アトピー性皮膚炎の難治性皮膚病変の病態解析と病態に基づいたピンポイントな新規治療の開発

文献情報

文献番号
201414010A
報告書区分
総括
研究課題名
アトピー性皮膚炎の難治性皮膚病変の病態解析と病態に基づいたピンポイントな新規治療の開発
課題番号
H24-難治等(免)-一般-007
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
横関 博雄(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科・皮膚科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 佐藤 貴浩(防衛医科大学校   皮膚科)
  • 片山 一朗(大阪大学 大学院 皮膚科)
  • 戸倉 新樹(浜松医科大学  皮膚科)
  • 烏山 一(東京医科歯科大学  免疫アレルギー分野)
  • 安東 嗣修(富山大学大学院 応用薬理学)
  • 椛島 健治(京都大学 医学研究科 皮膚科)
  • 室田 浩之(大阪大学 大学院 皮膚科)
  • 金田 安史(大阪大学 大学院医学系研究科 遺伝子治療学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 難治性疾患等克服研究(免疫アレルギー疾患等予防・治療研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
12,693,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は重症型アトピー性皮膚炎(AD)における難治性皮膚病変(痒疹、紅皮症、顔面紅斑)などの発症頻度及びアトピー性皮膚病変の難治性皮膚病変の診療ガイドラインを作成して適切な標準的治療法の確立を目指している。
研究方法
1)外因性•内因性アトピー性皮膚炎(AD)における臨床症状、フィラグリン遺伝子変異の比較検討
2)手湿疹診療ガイドライン作成:手湿疹の定義、病態、分類、診療アルゴリズムを検討した。
3)ADでみられる痒み過敏選択的な治療戦略の確立
4)ADマウスモデルの自発的痒み関連動作への皮膚好塩基球の関与
5)好塩基球からリコンビナント蛋白を精製
6)アトピー性皮膚炎患者のステロイド軟膏長期外用部位のNMFを解析
7)ヒトiPS細胞において人工ヌクレアーゼを利用するシステムを構築
8)生体皮膚への機能性高分子導入法の開発に関する研究
結果と考察
174例が登録された。内因性AD21例、外因性AD153例。内因性ADは全体の12%で女性に多く、喘息・鼻炎の既往歴や家族歴は少なかった。臨床的には手湿疹の合併が多い傾向がみられ、金属パッチテストが陽性の患者やフィラグリン遺伝子変異を有する患者の割合が高かった。一方外因性ADは喘息・鼻炎の既往歴や家族歴が多く、臨床的には尋常性魚鱗癬、紅皮症、頸部色素沈着の合併が多い傾向がみられた。フィラグリン遺伝子変異を有する症例では病型にかかわらず尋常性魚鱗癬、palmar hyperlinearityの合併が多かった(横関)。手湿疹診療ガイドラインは策定中である(横関)。金属負荷前血清ニッケル濃度(mean±SD,ng/ml)は内因性ADで3.48±1.27,外因性ADで2.13±2.39, 正常人で0.40±0.93であった(戸倉).ヒトフィラグリン遺伝子を切断するTALENsを作製した(井川)。いずれもマンガン造影MRIで視床下部、扁桃体に造影効果がみられアーテミン中和抗体の投与によって減弱することが確認された(片山、室田)。健常NCマウスへのKLK5の皮内注射により痒み反応が惹起され、この反応はPAR2拮抗薬により抑制された。皮膚においてKLK5 mRNAの発現やKLK5の活性が、健常マウスに比べ、皮膚炎マウスで増加していた(安東)。ステロイド長期外用後の皮膚におけるNMFは長期外用しなかった皮膚と比較して著明に低下していた。NMFの主要な構成成分であるピロリドンカルボン酸(PCA)も同様の傾向を認めた。セラミドについてはステロイドの長期外用による影響を認めなかった(椛島)。HVJ-EとIL12の組み合わせで脾臓細胞からのinterferon-γ (IFN-γ)のみならず、IL12 receptor, T-bet, IL18の発現もIL12単独よりも有意に亢進することがわかった(金田)。
結論
外因性ADは重症型の発疹である紅皮症、頸部色素沈着の合併、結節性痒疹、顔面紅斑が多く見られた。IgEの関与する外因性ADの方が重症ADの傾向が示された。 ADモデルマウスではアトピー性皮膚炎の痒みには、ケラチノサイトや好塩基球から遊離されるKLK5が関与している可能性があること好塩基球に特異的に発現し、脱顆粒にともなって細胞外に放出されるmMCP-8が、好塩基球によるアレルギー炎症の誘導に関与していること明らかになった。アーテミンはアトピー性皮膚炎の痒みの治療標的になりうると考えられた。HVJ-EのF蛋白質がmacrophageからIL18を産生させ、IL12と共同でT cellに作用してIFN-γが産生され、これがT cellでのIL12 receptorの発現をT betを介して高めることで、免疫細胞間でIFN-γ産生亢進のpositive feedback loopができると考えられる。iPS細胞を用いた3次元表皮シートモデルにより遺伝子変が表皮全体の構築、サイトカインなどにどのような影響を与えるか明らかにできる。

公開日・更新日

公開日
2015-06-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-26
更新日
-

文献情報

文献番号
201414010B
報告書区分
総合
研究課題名
アトピー性皮膚炎の難治性皮膚病変の病態解析と病態に基づいたピンポイントな新規治療の開発
課題番号
H24-難治等(免)-一般-007
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
横関 博雄(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科・皮膚科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 佐藤 貴浩(防衛医科大学校   皮膚科)
  • 片山 一朗(大阪大学大学院 皮膚科)
  • 戸倉 新樹(浜松医科大学  皮膚科)
  • 烏山 一( 東京医科歯科大学  免疫アレルギー分野)
  • 安東 嗣修(富山大学大学院 応用薬理学)
  • 椛島 健治(京都大学 医学研究科 皮膚科)
  • 室田 浩之(大阪大学大学院 皮膚科)
  • 金田 安史(大阪大学 大学院医学系研究科 遺伝子治療学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 難治性疾患等克服研究(免疫アレルギー疾患等予防・治療研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は重症型アトピー性皮膚炎(AD)における難治性皮膚病変(痒疹、紅皮症、顔面紅斑、手湿疹)などの発症頻度及びアトピー性皮膚病変の難治性皮膚病変の診療ガイドラインを作成して適切な標準的治療法の確立を目指した。さらに、新規治療法の開発を目的として、痒疹モデルマウスを作成して好塩基球の役割の解析し好塩基球をターゲットとした、HVJ-E(不活性化センダイウイルスエンベロープ)を用いたものと、ヒトiPS細胞を利用して、ADにおけるフィラグリン遺伝子変異の影響について検討を行なった。
研究方法
1)外因性・内因性ADにおける臨床症状、フィラグリン遺伝子変異の比較検討
2)手湿疹治療ガイドライン委員会:手湿疹の定義、病態、分類、診療アルゴリズムの検討
3)ADでみられる痒み過敏選択的な治療戦略の確立
4)ADマウスモデルの自発的痒み関連動作への皮膚好塩基球の関与
5)好塩基球からリコンビナント蛋白を精製
6)痒疹モデルの作成
7)IgE-CAIにおける好酸球の機能解析
8)AD患者のステロイド軟膏長期外用部位のNMFを解析
9)ヒトiPS細胞において人工ヌクレアーゼを利用するシステムを構築
10)生体皮膚への機能性高分子導入法の開発に関する研究
結果と考察
174例が登録された。内因性AD21例、外因性AD153例。内因性ADは全体の12%で女性に多く、喘息・鼻炎の既往歴や家族歴は少なかった。臨床的には手湿疹の合併が多い傾向がみられ、金属パッチテストが陽性の患者やフィラグリン遺伝子変異を有する患者の割合が高かった。一方外因性ADは喘息・鼻炎の既往歴や家族歴が多く、臨床的には尋常性魚鱗癬、紅皮症、頸部色素沈着の合併が多い傾向がみられた。フィラグリン遺伝子変異を有する症例では病型にかかわらず尋常性魚鱗癬、palmar hyperlinearityの合併が多かった。 (横関)。手湿疹診療ガイドラインは委員会で概念、定義、分類、診療アルゴリズムを策定した(横関)。内因性AD患者は特にNiとCoに関して有意差をもって陽性率が高かった。(戸倉).システムを利用してヒトフィラグリン遺伝子を切断するTALENsを作製した(井川)。アーテミンがヒトのADの皮膚病変部真皮に蓄積していることが確認された。(片山、室田)。AD誘発NCマウスでは,健常NCマウスと比べると掻くことのできる皮膚炎発症部位において,好塩基球の増加が認められた。健常NCマウスへのKLK5の皮内注射により痒み反応が惹起され、この反応はPAR2拮抗薬により抑制された。皮膚においてKLK5 mRNAの発現やKLK5の活性が、健常マウスに比べ、皮膚炎マウスで増加していた(安東)。IL-17A欠損flaky tailマウスは皮膚炎の軽減や血清中のIgE産生の低下を認めた。IL-17AはマウスADモデルにおいて、病変部および所属リンパ節においてTh2促進的に作用することが示された。さらに、ステロイド長期外用後の皮膚におけるNMFは長期外用しなかった皮膚と比較して著明に低下していた。NMFの主要な構成成分であるピロリドンカルボン酸(PCA)も同様の傾向を認めた。(椛島)。HVJ-EとIL12の組み合わせで脾臓細胞からのIFN-γのみならず、IL12 receptor, T-bet, IL18の発現もIL12単独よりも有意に亢進することがわかった(金田)。
結論
難治性皮膚病変の痒疹と外因性AD,内因性AD、金属アレルギーの関連が明らかとなった。外因性ADは重症が多く難治性病変である痒疹、手湿疹診療ガイドラインを作成してピンポイントに治療することは可能である。また、外因性ADで頻度の高い顔面紅斑などはIgEをターゲットとしたSTAT6デコイ軟膏療法、抗IgE抗体療法が適応となる。ADにおいてIL-17Aは新規治療ターゲットとなることが期待される。その他、アーテミンもADの痒みの治療標的になりうると考えられた。IL12結合型HVJ-Eは強力なADの治療剤になりうる。本研究により、フィラグリン遺伝子変異が与える影響を検討するシステムの構築が完了した。ADモデルマウスを用いた研究では、mMCP-8が重要な役割を果たす可能性が示唆された。今後、分化誘導して得られた表皮角化細胞において、ADでのフィラグリン遺伝子変異が存在することの意味合いについて、これまでと違った面よりアプローチができると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2015-06-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-26
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201414010C

収支報告書

文献番号
201414010Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
16,500,000円
(2)補助金確定額
16,500,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 7,500,929円
人件費・謝金 2,592,525円
旅費 2,054,176円
その他 545,961円
間接経費 3,807,000円
合計 16,500,591円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2015-06-26
更新日
-