希少性難治性疾患-神経・筋難病疾患の進行抑制治療効果を得るための新たな医療機器、生体電位等で随意コントロールされた下肢装着型補助ロボット(HAL-HN01)に関する医師主導治験の実施研究

文献情報

文献番号
201415015A
報告書区分
総括
研究課題名
希少性難治性疾患-神経・筋難病疾患の進行抑制治療効果を得るための新たな医療機器、生体電位等で随意コントロールされた下肢装着型補助ロボット(HAL-HN01)に関する医師主導治験の実施研究
課題番号
H24-難治等(難)-一般-006
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
中島 孝(独立行政法人国立病院機構新潟病院 神経内科)
研究分担者(所属機関)
  • 山海嘉之(筑波大学 大学院システム情報工学研究科)
  • 河本浩明(CYBERDYNE株式会社)
  • 新宮正弘(CYBERDYNE株式会社 研究開発本部)
  • 斎藤加代子(東京女子医科大学 附属遺伝子医療センター)
  • 青木正志(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 中野今治(東京都立神経病院)
  • 中川正法(京都府立医科大学 大学院)
  • 中川義信(独立行政法人国立病院機構四国こどもとおとなの医療センター)
  • 駒井清暢(独立行政法人国立病院機構医王病院)
  • 齊藤利雄(独立行政法人国立病院機構刀根山病院 臨床研究部)
  • 石川悠加(独立行政法人国立病院機構八雲病院 臨床研究部)
  • 小林庸子(国立精神・神経医療研究センター病院 リハビリテーション科)
  • 前島伸一郎(藤田保健衛生大学 医学部)
  • 伊藤道哉(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 松田純(静岡大学 人文社会科学部)
  • 美馬達哉(京都大学 医学研究科附属脳機能総合研究センター)
  • 中山優季(公益財団法人東京都医学総合研究所 運動・感覚システム研究分野 難病ケア看護研究室)
  • 井手口直子(帝京平成大学 薬学部薬学科)
  • 川口有美子(NPO法人ALS/MNDサポートセンターさくら会 研究事業部)
  • 高田信二郎(独立行政法人国立病院機構徳島病院 整形外科、リハビリテーション科)
  • 梶龍兒(徳島大学 大学院ヘルスバイオサイエンス研究部)
  • 田中惠子(金沢医科大学 神経内科学、総合医学研究所)
  • 安藤喜仁(自治医科大学 内科学講座神経内科学部門)
  • 玉岡晃(筑波大学 医学医療系神経内科)
  • 松村明(筑波大学 医学医療系)
  • 山野嘉久(聖マリアンナ医科大学 難病治療研究センター)
  • 池田哲彦(独立行政法人国立病院機構新潟病院 神経内科)
  • 高嶋博(鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 坪井義夫(福岡大学 医学部神経内科)
  • 井上永介(国立成育医療センター 臨床研究教育部生物統計室)
  • 河内泉(新潟大学 医歯学総合病院 神経内科)
  • 長谷川泰弘(聖マリアンナ医科大学 神経内科)
  • 下堂薗恵(鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 立岩真也(立命館大学 大学院先端総合学術研究科)
  • 武富卓三(CYBERDYNE株式会社 研究開発本部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
320,221,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
希少性難病である脊髄性筋萎縮症,球脊髄性筋萎縮症,シャルコー・マリー・トゥース病,筋萎縮性側索硬化症,遠位型ミオパチーなど筋萎縮を来す疾患群は進行性・難治性であり根本的治療法は成功しておらず,多専門職種ケアによるQOLの向上が試みられているのみである.いかなる治療によっても,上記疾患等による骨格筋の筋力低下・萎縮の悪化を抑制することができず,至急に解決すべき課題である.HAL(Hybrid assistive limb)は研究分担者の山海により開発された生体電位駆動型の装着型ロボットで,人の皮膚表面の筋電位などの生体電位に加速度,関節角度,床反力センサなどの情報を組み合わせ,リアルタイムに骨格筋の随意運動を増強するために開発された.この技術を基に,上記疾患において作動可能なHAL-神経・筋難病型下肢モデル(HAL-HN01)が開発された.これは他のHALとは異なり,病的筋の微小な電位をも検出し罹患筋をアシストできる.本研究の目的は上記などの治療法が無い希少性神経・筋難病患者がこのHAL-HN01を定期的,間欠的に装着し,適切なアシストにより筋収縮を助けられることで,疾患の経過でおきる筋萎縮と筋力低下の進行を抑制する事ができるという背景仮説の下で,短期使用の歩行不安定症の改善効果により新医療機器としての承認を目指す医師主導治験方法を研究し実施することである.疾患専門家と臨床評価研究者により対照群と群間評価する短期試験の実施方法を研究し,安全性と被験者保護のために,倫理・哲学者,患者団体を加え研究し,薬事法に基づく治験を実施し薬事承認に必要な結果を得る.
研究方法
希少性神経筋難病疾患に対するHAL-HN01を使用した歩行治療プログラムの科学的評価のために,薬事法GCPに基づく治験(NCY-3001試験)研究を行うと同時に, 多施設共同での治験の信頼性コントロールのための研究を行った.さらに適応拡大治験としてHAM(ヒトT細胞白血病ウイルスI型関連脊髄症)および遺伝性痙性対麻痺などの痙性対麻痺症に対するNCY-2001試験プロトコールを作成し開始した. 対照群に対するHHH-1001試験もおこなった.
結果と考察
希少性神経筋難病疾患として,病変部位が脊髄運動ニューロンより下位の疾患群を対象とする治験「希少性神経・筋難病疾患の進行抑制治療効果を得るための新たな医療機器,生体電位等で随意コントロールされた下肢装着型補助ロボット(HAL-HN01)に関する医師主導治験-短期効果としての歩行改善効果に対する無作為化比較対照クロスオーバー試験(NCY-3001試験)」の治験届は提出され治験の一症例目が開始(2013年3月6日)され,多施設共同治験として進捗し2014年3月26日に事前に予定した30例の二次登録が終了した.多施設(NHO新潟病院,刀根山病院,徳島病院,医王病院,国立精神・神経医療研究センター病院,京都府立医科大学附属病院,自治医科大学附属病院,筑波大学附属病院,東京女子医科大学病院)で治験を実施し,動的な層別割り付けは成功し, A群B群に均衡して割り付けられた.視覚的歩行評価中央判定委員会を開催した.全治験患者の後観察は2014年8月8日に終了し,データ仮固定後,症例とデータの取扱に関する基準に従い,症例検討会にて症例の取り扱いが決定された.データは固定され,被験者及び解析対象集団が作成され有効性および安全性解析を行ない,2015年2月25日に治験調整医師は治験総括報告書を作成完了した. 治験結果の結論から,希少性神経・筋難病疾患における歩行不安定症の患者が短期間間欠的に HAL-HN01 を装着して歩行訓練を行うことで歩行機能の改善が得られること及び HAL-HN01 は高い安全性を備えていることが証明され,治験機器提供会社であるサイバーダイン株式会社はそれに基づき,2015年3月25日に薬事申請(製造販売承認申請)をおこなった.希少疾病用医療機器指定は2014年12月になされ優先審査対象となっている.脊髄運動ニューロンより上位の病変に基づく歩行不安定症として,HTLV-1関連脊髄症(HAM)等の痙性対麻痺症による歩行不安定症に対する短期の歩行改善効果についての多施設共同無作為化比較対照並行群間試験(NCY-2001試験)を医師主導治験として2014年9月から開始し進捗させた.
結論
NCY-3001試験は研究期間内に予定どおり終了して治験総括報告書の完成および薬事申請に成功した.今後,希少疾患用医療機器として薬事承認が見込まれる. 生体電位駆動型の装着型医療ロボットであるHAL-HN01の無作為化比較対照試験を治験として行う事で,希少性神経・筋難病疾患における歩行不安定症に対する歩行治療法の新たなエビデンスを確立した.

公開日・更新日

公開日
2017-03-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201415015B
報告書区分
総合
研究課題名
希少性難治性疾患-神経・筋難病疾患の進行抑制治療効果を得るための新たな医療機器、生体電位等で随意コントロールされた下肢装着型補助ロボット(HAL-HN01)に関する医師主導治験の実施研究
課題番号
H24-難治等(難)-一般-006
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
中島 孝(独立行政法人国立病院機構新潟病院 神経内科)
研究分担者(所属機関)
  • 山海嘉之(筑波大学 大学院システム情報工学研究科)
  • 河本浩明(CYBERDYNE株式会社)
  • 新宮正弘(CYBERDYNE株式会社 研究開発本部)
  • 斎藤加代子(東京女子医科大学 附属遺伝子医療センター)
  • 青木正志(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 中野今治(東京都立神経病院)
  • 中川正法(京都府立医科大学 大学院)
  • 中川義信(独立行政法人国立病院機構四国こどもとおとなの医療センター)
  • 駒井清暢(独立行政法人国立病院機構医王病院)
  • 齊藤利雄(独立行政法人国立病院機構刀根山病院 臨床研究部)
  • 石川悠加(独立行政法人国立病院機構八雲病院 臨床研究部)
  • 小林庸子(国立精神・神経医療研究センター病院 リハビリテーション科)
  • 前島伸一郎(藤田保健衛生大学 医学部)
  • 伊藤道哉(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 松田純(静岡大学 人文社会科学部)
  • 美馬達哉(京都大学 医学研究科附属脳機能総合研究センター)
  • 中山優季(公益財団法人東京都医学総合研究所 運動・感覚システム研究分野 難病ケア看護研究室)
  • 井手口直子(帝京平成大学 薬学部薬学科)
  • 川口有美子(NPO法人ALS/MNDサポートセンターさくら会 研究事業部)
  • 高田信二郎(独立行政法人国立病院機構徳島病院 整形外科、リハビリテーション科)
  • 梶龍兒(徳島大学 大学院ヘルスバイオサイエンス研究部)
  • 田中惠子(金沢医科大学 神経内科学、総合医学研究所)
  • 安藤喜仁(自治医科大学 内科学講座神経内科学部門)
  • 玉岡晃(筑波大学 医学医療系神経内科)
  • 松村明(筑波大学 医学医療系)
  • 山野嘉久(聖マリアンナ医科大学 難病治療研究センター)
  • 池田哲彦(独立行政法人国立病院機構新潟病院 神経内科)
  • 高嶋博(鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 坪井義夫(福岡大学 医学部神経内科)
  • 井上永介(国立成育医療センター 臨床研究教育部生物統計室)
  • 河内泉(新潟大学 医歯学総合病院 神経内科)
  • 長谷川泰弘(聖マリアンナ医科大学 神経内科)
  • 下堂薗恵(鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 立岩真也(立命館大学 大学院先端総合学術研究科)
  • 武富卓三(CYBERDYNE株式会社 研究開発本部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
希少性難病である脊髄性筋萎縮症,球脊髄性筋萎縮症,シャルコー・マリー・トゥース病,筋萎縮性側索硬化症,遠位型ミオパチーなど筋萎縮を来す疾患群は進行性・難治性であり根本的治療法は成功しておらず,多専門職種ケアによるQOLの向上が試みられているのみである.いかなる治療によっても,上記疾患等による骨格筋の筋力低下・萎縮の悪化を抑制することができず,至急に解決すべき課題である.HAL(Hybrid assistive limb)は研究分担者の山海により開発された生体電位駆動型の装着型ロボットで,人の皮膚表面の筋電位などの生体電位に加速度,関節角度,床反力センサなどの情報を組み合わせ,リアルタイムに骨格筋の随意運動を増強するために開発された.この技術を基に,上記疾患において作動可能なHAL-神経・筋難病型下肢モデル(HAL-HN01)が開発された.これは他のHALとは異なり,病的筋の微小な電位をも検出し罹患筋をアシストできる.本研究の目的は上記などの治療法が無い希少性神経・筋難病患者がこのHAL-HN01を定期的,間欠的に装着し,適切なアシストにより筋収縮を助けられることで,疾患の経過でおきる筋萎縮と筋力低下の進行を抑制する事ができるという背景仮説の下で,短期使用の歩行不安定症の改善効果により新医療機器としての承認を目指す医師主導治験方法を研究し実施することである.疾患専門家と臨床評価研究者により対照群と群間評価する短期試験の実施方法を研究し,安全性と被験者保護のために,倫理・哲学者,患者団体を加え研究し,薬事法に基づく治験を実施し薬事承認に必要な結果を得る.
研究方法
希少性神経筋難病疾患に対するHAL-HN01を使用した歩行治療プログラムの科学的評価のために,薬事法GCPに基づく治験(NCY-3001試験)研究を行うと同時に, 多施設共同での治験の信頼性コントロールのための研究を行った.さらに適応拡大治験としてHAM(ヒトT細胞白血病ウイルスI型関連脊髄症)および遺伝性痙性対麻痺などの痙性対麻痺症に対するNCY-2001試験プロトコールを作成し開始した. 対照群に対するHHH-1001試験もおこなった.
結果と考察
希少性神経筋難病疾患として,病変部位が脊髄運動ニューロンより下位の疾患群を対象とする治験「希少性神経・筋難病疾患の進行抑制治療効果を得るための新たな医療機器,生体電位等で随意コントロールされた下肢装着型補助ロボット(HAL-HN01)に関する医師主導治験-短期効果としての歩行改善効果に対する無作為化比較対照クロスオーバー試験(NCY-3001試験)」の治験届は提出され治験の一症例目が開始(2013年3月6日)され,多施設共同治験として進捗し2014年3月26日に事前に予定した30例の二次登録が終了した.多施設(NHO新潟病院,刀根山病院,徳島病院,医王病院,国立精神・神経医療研究センター病院,京都府立医科大学附属病院,自治医科大学附属病院,筑波大学附属病院,東京女子医科大学病院)で治験を実施し,動的な層別割り付けは成功し, A群B群に均衡して割り付けられた.視覚的歩行評価中央判定委員会を開催した.全治験患者の後観察は2014年8月8日に終了し,データ仮固定後,症例とデータの取扱に関する基準に従い,症例検討会にて症例の取り扱いが決定された.データは固定され,被験者及び解析対象集団が作成され有効性および安全性解析を行ない,2015年2月25日に治験調整医師は治験総括報告書を作成完了した. 治験結果の結論から,希少性神経・筋難病疾患における歩行不安定症の患者が短期間間欠的に HAL-HN01 を装着して歩行訓練を行うことで歩行機能の改善が得られること及び HAL-HN01 は高い安全性を備えていることが証明され,治験機器提供会社であるサイバーダイン株式会社はそれに基づき,2015年3月25日に薬事申請(製造販売承認申請)をおこなった.希少疾病用医療機器指定は2014年12月になされ優先審査対象となっている.脊髄運動ニューロンより上位の病変に基づく歩行不安定症として,HTLV-1関連脊髄症(HAM)等の痙性対麻痺症による歩行不安定症に対する短期の歩行改善効果についての多施設共同無作為化比較対照並行群間試験(NCY-2001試験)を医師主導治験として2014年9月から開始し進捗させた.
結論
NCY-3001試験は研究期間内に予定どおり終了して治験総括報告書の完成および薬事申請に成功した.今後,希少疾患用医療機器として薬事承認が見込まれる. 生体電位駆動型の装着型医療ロボットであるHAL-HN01の無作為化比較対照試験を治験として行う事で,希少性神経・筋難病疾患における歩行不安定症に対する歩行治療法の新たなエビデンスを確立した.

公開日・更新日

公開日
2017-03-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201415015C

収支報告書

文献番号
201415015Z