組織の適切な供給体制構築のための基盤構築に向けた研究

文献情報

文献番号
201415009A
報告書区分
総括
研究課題名
組織の適切な供給体制構築のための基盤構築に向けた研究
課題番号
H26-難治等(免)-一般-103
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
藤田 知之(国立研究開発法人国立循環器病研究センター 心臓外科)
研究分担者(所属機関)
  • 北村 惣一郎(独立行政法人国立循環器病研究センター 心臓血管外科)
  • 小林 順二郎(独立行政法人国立循環器病研究センター 心臓血管外科)
  • 中谷 武嗣(独立行政法人国立循環器病研究センター 移植部)
  • 市川 肇(独立行政法人国立循環器病研究センター 小児心臓外科)
  • 湊谷 謙司(独立行政法人国立循環器病研究センター 心臓血管外科)
  • 秦 広樹(独立行政法人国立循環器病研究センター 心臓血管外科)
  • 小川 真由子(独立行政法人国立循環器病研究センター 移植部)
  • 石垣 理穂(独立行政法人国立循環器病研究センター 移植部)
  • 安波 洋一(福岡大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
5,539,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
昨今、免許証等に臓器移植の為の提供の意思を表現する場が増え、臓器移植法改正後国民の善意による提供のニーズは高まりつつあり、医療側の心臓弁・血管や膵島等の組織移植のニーズも低くはないが、組織移植は、関連の法整備はなく、限定された施設でのみ先進医療として扱われている。本研究では、このような医療の遍在性を解消し、組織移植を必要とする患者が等しく医療を受けるために、国民の提供への意思に応えられる体制を整備する事を目的とした。

研究方法
本研究では提供に至るまでを、(A)入院に至る前から入院まで(B)医療施設での対応(C)コーディネーション(D)提供の4つのプロセスに分け研究した。
(A)は国民への啓発をテーマとした。アンケート実施により一般市民の組織移植に関する認識・要望の現状を把握した。(B)は医療施設への啓発をテーマとした。アンケート実施により、医療従事者の組織移植に関する認識・要望の現状を把握した。(C)はドナー情報対応の効率化をテーマとした。兵庫県及び福岡県もモデル地域で臓器・組織双方のコーディネーターによる情報共有体制を構築、運用した。(D)は組織バンク遠隔地からの供給体制の構築をテーマとした。心臓弁・血管(以下ホモグラフト)をモデル組織としてアンケートを実施し、胸部外科医師の組織移植に関する認識・要望の現状を把握した。また、同様にホモグラフトバンク事業を実施している東京大学医学部附属病院との連携を深めた。摘出手技の周知のため、心臓弁組織模型を作製した。
結果と考察
(A) 一般市民を対象としたWebアンケートを実施し、有効回答は1008人から得られた。組織移植は25%の人に認知されており、臓器および組織移植のために提供したいと考える人は19%、組織提供のみ希望する人は2%、一方、臓器提供のみ希望する人は4%であった。組織移植に関する情報を望む声は多く、「組織移植とは何か」、「組織移植の実施状況」、「患者、家族の体験談」などを望んでいることが分かった。
(B) 医療従事者(兵庫県院内コーディネーター、福岡県院内コーディネーターおよび救急医学研究会参加者)を対象としたアンケートを実施し、合計203人より回答を得た。組織移植の認知度は86%と多数に認知を得ていることが分かったが、提供にかかわったことのある人は22%にとどまった。また、提供に協力する意向のある人は71%にのぼることがわかった。一方で提供が困難と考える人の半数以上は「手続きがわからないから」が理由であると回答した。
(C) モデル地域(兵庫県・福岡県)における臓器・組織双方のコーディネーターによる情報共有体制を確立、維持した。
(D) 胸部外科医師(大阪大学関連施設会議、日本胸部外科学会及び日本心臓血管外科学会参加者)を対象としたアンケートを実施し、合計169名から回答を得た。組織移植の認知度は96%と大多数に認知を得ていることが分かったが、適応を知っている人は76%であり、移植にかかわったことのある人は25%にとどまった。ホモグラフト使用希望の人は57%にのぼり、(希望しない人は2%)、摘出に協力したいと考えている人は57%(したくない人は3%)にのぼることがわかった。一方で、わからないと回答した人はそれぞれの質問で30%を超えており、手に入れる方法や手続きなどの事務的な事柄を問題点として挙げる意見が多かった。
(D)東京大学医学部附属病院と摘出・搬送方法及び運用について検討した。また、遠隔地拠点モデルである福岡県下におけるドナー情報の共有、摘出体制等について検討した。
また、株式会社クロスエフェクトとの共同開発で、ホモグラフトの立体模型を作製した。
結論
一般市民においては、「誰かの役に立ちたい」という気持ちに基づき、提供を希望する人が多く(25%)おられることがわかった。その中で、臓器移植も組織移植も区別されるものではないことも示された。しかし、組織移植も臓器移植とともにその必要性や有用性を医療者からだけでなく、移植を受けた人の言葉などからも知りたいと思っていることがわかった。このことから、さらに市民公開講座などを開催し、広く認知されるよう努力すべきと考えられた。
一方、現場の医療者からも「提供にかかわりたい」、「使用したい」、との希望があるものの、方法論がわからず断念していることが多い事が示された。今後、研究会、学会でのブース展示やグッズの配布、また、院内コーディネーター向けの講義などを重ねて、「提供にかかわりたい」、「使用したい」と思ったときに簡単にできるようなシステムを構築する必要があると考えられた。全国に組織移植がひろくいきわたるように組織移植ネットワークの強化も必要と考えられた。

公開日・更新日

公開日
2015-07-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201415009Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,200,000円
(2)補助金確定額
7,200,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,421,064円
人件費・謝金 1,344,627円
旅費 1,517,400円
その他 1,255,909円
間接経費 1,661,000円
合計 7,200,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2018-06-07
更新日
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