IgE抑制を標的とするアレルギー疾患治療薬の臨床研究

文献情報

文献番号
201414017A
報告書区分
総括
研究課題名
IgE抑制を標的とするアレルギー疾患治療薬の臨床研究
課題番号
H25-難治等(免)-一般-007
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
石井 保之(独立行政法人理化学研究所 統合生命医科学研究センターワクチンデザイン研究チーム)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 難治性疾患等克服研究(免疫アレルギー疾患等予防・治療研究)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
31,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ナチュラル・キラーT(NKT)細胞リガンドの標準的化合物であるアルファガラクトシルセラミド(α-GalCer)のリポソーム製剤が、IgE産生を強力に抑制する作用機序を明らかにしてきた。本研究課題では、α-GalCerよりも高活性を示す新規NKT細胞リガンド化合物(RCAIシリーズ)の中から開発候補品を選定し、IgE産生を選択的に抑制する新規アレルギー根本治療薬の開発を目指す。平成26年度は、前年度の化合物スクリーニングで選択したRCAI-X化合物のリポソーム製剤の最適化、投与レジメ(用量、回数、間隔等)の検討、病態モデルマウスでの薬効評価、および非臨床試験の実施を目標とした。
研究方法
1) RCAI-X化合物のリポソーム製剤の最適化:前年度にα-GalCer化合物のin vivo IgE産生抑制効果を指標に最適化したリポソーム製剤LRK-9を基本処方として、今年度はさらにRCAI-X化合物製剤の最適化を目指し、複数の製剤処方を作製する。C57BL/6マウスの尾静脈に投与後に、マウス脾臓中NKT細胞を抗T細胞受容体抗体とα-GalCer/CD1d四量体で二重染色した後、フローサイトメーターで共陽性細胞集団をソートする。細胞からmRNAを抽出し、cDNAを合成したい後、リアルタイムPCR法にてIL-21発現量を定量する。2) RCAI-Xリポソーム製剤の投与レジメの検討:卵白アルブミン(OVA)とアラムアジュバントで感作したIgE高産生BALB/cマウスの尾静脈内に、RCAI-56リポソーム製剤を投与した後に血中IgE値を測定するin vivo 薬効評価系を用いて、投与用量、投与回数と投与間隔を検討する。3) RCAI-Xリポソーム製剤の病態モデルマウスでの薬効評価:OVA感作BALB/cマウス尾静脈に、RCAI-Xリポソーム製剤を投与した後、OVA経口または吸入による誘発を行い、体重変化と下痢症状観察、血中IgE及びIgG抗体価の測定、気道反応性の評価、気管支肺胞洗浄液中(BALF)の炎症性細胞数と抗体価およびサイトカイン濃度の測定、肺組織の病理組織学的検査を実施する。4) 非臨床試験の実施:小規模製造用に確立できているRCAI-X化学合成経路を大量製造用に最適化するため、全工程に使用する材料と合成ルートの再検討を委託製造機関、企業と共同で実施し、GLP動物試験用標品を製造する。
結果と考察
1) α-GalCer化合物で最適化したリポソーム製剤LRK-9処方を基本にして、RCAI-Xのリポソーム製剤を3種類作製した(LRK-14, 15, 16)。LRK-13, 14, 15, 16のリポソーム製剤をC57BL/6マウスの尾静脈にそれぞれ投与し、20時間後に脾臓NKT細胞を単離し、IL-21 mRNAの発現量をリアルタイム定量PCR法で解析した。その結果、NKT細胞中のIL-21 mRNAの発現量は、LRK-16 < LRK-13 < LRK-15 < LRK-14の順に上昇することを確認した。RCAI-Xのリポソーム処方の候補としてIFN-γ産生能が低く、IL-10産生能が高いLRK-15を、また比較対象にLRK-16を選定した。2) OVA感作IgE高産生BALB/cマウスの尾静脈内に、LRK-15またはLRK-16リポソーム製剤を3用量(50, 500, 5000 ng/kg)で週2回投与した。同様に陰性対照群として、生理食塩水またRCAI-X不含コントロールリポソームを投与した。4回投与後と8回投与後の血中OVA特異的IgE抗体価と全IgE濃度を測定した結果、RCAI-X化合物4回投与後のOVA特異的IgE抗体および全IgE値は、すべての用量群において有意(p<0.01 %)な低下が認められ、8回投与後も同程度に抑制効果が維持されていた。今後症状が有意に軽減されるIgE濃度をアレルギー疾患ごとに見極める必要があると考えている。3) OVA誘発喘息モデルでは、血中IgE値は抑制されなかったが、BALF中のIgE値は有意に抑制されていたことから、アレルギー症状の軽減には、炎症が起きている部位でのIgE産生抑制が重要であることが示唆された。4) GLP動物試験の実施に必要なRCAI-X化合物の大量製造を実施した。中間体の純度が目標の95%以上を満たさず86%前後であったが最終的に純度98%以上の最終標品約10gを製造することができた。
結論
新規NKT細胞リガンドであるRCAI-X化合物のリポソーム製剤を最適化し、LRK-15を選定した。また気管支喘息モデルマウスへの LRK-15投与実験では、肺中でのIgE値と炎症性細胞浸潤の有意な低下、さらに気道抵抗性の顕著な改善効果を確認し、気管支喘息を適応症とする医薬品開発の方向性を決定することができた。

公開日・更新日

公開日
2015-06-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201414017Z