文献情報
文献番号
201415008A
報告書区分
総括
研究課題名
適切な臓器提供を可能とする院内体制整備とスタッフの教育研修プログラムの開発に関する研究
課題番号
H26-難治等(免)-一般-102
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
長谷川 友紀(東邦大学 医学部医学科社会医学講座)
研究分担者(所属機関)
- 篠崎 尚史(公益社団法人日本臓器移植ネットワーク)
- 藤田 民夫(名古屋記念病院)
- 有賀 徹(昭和大学 医学部救急医学)
- 高原 史郎(大阪大学大学院医学系研究科 先端移植基盤医療)
- 相川 厚(東邦大学 医学部腎臓学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
5,539,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
世界保健機関(WHO)は2010年に「臓器移植に関する指導指針」を改定し、各国は移植用臓器の自給自足体制の確立に努めるべきとの方針を明確にした。日本では2010年の臓器移植法改定により、臓器提供要件が緩和されたものの、臓器提供者数は増加していない。医療の適切性を担保しつつ、多臓器提供を増加させる手法を開発し、多くの病院へ展開することは緊急かつ重要な課題である。本研究では、先行研究の知見・課題を踏まえ対象領域の拡大を図るとともに、手法の標準化、研修プログラムの開発により、多く病院に導入可能であり、広く医療の質向上に寄与する仕組みを構築することを目的とした。
研究方法
本研究では、研修プログラムとして、4日間コースのクオリティ・マネジメントセミナー(QMセミナー)、1日間コースのフォローアップセミナーの2つのセミナーを年1回ずつ開催し、小テスト、アンケートを実施した。また、2012-13年にQMセミナーの参加者対象にセミナー受講後の院内での質向上のための取り組みについて、無記名自己式のアンケート調査を郵送法にて実施した。その他、TPMが提供しているe-learningコースについて、コンテンツ等について検討を行うと伴に、職員態度調査(Hospital Attitude Survey:HAS)、医療記録調査(Medical Record Review:MRR)のデータベースの管理を行った。。
結果と考察
QMセミナー(4日間コース・2日×2回)では、講義、演習、課題の宿題で構成されるプログラムを作成し26名の参加者を対象に実施した。小テストの結果では事前より事後において正答率が全体的に向上傾向であり、セミナーの内容はほぼ理解できていることが明らかとなった。アンケート結果からは、当該セミナーを推奨するとの評価を得ることができた。2012-2013年の2年間にQMセミナーの参加者に実施したアンケート調査では、QMセミナー参加後約7割の参加者が院内における質向上のための取り組みを実施し、そのうち7割超で成果が認められたことが明らかとなった。QMセミナー参加者に対するフォローアップ研修、院内体制整備の支援として、QMセミナー既参加者及び院内体制整備の実施病院の職員を対象としたDonor Action Program(DAP)導入セミナー(1日コース)を実施し、参加者は32名であった。
TPMが提供している救急・集中治療の現場で働いている医療スタッフを対象としたe-learningの検討では、臓器提供現場で実際に働いている、もしくは働く予定のある医療スタッフに対する臓器提供の知識の向上を目的とする教育ツールとして有用であると考えられた。しかし、当該e-learningは、セミナー参加に費やす時間・費用を短縮できるものの、提供されている学習スケジュールが非常にタイトであり、学習時間の確保が課題であると考えられた。
DAPデータベースは、継続的にデータ収集を行っており、2014年1月末までにHASは42,495名から、MRRは8,445名、2014年度はHASが4病院より1,900名、MRRが5病院から317名のデータが得られ、全国データとして経時分析を実施した。HASの結果からは、一般に臓器移植に対しては好意的な回答が多いが、看護師、事務職等においては脳死について懐疑的なものが少なくないこと、ドナー候補者の特定・臓器提供の同意を得るために必要な能力・知識については、医師で2割弱であり看護師ではごく少数であることが明らかとなった。また、MRRでは家族へのオプション提示の割合は増加傾向にあることがわかった。
TPMが提供している救急・集中治療の現場で働いている医療スタッフを対象としたe-learningの検討では、臓器提供現場で実際に働いている、もしくは働く予定のある医療スタッフに対する臓器提供の知識の向上を目的とする教育ツールとして有用であると考えられた。しかし、当該e-learningは、セミナー参加に費やす時間・費用を短縮できるものの、提供されている学習スケジュールが非常にタイトであり、学習時間の確保が課題であると考えられた。
DAPデータベースは、継続的にデータ収集を行っており、2014年1月末までにHASは42,495名から、MRRは8,445名、2014年度はHASが4病院より1,900名、MRRが5病院から317名のデータが得られ、全国データとして経時分析を実施した。HASの結果からは、一般に臓器移植に対しては好意的な回答が多いが、看護師、事務職等においては脳死について懐疑的なものが少なくないこと、ドナー候補者の特定・臓器提供の同意を得るために必要な能力・知識については、医師で2割弱であり看護師ではごく少数であることが明らかとなった。また、MRRでは家族へのオプション提示の割合は増加傾向にあることがわかった。
結論
終末期医療の質向上に寄与することを目的として、QMセミナー及びDAP導入セミナーを開催し、医療機関でのキーパーソンの人材育成を行った。プログラムの内容は、難易度は若干高いものの参加者の理解度、推奨度は高く、次年度以降もセミナー参加者からのフィードバックを参考にしながらより質の高い、効果的な研修プログラムを提供していく。また、DAPのデータベースでは、継続的に収集したHAS及びMRRのデータの解析を実施し、全国データとして経時的な結果を提示していくことは意義があるものと考えられる。
本研究により、QMセミナー既参加者の約7割が院内において医療の質向上のための取り組みを実施していること、そのうち7割超である一定の成果が認められたことから、当該セミナーのプログラムによる人材育成は、医療の質を向上させるための院内体制の構築に貢献できたことが明らかとなった。当該セミナーは実質4日間ではあるが、1回目と2回目のセミナーの間に当該医療機関で実践する課題の実施により、参加者個々のスキルを定着させることができたものと考えられ、4日間以上のある成果が得られることが期待できる。
本研究により、QMセミナー既参加者の約7割が院内において医療の質向上のための取り組みを実施していること、そのうち7割超である一定の成果が認められたことから、当該セミナーのプログラムによる人材育成は、医療の質を向上させるための院内体制の構築に貢献できたことが明らかとなった。当該セミナーは実質4日間ではあるが、1回目と2回目のセミナーの間に当該医療機関で実践する課題の実施により、参加者個々のスキルを定着させることができたものと考えられ、4日間以上のある成果が得られることが期待できる。
公開日・更新日
公開日
2015-06-11
更新日
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