヒト投与に至る例はきわめて少ないことを考慮すれば、大きな成果が挙がりつつあると言えよう。今後、複数の企業との情報交換を継続し、医師主導治験から企業連携治験への円滑な移行を進めるとともに、OCHの他疾患への適応も検討する必要がある。
研究報告書(PDF)
研究報告書(紙媒体)
文献情報
研究課題名
多発性硬化症の新規免疫修飾薬を検証する医師主導治験
研究代表者(所属機関)
山村 隆(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 神経研究所疾病研究部)
研究分担者(所属機関)
- 佐藤典子(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 放射線診療部)
- 三宅幸子(順天堂大学医学部免疫学講座)
- 大木伸司(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター神経研究所免疫研究部)
- 佐藤和貴郎(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター神経研究所免疫研究部)
- 佐藤準一(明治薬科大学薬学部生命創薬科学科)
- 案浦洋一(アスビオファーマ株式会社生物医学研究所創薬化学研究部)
- 木村 円(独立行政法人国立精神・神経医療研究センタートランスレーショナル・メディカルセンター臨床研究支援部)
- 米本直裕(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所精神薬理研究部)
- 服部正平(東京大学大学院新領域創成科学研究科)
- 村田美穂(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター病院)
- 鈴木麻衣子(独立行政法人国立精神・神経医療研究センタートランスレーショナル・メディカルセンター臨床研究支援部)
- 中村治雅(独立行政法人国立精神・神経医療研究センタートランスレーショナル・メディカルセンター臨床研究支援部)
- 小川雅文(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター病院)
- 荒浪利昌(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター神経研究所免疫研究部)
- 立石智則(独立行政法人国立精神・神経医療研究センタートランスレーショナル・メディカルセンター臨床研究支援部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究報告書(概要版)
研究目的
多発性硬化症(MS)は人生の開花期を迎える若年者に発症し、患者の人生に影響を与える深刻な疾病である。従来、市場規模の小さい日本では企業によるMS医薬の開発は困難とされ、欧米で開発された高価な医薬に依存する状態が続いて来た。しかし、分子標的医薬には重症感染症や癌を誘発するリスクがあり、ファーストライン医薬(インターフェロン注射製剤)もアドヒアランスに問題がある。本研究の目的は、国産の経口薬OCHをMSの標準薬として開発することである。OCHはNKT細胞を活性化して免疫バランスを修飾する糖脂質医薬である(Nature 413:531, 2001)。
研究方法
本研究ではOCHのFirst in human試験を医師主導治験として実施して、OCHのヒトにおける安全性および薬物動態を検証するとともに、フェーズ2試験以降の薬物開発に有用な情報を得るために、血液リンパ球フローサイトメーター解析、DNAマイクロアレイ解析とバイオマーカー探索を並行して行った。OCHの投与は国立精神・神経医療研究センター(NCNP)病院、リンパ球解析はNCNP神経研究所において実施した。それに先立ち、非臨床試験による安全性確認、GMP原薬合成、臨床試験実施体制の整備を進め、PMDAとの協議を経て治験プロトコールを確定した。
結果と考察
平成24年11月からNCNP病院において健常者を対象とするOCH経口単回投与試験を開始し、5コホート(計15例)に対する投与を終了した。OCHの経口吸収は、動物実験で想定されるよりも効率が良く、経口薬としての開発が可能であることが確認された。またOCH投与後のGM-CSF産生T細胞の減少、樹状細胞のHLA-DR発現減少、炎症関連遺伝子NR4A2の発現低下など、OCHの薬効を示唆する所見を得た(2件の用途特許を出願)。PMDA との協議の上、MS患者対象フェーズ1試験(反復投与試験)のプロトコールを完成し、MS患者に対してOCHを週に1回投与する投与試験を平成26年3月に開始した。3ヶ月間投与完了症例2例を含む6症例に対する投与が実施され、健常者と同様、MS患者においても、GM-CSF産生T細胞の減少などの変化が確認された。OCHを複数回投与することによるNKT細胞数の変化については、有意な結果が得られなかったが、NK細胞数の増加傾向が見られた。
結論
OCHの開発は、シーズの探索、前臨床試験、医師主導治験までを一貫してNCNPで行うという前例のない試みであるが、MS患者対象の反復投与試験の実現にまで到達した。新薬の開発においてヒト投与に至る例はきわめて少ないことを考慮すれば、大きな成果が挙がりつつあると言えよう。早期にFirst in human 試験を行うことの意義が明らかになり、トランスレーション研究の実施を検討する研究者にとって重要な情報が提供できた。
研究報告書(PDF)
研究報告書(紙媒体)
行政効果報告
成果
専門的・学術的観点からの成果
多発性硬化症の治療薬候補である糖脂質OCH(免疫制御性リンパ球NKT細胞の活性化能を有しマウス自己免疫病態を改善する)のfirst in human 試験を企画し、ナショナルセンターで実現した画期的な研究である。単回ないし複数回の投与を受けたヒトにおいて、OCHによる免疫修飾が確認された意義は大きい。NKT細胞を標的とする創薬の意義を示した、トランスレーション研究の成功例であり、あとに続く研究に大きな示唆を与えるものである。
臨床的観点からの成果
新薬候補OCHの安全性やヒトにおける免疫修飾能が確認されたので、将来的には、OCHが有効性、安全性、利便性において優れた経口薬として臨床現場で使用できる可能性が出てきた。多発性硬化症のみならず、他の免疫疾患にも効果が期待され、実際慶應大学においてクローン病を対象とするOCHの医師主導治験が開始された。臨床的観点からも大きな成果が挙がっていると思われる。
その他のインパクト
OCH治験の実施にあたってプレスリリースを行ったところ、日経産業新聞、中部経済新聞、MT Proなどで報道された。また日本神経免疫学会での発表内容は、Medical Tribuneで取り上げられた。
最終的な実用化を目指した開発研究が、AMEDの新規課題として採択されたことも特筆すべきである。
発表件数
原著論文(和文)
0件
開発段階にある薬剤の医師主導治験に関する内容であり、発表を次年度以降とした。
原著論文(英文等)
0件
開発段階にある薬剤の医師主導治験に関する内容であり、発表を次年度以降とした。
その他論文(和文)
0件
開発段階にある薬剤の医師主導治験に関する内容であり、発表を次年度以降とした。
その他論文(英文等)
0件
開発段階にある薬剤の医師主導治験に関する内容であり、発表を次年度以降とした。
その他成果(特許の出願)
2件
薬剤開発に関する特許出願を行った。
その他成果(普及・啓発活動)
2件
NPO法人との共催で、MS患者対象のフォーラムを開催して、OCH治験への協力を呼びかけたほか、NCNP多発性硬化症センター主催の患者講演会(計10回開催)で紹介を行った。
特許
特許の名称
GM-CSF産生T細胞抑制剤、及びTh1/Th2免疫バランス調整剤
詳細情報
分類:
特許番号: 特願2014-99587
発明者名: 能登大介, 三宅幸子, 山村隆
権利者名: 国立精神・神経医療研究センター
出願年月日: 20140513
特許の名称
NKT細胞活性化に伴う選択的IL-4産生誘導活性の評価方法
詳細情報
分類:
特許番号: 特願2014-104272
発明者名: 能登大介, 三宅幸子, 山村隆
権利者名: 国立精神・神経医療研究センター
出願年月日: 20140520
主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)
収支報告書