文献情報
文献番号
201414006A
報告書区分
総括
研究課題名
免疫疾患におけるT細胞サブセットの機能異常とその修復法の開発
課題番号
H24-難治等(免)-一般-003
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
山本 一彦(東京大学医学部付属病院 アレルギー・リウマチ内科)
研究分担者(所属機関)
- 保田 晋助(北海道大学大学院医学研究科免疫・代謝内科学分野)
- 松本 功(筑波大学医学医療系内科膠原病・リウマチ・アレルギー)
- 小竹 茂(東京女子医科大学付属膠原病リウマチ痛風センター膠原病リウマチ内科)
- 桑名 正隆(慶應義塾大学医学部リウマチ内科)
- 田村 直人(順天堂大学医学部膠原病内科)
- 森尾 友宏(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科発生発達病態学)
- 上阪 等(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科膠原病・リウマチ内科学)
- 藤尾 圭志(東京大学医学部附属病院アレルギー・リウマチ内科)
- 田中 良哉(産業医科大学医学部第1内科学講座内科)
- 川上 純(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科展開医療科学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 難治性疾患等克服研究(免疫アレルギー疾患等予防・治療研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
12,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
ヒトの免疫系は多くの点でマウスの免疫系と似ているが、細部については差異があることから、マウスを中心とした動物モデルでの知見はヒトの免疫学に直接的に応用できない。しかし、分析の困難さから、マウスの免疫システムの理解と比べヒトの免疫系の理解は十分でない。そこで、本研究では、獲得免疫の中心であり免疫応答をコントロールするT細胞に焦点を当て、その機能的サブセットを末梢血リンパ球を中心としたヒトサンプルでどのように把握するか、健常人集団と比較して各疾患でどのような異常が起こり病態形成に繋がるのか、それを修復するにはどうしたら良いか、などに関して各分担研究者間で情報交換を行いながら横断的に検討することを目的とした。
研究方法
平成24年度には複数の研究会を開催し、共通の方法論の採用などの議論を行った。これをもとに平成25・26年度にはこれらを継続させながら、研究成果に関する議論を進めた。研究代表者の山本は、各研究者が使うヘルパー型T細胞、キラー型T細胞、制御性T細胞などのT細胞サブセットおよびそのナイーブ、メモリーなどの亜集団の分離・解析法に関して、Human Immunology Project Consortium( HIPC)の標準化法(Nat Rev Immunol.12:191, 2012)を参照しながら、健常人サンプルでの標準的な方法を試行し、スタンダードな方法として提示すること、各種治療薬の供給に関しての交渉などを通して、共通に使える試薬の整備などを継続的に行った。さらに関節リウマチ(RA)の免疫学的異常と臨床像との関連を明らかにするため、HLA-DRB1タイピングによるshared epitope(SE)の有無との関連を検討した。
森尾分担研究者は、単一遺伝子異常による原発性免疫不全症における自己免疫疾患の発症機構とヘルパーT細胞(Th)サブセットの関与に関しての研究を進める為、10カラーFACSを用いた解析を行った。さらにB細胞受容体、T細胞受容体について、次世代シークエンサーを用いて解析を行った。このように、基本的な方法論をベースに各研究者は独自の研究方法を展開した。
森尾分担研究者は、単一遺伝子異常による原発性免疫不全症における自己免疫疾患の発症機構とヘルパーT細胞(Th)サブセットの関与に関しての研究を進める為、10カラーFACSを用いた解析を行った。さらにB細胞受容体、T細胞受容体について、次世代シークエンサーを用いて解析を行った。このように、基本的な方法論をベースに各研究者は独自の研究方法を展開した。
結果と考察
山本研究代表者は、RA患者の免疫担当細胞とHLA-DRB1の疾患感受性遺伝子型(SE)、ケモカイン受容体CXCR4との関連を検討した。SE陽性RA患者ではCD4+メモリーT細胞比率が増加しており、この比率とT細胞のDR陽性率、抗CCP抗体値に正の相関がみられることを見出した。またCXCR4はRA患者T細胞では健常人に比して発現が亢進しており、CD4+メモリーT細胞における陽性率は、B細胞のDR発現量、活動性指標のDAS28、RAに特異性の高い自己抗体である抗CCP抗体と正の相関があることを見出した。各研究者の中では、例えば森尾分担研究者は原発性免疫不全症に関しての解析を続けた。原因不明の患者が含まれているCommon variable immunodeficiency (CVID)患者の中にはT細胞、B細胞の分化障害から自己免疫疾患を発症する例が存在する。そこで次世代シークエンサーによりT細胞受容体(TCR)、B細胞受容体(BCR)の解析を行い、CDR3領域長、D・J領域の利用率、J領域における新しい配列の追加などを検討した。この結果、一部の患者に幾つかの領域における頻度の偏りなどがあることを見出した。一方、桑名分担研究者は、昨年度までの検討からSLE末梢血においてFoxp3+胸腺由来Treg(nTreg)が増加し、その比率は疾患活動性と相関すること報告した。しかし、最近CD4+Foxp3+T細胞の可塑性と多様性が示されていることから、SLE患者末梢血CD4+Foxp3+T細胞の病態における役割を検討した。その結果、CD4+ Foxp3+ CD49d+細胞ではnTregに由来する免疫抑制能は有するが、IL-17を介して炎症病態を促進する可能性を見出した。
本研究組織は、我が国の臨床免疫学領域の第一線で研究を行っている研究者を中心に構成されている。Human Immunology Project Consortium( HIPC) の提案するヒト末梢血細胞解析の標準化法(Nat Rev Immunol.12:191, 2012)も、実際に自らの研究室で動くことが判明し、マニュアルも作成したことから、本研究を進めることが、我が国の疾患免疫学の礎となり、新たな治療薬創出の為の直接的な研究成果とともに、将来的な免疫治療推進施策の拠点形成にも繋がると期待される。
本研究組織は、我が国の臨床免疫学領域の第一線で研究を行っている研究者を中心に構成されている。Human Immunology Project Consortium( HIPC) の提案するヒト末梢血細胞解析の標準化法(Nat Rev Immunol.12:191, 2012)も、実際に自らの研究室で動くことが判明し、マニュアルも作成したことから、本研究を進めることが、我が国の疾患免疫学の礎となり、新たな治療薬創出の為の直接的な研究成果とともに、将来的な免疫治療推進施策の拠点形成にも繋がると期待される。
結論
本研究は、我が国におけるヒト免疫研究と疾患解析の研究体制の一つのモデルとなることが期待される。
公開日・更新日
公開日
2015-06-01
更新日
-