文献情報
文献番号
201412038A
報告書区分
総括
研究課題名
COPDに関する啓発と早期発見のための方策に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H25-循環器等(生習)-一般-009
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
井上 博雅(国立大学法人鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
- 福田 敬(国立保健医療科学院 )
- 清原 裕(国立大学法人九州大学 大学院医学研究院環境医学分野)
- 岩永 知秋(独立行政法人国立病院機構福岡病院)
- 松元 幸一郎(国立大学法人九州大学病院 呼吸器科)
- 一ノ瀬 正和(国立大学法人東北大学 大学院医学系研究科内科病態学分野)
- 大森 久光(国立大学法人熊本大学 大学院生命科学研究部 医療技術科学講座生体情報解析学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本邦において、慢性閉塞性肺疾 (COPD) は、2010年以降死因の第9位を占めている。NICE study (Nippon COPD Epidemiology Stud) では、日本人のCOPD有病率は8.6%、患者数は530万人と推定された。2011年の厚生労働省患者調査において、COPDと診断された本邦のCOPD患者数は約22 万人であり、NICE studyで推定された530万人の総患者数のなかで、診断・治療を受けている患者数は約4%程度と推定され、本邦におけるCOPDの認知が不十分であることやスパイロメトリーの普及の遅れが指摘されている。
しかし、国民全員にスパイロメトリーを実施することは経費的に困難であり、COPD の高リスク者を抽出するスクリーニング方法の確立が重要となる。COPD高リスク者抽出には、質問票によりスクリーニングを行い、疑われる症例に呼吸機能検査をすすめることが有用と考えられる。米国で開発されたスクリーニング質問票COPD-PS は簡単で分かりやすいが、初年度 (H25年度) の本研究事業“質問票COPD-PS日本語版における日本人cut-off値設定に関する臨床研究”では、本邦におけるCOPD-PSのcut-off値は先行研究結果と異なる値であった。海外で開発された質問票は日本の文化や生活様式との相違もある。本研究では、COPDの実態の把握、簡便なCOPDスクリーニング質問票の開発、早期診断のためのバイオマーカーの検討、さらにCOPDによる疾病負担を明らかにすることを目的とした。
しかし、国民全員にスパイロメトリーを実施することは経費的に困難であり、COPD の高リスク者を抽出するスクリーニング方法の確立が重要となる。COPD高リスク者抽出には、質問票によりスクリーニングを行い、疑われる症例に呼吸機能検査をすすめることが有用と考えられる。米国で開発されたスクリーニング質問票COPD-PS は簡単で分かりやすいが、初年度 (H25年度) の本研究事業“質問票COPD-PS日本語版における日本人cut-off値設定に関する臨床研究”では、本邦におけるCOPD-PSのcut-off値は先行研究結果と異なる値であった。海外で開発された質問票は日本の文化や生活様式との相違もある。本研究では、COPDの実態の把握、簡便なCOPDスクリーニング質問票の開発、早期診断のためのバイオマーカーの検討、さらにCOPDによる疾病負担を明らかにすることを目的とした。
研究方法
1.福岡県久山町住民健診における気管支拡張薬吸入前および吸入後での気流閉塞の有病率
久山町に住民登録している40歳以上の全住民に対し、住民健診の案内をおこない、受診を希望した住民を研究対象とした。身体測定、喫煙の有無について質問票で調査し、スパイロメトリーを実施した。気流閉塞(一秒率が70%未満)の受診者には気管支拡張薬を吸入させ、吸入から15分後に再度、スパイロメトリーを実施した。吸入後の一秒率が70%未満であった場合を完全に正常に復さない気流閉塞と定義し有病率を推計した。
2.新規のCOPDスクリーニング質問票の開発と COPD早期発見のマーカー探索
新COPD質問票作成のための質問票原案として19項目53総質問数からなる新COPDスクリーニング質問票原案 (draft) を作成した。鹿児島厚生連健康管理センターを受診し、本研究に同意の得られた被験者を登録した。新COPDスクリーニング質問票原案に対する調査を行い、全例に呼吸機能検査を施行した。一秒率<70%の場合は気管支拡張薬投与後に再検査を行った。新COPDスクリーニング質問票原案の全ての質問項目を統計学的に解析し、AO予測因子となる有意な項目を同定した。
COPDの早期発見のためのマーカー探索のために、健常人およびCOPD患者から採取された喀痰上清を用いて酸化型コレステロールを測定し、呼気凝集液の解析を開始した。
3.COPDに関連した医療機関利用状況、医療費調査と労働損失による疾病負担の解析
医療費調査と労働損失による疾病負担の解析に関して、2011-2012年度のデータに基づいてCOPD疾病コスト(COI: Cost of Illness)として推計した。
久山町に住民登録している40歳以上の全住民に対し、住民健診の案内をおこない、受診を希望した住民を研究対象とした。身体測定、喫煙の有無について質問票で調査し、スパイロメトリーを実施した。気流閉塞(一秒率が70%未満)の受診者には気管支拡張薬を吸入させ、吸入から15分後に再度、スパイロメトリーを実施した。吸入後の一秒率が70%未満であった場合を完全に正常に復さない気流閉塞と定義し有病率を推計した。
2.新規のCOPDスクリーニング質問票の開発と COPD早期発見のマーカー探索
新COPD質問票作成のための質問票原案として19項目53総質問数からなる新COPDスクリーニング質問票原案 (draft) を作成した。鹿児島厚生連健康管理センターを受診し、本研究に同意の得られた被験者を登録した。新COPDスクリーニング質問票原案に対する調査を行い、全例に呼吸機能検査を施行した。一秒率<70%の場合は気管支拡張薬投与後に再検査を行った。新COPDスクリーニング質問票原案の全ての質問項目を統計学的に解析し、AO予測因子となる有意な項目を同定した。
COPDの早期発見のためのマーカー探索のために、健常人およびCOPD患者から採取された喀痰上清を用いて酸化型コレステロールを測定し、呼気凝集液の解析を開始した。
3.COPDに関連した医療機関利用状況、医療費調査と労働損失による疾病負担の解析
医療費調査と労働損失による疾病負担の解析に関して、2011-2012年度のデータに基づいてCOPD疾病コスト(COI: Cost of Illness)として推計した。
結果と考察
福岡県久山町住民2232名を対象にスパイメトリ―を用いた住民健診の結果、気管支拡張薬吸気流閉塞有病率は男性14.6%、女性13.7%であり、気管支拡張吸入条件下では男女ともに8.7%であった。COPDスクリーニング質問票開発研究に、鹿児島厚生連健康管理センター健診受診者2367名を対象とした。スパイロメトリ―の結果と併せ統計学的に解析し、年齢、喫煙歴、咳と痰、喘鳴、息切れの5項目を最終質問項目として同定した。COPD患者喀痰中の酸化型コレステロールを解析し、呼吸機能検査結果と有意な相関を有することが明らかにした。2011-2012年の公表データを基に統計解析したCOPDの疾病コスト(COI: Cost of Illness)は、医療費が約1492億円、受診及び罹病による労働損失が約534億円、早期死亡による労働損失が約80億円で、合計すると約2107億円と推計した。
結論
COPDスクリーニング質問票の普及は、COPDの早期発見と同時にCOPDの認知度を高める可能性があり、新規のCOPDスクリーニング質問票の開発を進めて行く必要がある。
公開日・更新日
公開日
2015-09-11
更新日
-