適応拡大に向けた臍帯血移植の先進化による成績向上と普及に関する研究

文献情報

文献番号
201415001A
報告書区分
総括
研究課題名
適応拡大に向けた臍帯血移植の先進化による成績向上と普及に関する研究
課題番号
H24-難治等(免)-一般-008
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 聡(東京大学 医科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 森尾 友宏(東京医科歯科大学・医歯(薬)学総合研究科)
  • 服部 浩一(順天堂大学 大学院医学系研究科)
  • 安藤 潔(東海大学 医学部)
  • 宮田 敏男(東北大学  大学院医学系研究科)
  • 大津 真(東京大学 医科学研究所)
  • 山本 久史(国家公務員共済組合 虎の門病院 )
  • 山口 拓洋(東北大学  大学院医学系研究科)
  • 岩間 厚志(千葉大学 大学院医学研究院)
  • 寺倉精太郎(名古屋大学 医学部附属病院 )
  • 高梨美乃子(日本赤十字社 血液事業本部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
8,756,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国における血縁ドナー以外からの同種移植の4~5割は臍帯血を用いて行われており、臍帯血移植が占める割合は世界の中でとびぬけて多い。患者にとって安心して移植を受けることができるように、本研究班では臍帯血移植の安全性・成績向上と適応拡大を目指して移植合併症に対する新たな治療法の臨床開発と臍帯血バンク整備の支援を行う。特に、臍帯血移植における最も深刻な合併症である生着不全、ウイルス感染症、GVHDについてのこれまでの基盤研究を継続しつつ臨床研究に発展させる。さらに、現行の移植方法の有効性の検証を目的とした前方視的臨床試験を支援すると共に、15年にわたる臍帯血バンク事業の問題点を総括し、新法の下で骨髄バンクと連携しながら移植細胞ソースを必要としている患者への安定供給を担保するための将来構想を考案する。
研究方法
臍帯血移植の移植合併症に対する新たな治療法の臨床開発に関しては、線維素溶解系(線溶系)の作用を介した生着・造血回復促進法の開発(安藤・宮田)、新規低分子化合物による造血幹細胞増幅(岩間)、および新規複数臍帯血移植の開発(大津)を進めた。HLA近似同種ウイルス特異的免疫細胞バンクの開発は、森尾・高橋が担当し、ウイルス特異的T細胞の評価とともに、epitope mapping、各ペプチドのHLA拘束性を同定する系の構築を目指した。凝固・線溶系に作用する新規分子標的製剤によるGVHD治療法の開発(服部)では、動物実験で得られた結果を、ヒト臨床検体を用いた検証をおこなった。さらに、移植成績の収集・解析と臨床試験の立案・遂行、および臍帯血バンクの活性化については、山本は2005年から2014年に同種造血幹細胞移植後の再発骨髄白血病に対する臍帯血移植自験例について臨床的背景と移植成績を後方視的に解析し、寺倉は新たに前処置に関する前向き臨床試験の計画書の作成を進めた。山口は、統計解析上の問題の解決を進めた。さらには、高梨は臍帯血バンク事業整備を進めるうえでの問題点についての考察をおこなった。 
結果と考察
全体の達成状況としては、移植合併症に対する新たな治療法の開発については、新規PAI-1阻害剤の臨床応用が最も進んでおり、第I相試験はまもなく終了予定であり移植後投与の第II相試験の準備が進んでおり、来年度の開始を予定している。造血幹細胞増幅法、および新規複数臍帯血移植の開発も我が国オリジナルの方法を用いており、前臨床試験が確実に進んでいるが、再生医療新法への対応などもあり、今年度中の臨床研究への到達は厳しい状況にある。抗原ペプチドを用いたウイルス特異的CTL療法は臨床研究計画書の作製に至っている。新規プラスミン阻害剤によるGVHD制御法は、臨床検体を用いた確証が得られ、前臨床研究を進めた。一方で、複数の臨床観察研究では予定以上の解析を進めることができた。全体としては、再生医療新法など規制対応なども含めて規正法への対応も含めて臨床研究計画には到達できなかった分担研究がある。
結論
臍帯血移植の安全性が高まることにより、必要な患者が早期に移植を決断できることで成績の向上と、高齢者への適応拡大を安全に推進することを目指して、合併所克服のための新規治療法の開発を進めた。さらには、現在進行中の臨床試験の支援を継続するとともに、次期臨床研究策定の基礎データとすべく臨床解析を進めた。開発研究者と臨床現場の移植医が一体となるプラットフォームを構築しながら、基盤的研究の臨床応用の効率化およびスピード化を図った。

公開日・更新日

公開日
2015-06-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201415001B
報告書区分
総合
研究課題名
適応拡大に向けた臍帯血移植の先進化による成績向上と普及に関する研究
課題番号
H24-難治等(免)-一般-008
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 聡(東京大学 医科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 森尾 友宏(東京医科歯科大学・医歯(薬)学総合研究科)
  • 服部 浩一(順天堂大学 大学院医学系研究科)
  • 安藤 潔(東海大学 医学部)
  • 宮田 敏男(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 大津 真(東京大学 医科学研究所)
  • 谷口 修一(国家公務員共済組合 虎の門病院 )
  • 山本 久史(国家公務員共済組合 虎の門病院 )
  • 山口 拓洋(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 岩間 厚志(千葉大学 大学院医学研究院)
  • 宮村 耕一(名古屋第一赤十字病院)
  • 寺倉精太郎(名古屋大学 医学部附属病院)
  • 高梨美乃子(日本赤十字社 血液事業本部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 難治性疾患等克服研究(難治性疾患克服研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 我が国における血縁ドナー以外からの同種移植の4~5割は臍帯血を用いて行われており、臍帯血移植が占める割合は世界の中でとびぬけて多い。患者にとって安心して移植を受けることができるように、本研究班では臍帯血移植の安全性・成績向上と適応拡大を目指して移植合併症に対する新たな治療法の臨床開発と臍帯血バンク整備の支援を行う。特に、臍帯血移植における最も深刻な合併症である生着不全、ウイルス感染症、GVHDについてのこれまでの基盤研究を継続しつつ臨床研究に発展させる。さらに、現行の移植方法の有効性の検証を目的とした前方視的臨床試験を支援すると共に、15年にわたる臍帯血バンク事業の問題点を総括し、新法の下で骨髄バンクと連携しながら移植細胞ソースを必要としている患者への安定供給を担保するための将来構想を考案することを目的として、開発研究者と臨床現場の移植医が一体となるプラットフォームの構築により、基盤的研究の臨床応用の効率化およびスピード化を目指した。
研究方法
 臍帯血移植の移植合併症に対する新たな治療法の臨床開発としては、凝固・線溶系に作用する新規分子標的製剤による生着・造血回復促進法(安藤、宮田)、TNF-αシグナル遮断による移植前処置後に投与されたグラフト内造血幹細胞保護による造血回復促進法の開発および新規複数臍帯血移植(大津)、新規低分子化合物を用いた臍帯血造血幹細胞増幅法の開発(岩間)に関する基盤的研究を推進した。HLA近似第三者ドナーからの多ウイルス抗原特異的CTL療法の開発は、森尾、高橋が担当し、複数ウイルス特異的CTL療法の技術の前臨床試験を進めた。新規プラスミン阻害剤による炎症性サイトカイン抑制を介したGVHDに対する新規分子療法の開発(服部)については、新たに慢性GVHDマウスモデルを作成し、その病態におけるYO-2の効果の確認とともに、GVHD患者検体による血液凝固・線溶系因子動態のGVHDの重症度への関与について解析を進めた。さらには、移植成績の収集・解析と臨床試験の立案・遂行(谷口、山本、宮村、寺倉、高橋、山口)、臍帯血バンク事業整備の支援(高梨)を進めた。
結果と考察
 移植合併症に対する新たな治療法の開発については、新規PAI-1阻害剤の臨床応用が最も進んでおり、第I相試験はまもなく終了予定であり移植後投与の第II相試験の準備を進めており、2015年度の開始を予定している。造血幹細胞増幅法、および新規複数臍帯血移植の開発も我が国オリジナルの方法を用いており、前臨床試験が確実に進んでいるが、再生医療新法への対応などもあり、今年度中の臨床研究への到達は厳しい状況にある。抗原ペプチドを用いたウイルス特異的CTL療法は臨床研究計画書の作製に至っている。新規プラスミン阻害剤によるGVHD制御法は、臨床検体を用いた確証が得られ、前臨床研究を進めている。
 全国登録データを用いた臨床解析は期間内に完遂したもの(UBMTとの比較、および至適前処置)と現在進行中(至適GVHD予防)のものがあり、また単一施設内での後方視的解析も複数が研究期間内に完遂し、既に論文化されている。前方視的多施設共同臨床研究(C-SHOT601)順調に登録が進み、観察期間を経て解析が行われる予定となっている。
 臍帯血バンク支援については、初年度となる法制化のもとでの新体制における様々な課題の明確化・整理が行われており、臨床サイドとの連携を取りつつ、安定した臍帯血の供給体制確立に向けて議論を進めた。
結論
 臍帯血移植の安全性が高まることにより、必要な患者が早期に移植を決断できることで成績の向上と、高齢者への適応拡大を安全に推進することを目指して、合併所克服のための新規治療法の開発を進めた。さらには、現在進行中の臨床試験の支援を継続するとともに、次期臨床研究策定の基礎データとすべく臨床解析を進めた。開発研究者と臨床現場の移植医が一体となるプラットフォームを構築しながら、基盤的研究の臨床応用の効率化およびスピード化を図った。

公開日・更新日

公開日
2015-06-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201415001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
臍帯血移植の最大の問題である拒絶対策として、幹細胞増幅や多ユニットを用いた移植、骨髄ニッチへの生着促進など様々なアプローチの開発を進め、特にこれまでホーミングが亢進する機序が不明であったPAI-1阻害剤についてはケモカイン受容体や細胞接着因子あるいは細胞表面酵素の発現制御に関して新たな知見が得られた。抗原ペプチドを用いた複数ウイルス特異的CTLを同時に作成する方法も確立された。さらに、抗プラスミン作用による移植後GVHD抑制法についても、患者検体を用いてPOCが得られた。
臨床的観点からの成果
全国データを用いた非血縁骨髄移植と臍帯血移植の比較は日本血液学会2014年次総会でplenary sessionにて発表された。前処置法の至適化に関する臨床解析は終了し、論文化が行われた。臍帯血移植後のGVHD予防法の至適化を探るための全国データを用いた後方視的臨床解析試験について投稿準備が進められた。前方視的臨床研究の「成人難治性血液悪性腫瘍に対する非血縁者間臍帯血移植の有効性に関する研究(C-SHOT0601)」は目標症例登録に達し観察期間を経て解析が行われる予定である。
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
造血細胞移植新法の施行による新体制への移行の中で本邦の公開臍帯血数が減少したことから、いかに臍帯血バンク事業を充実させていくかが喫緊の課題であるが、造血幹細胞提供支援機関(日本赤十字社)の尽力もあり、現在わずかずつ公開臍帯血数が増加し、2015年度から臍帯血移植数も増加しており、2016年度(1327件)は初めて非血縁骨髄・末梢血幹細胞移植数(1228件)を上回った。
その他のインパクト
移植後造血回復促進を目指した3つの分担研究、およびプラスミン阻害剤による抗GVHD作用に関する研究について、特許出願に至った。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
90件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
15件
学会発表(国際学会等)
8件
その他成果(特許の出願)
4件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

特許の名称
炎症性疾患治療剤
詳細情報
分類:
特許番号: 特願2011-211450
発明者名: 服部浩一、津田裕子、服部・ハイジッヒ・ベアテ
出願年月日: 20130927
国内外の別: 日本
特許の名称
PAI-1阻害剤の新規用途(Novel use of PAI-1 inhibitor)
詳細情報
分類:
特許番号: PCT/JP2014/060760
発明者名: 海大学(安藤潔、八幡崇、宮田敏男)
出願年月日: 20140415
国内外の別: 日本
特許の名称
造血幹細胞の製造方法(Method for producing hematopoietic stem cells)
詳細情報
分類:
特許番号: 特願2011-131657(PCT/JP2011/063537)
発明者名: 千葉大学(岩間厚志、西野泰斗)
出願年月日: 20140603
国内外の別: 日本
特許の名称
造血幹細胞移植を補助することに用いるための医薬組成物およびその製造方法
詳細情報
分類:
特許番号: 特願2014-236476
発明者名: 東京大学(大津真、中内啓光、高橋 聡、石田 隆、頼貞儀、笹本賢一)
出願年月日: 20141121
国内外の別: 日本

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Sato A, Nishida C, Sato-Kusubata, et al.
Inhibition of plasmin attenuates murine acute graft-versus-host disease mortality by suppressing the matrix metalloproteinase-9-dependent inflammatory cytokine storm and effector cell trafficking.
Leukemia , 29 (1) , 145-156  (2015)
doi: 10.1038/leu.2014.151. Epub 2014 May 5.

公開日・更新日

公開日
2016-04-05
更新日
2019-07-10

収支報告書

文献番号
201415001Z