脳卒中高リスク群の診断及び治療による循環器疾患制圧に関する研究

文献情報

文献番号
201412023A
報告書区分
総括
研究課題名
脳卒中高リスク群の診断及び治療による循環器疾患制圧に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H24-循環器等(生習)-一般-011
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
峰松 一夫(独立行政法人国立循環器病研究センター 病院)
研究分担者(所属機関)
  • 山田 和雄(名古屋市立大学大学院医学研究科 脳神経外科)
  • 坂井 信幸(神戸市立医療センター中央市民病院、脳血管外科)
  • 小久保 喜弘(独立行政法人国立循環器病研究センター 予防健診部)
  • 飯原 弘二(九州大学大学院 医学研究院 脳神経外科)
  • 豊田 一則(独立行政法人国立循環器病研究センター 脳血管部門)
  • 長束 一行(独立行政法人国立循環器病研究センター 脳神経内科)
  • 上原 敏志(独立行政法人国立循環器病研究センター 脳血管リハビリテーション科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
11,540,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班では,適切な治療介入が行われなければ高率に脳卒中やその他の循環器疾患を発生しうる無症候性頸動脈狭窄、一過性脳虚血発作(TIA)、心房細動(AF)などの脳卒中高リスク疾患群の我が国における診療実態とその問題点を明らかにし、その解決策を提言する。これにより、本疾患群対策の重要性を一般市民へ効果的に啓発し、非専門医レベルで効率的にスクリーニングし、さらに専門医で迅速かつ合理的に診断、治療を実施するためのシステム構築を行う。
研究方法
(研究1) 都市部一般住民を対象とするサブクリニカルデータに基づく脳卒中予防に関する研究:AF罹病リスクスコアを確立し、AF罹病高リスク者の早期発見と予防に資することを目的として、健診にてAFを有さず追跡可能な6,906名を対象として追跡した。
(研究2) TIA例の脳心血管イベント発症に関する前向き登録研究:TIA例の短期的および長期的な脳心血管イベント発症率とその予測因子を明らかにするため、発症7日以内のTIA例を対象とした多施設共同前向き登録研究を実施し、1,414例が登録された。
(研究3) AF患者の虚血性脳血管障害発症と予防治療に関する研究:TIA前向き登録研究のサブ研究として、AFを合併する患者群の特徴を調べた。
(研究4) 頸動脈プラーク内血管新生とバイオマーカーとの関連に関する研究:超音波造影剤を用いて頸動脈プラーク内の新生血管を定量評価し、イベントや新生血管の変化を追跡する。同時にバイオマーカーとプラーク新生血管との関連を評価する。
(研究5) 脳卒中高リスク群に対する外科治療に関する研究:頸動脈狭窄症の血行再建術後のMRI拡散強調画像陽性を予測する因子として、頸部内頸動脈のリモデリングの意義について検討した。
(研究6) 無症候性頸動脈狭窄の自然経過と予防治療に関する研究:無症候性頸動脈狭窄の治療に関するわが国の現状を知るため、39施設参加による全例登録前向き観察研究を行い、838例が登録された。
(研究7) 脳血管内治療の役割と安全性に関する研究:脳血管内治療専門医が関与した脳卒中発症高リスク群(未破裂脳動脈瘤、頸動脈狭窄症)に対する脳血管内治療の悉皆的に登録し、血管内治療の実績、おもに治療の安全性に関する検討を行った。
結果と考察
(研究 1):AF罹病リスクスコアに喫煙(<20本/日)、喫煙(≧20本/日)、飲酒(≧2合/日)、前高血圧かつ過体重、高血圧かつ痩せ、高血圧かつ正常体重、高血圧かつ過体重、虚血性心疾患、弁膜症、性、年代を取り入れ、C統計量は0.73(95%CI: 0.70~0.75)と良好であった。わが国初のAF罹病リスクチャートを作成し10年後AF罹病率を予測できるようになった。
(研究 2):TIA後1年以内の脳梗塞発症率は8.5%で、わが国に特徴的な脳梗塞病型が明らかになった。脳梗塞発症群はABCD2スコアが高く、男性、片麻痺、来院時収縮期血圧が1年以内の脳梗塞発症の予測因子であった。
(研究 3):AF有無で脳梗塞発症率に差を認めなかったが、1年後の脳梗塞発症+死亡率はAF例で高い傾向にあった(13.6% vs 9.5%)。AF群の脳梗塞発症に関しては,CHADS2スコア高値が独立した予測因子となった。脳梗塞+死亡では,CHADS2スコアに加え頭蓋外頸動脈病変が独立した予測因子となった。
(研究4):現在症例集積段階であるが、症候性プラークの診断に造影超音波が有用であり、同時に測定しているバイオマーカーの解析ではsCD40Lが症候性頸動脈病変で有意に高値であることがわかった。
(研究 5):頸動脈のリモデリング率と頸動脈プラークのMRI信号強度の組み合わせが頸動脈ステント留置術(CAS)の治療リスク予測に有用であることを示すことができ、外科的治療の適応判断基準となる可能性が示された。
(研究 6):現在中間回収段階だが、外科群の合併症率はCEA 2%、CAS 1%、その後の経過観察でCEA 1例、CAS 1例のみであった。観察群ではTIA 2例、脳虚血発作1例を認めた。内科治療群では2年間で約3%の再発作を認めた。わが国の無症候性頚動脈狭窄症の経過は欧米に近いものと推定される。
(研究 7):脳卒中高リスク群に対する血管内治療の全体像に加え、未破裂脳動脈瘤治療における虚血性合併症の年次的減少や、頸動脈/頭蓋内動脈狭窄に対する血管内治療周術期の虚血性合併症に関連する因子等が明らかになった。
結論
本年度も初年度、次年度に引き続きAF、TIA、無症候性頸動脈狭窄などの脳卒中高リスク群の診断及び治療を主題とした7つの研究を企画・遂行した。本研究で遂行したこれらの研究結果の全体像を体系化して提示することで、包括的な脳卒中水際予防・治療対策が提案できると見込まれる。

公開日・更新日

公開日
2015-09-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201412023B
報告書区分
総合
研究課題名
脳卒中高リスク群の診断及び治療による循環器疾患制圧に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H24-循環器等(生習)-一般-011
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
峰松 一夫(独立行政法人国立循環器病研究センター 病院)
研究分担者(所属機関)
  • 飯原 弘二(九州大学大学院 医学研究院 脳神経外科)
  • 上原 敏志(独立行政法人国立循環器病研究センター 脳血管リハビリテーション科)
  • 小久保 喜弘(独立行政法人国立循環器病研究センター 予防健診部)
  • 坂井 信幸(神戸市立医療センター中央市民病院、脳血管外科)
  • 豊田 一則(独立行政法人国立循環器病研究センター 脳血管部門)
  • 長束 一行(独立行政法人国立循環器病研究センター 脳神経内科)
  • 山田 和雄(名古屋市立大学大学院医学研究科 脳神経外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班では、適切な治療介入がなければ高率に脳卒中・循環器疾患を発生しうる無症候性頸動脈狭窄、一過性脳虚血発作(TIA)、心房細動(AF)などの脳卒中高リスク疾患群の診療実態と問題点を明らかにし、その解決策を提言する。これにより、本疾患群対策の重要性を一般市民へ効果的に啓発し、非専門医レベルで効率的にスクリーニングし、さらに専門医で迅速かつ合理的に診断、治療を実施するためのシステム構築を行う。
研究方法
(研究1) 都市部一般住民を対象とするサブクリニカルデータに基づく脳卒中予防に関する研究:吹田研究登録者を対象として1) 頚動脈超音波検査の頸動脈内中膜複合体厚(IMT)と死亡の関連、2) AF罹病リスクスコアの作成、を目的とした研究を行なった。
(研究2) TIA例の脳心血管イベント発症に関する前向き登録研究:TIA例の短・長期的な脳心血管イベント発症率とその予測因子を明らかにするため、発症7日以内のTIA例を対象に多施設共同前向き登録研究を実施し、1,414例が登録された。
(研究3) AF患者の虚血性脳血管障害発症と予防治療に関する研究:(研究2)のサブ研究としてAF合併例の特徴を調べた。
(研究4) 頸動脈プラーク内血管新生とバイオマーカーとの関連に関する研究:超音波造影剤を用いて頸動脈プラーク内の新生血管を定量評価し、イベントや新生血管の変化を追跡した。同時にバイオマーカーとプラーク新生血管の関連を評価した。
(研究5) 脳卒中高リスク群に対する外科治療に関する研究:1) 無症候性頸動脈狭窄症のMRIを用いSPECTでの脳血流評価との関連を検討した。2) 頸動脈狭窄症の血行再建術後MRI拡散強調画像陽性を予測する因子として頸部内頸動脈のリモデリングについて検討した。
(研究6) 無症候性頸動脈狭窄の自然経過と予防治療に関する研究:無症候性頸動脈狭窄の治療に関するわが国の現状を知るため、39施設参加による全例登録前向き観察研究を行い838例が登録された。
(研究7) 脳血管内治療の役割と安全性に関する研究:脳血管内治療専門医が関与した脳卒中発症高リスク群(未破裂脳動脈瘤、頸動脈狭窄症)に対する脳血管内治療を悉皆的に登録し、血管内治療の実績、おもに治療の安全性に関する検討を行った。
結果と考察
(研究 1):1) IMT値進展が全/循環器死亡のリスクとなり、最大IMT値が予測因子として最も鋭敏であった。2) 喫煙、飲酒、血圧と体重の組み合わせ、心疾患、性、年代を取り入れたリスクスコアが作成でき、C統計量0.73であった。わが国初のAF罹病リスクチャートの作成により10年後AF罹病率を予測できるようになった。
(研究 2):TIA後1年以内の脳梗塞発症率は8.5%で、わが国に特徴的なTIA後の脳梗塞病型が明らかになった。脳梗塞発症群はABCD2スコアが高く、男性、片麻痺、来院時収縮期血圧が脳梗塞発症の予測因子であった。
(研究 3):AFを有する患者は16%を占めた。AF有無で脳梗塞発症率に差はなかったが、1年後の脳梗塞発症+死亡率はAF例で高率であった(13.6% vs 9.5%)。AF群の脳梗塞発症に関してはCHADS2スコア高値が、脳梗塞+死亡では、CHADS2スコアに加え頭蓋外頸動脈病変が独立した予測因子となった。
(研究4):症候性プラークの診断に造影超音波が有用であり、バイオマーカーの解析ではsCD40Lが症候性頸動脈病変で有意に高値であることがわかった。
(研究 5):1) 無症候性頚動脈狭窄症における病側白質病変は脳血管反応性低下と関連した。2) リモデリング率と頚動脈プラークのMRI信号強度の組み合わせが頸動脈ステント留置術の治療リスク予測に有用であった。いずれも外科治療の適応判断基準となり得るものである。
(研究 6):現在中間回収段階だが、外科群の合併症率はCEA 2%、CAS 1%、その後CEA 1例、CAS 1例のみであった。観察群ではTIA 2例、脳虚血発作1例を認めた。内科治療群では2年間で約3%の再発作を認めた。わが国の無症候性頚動脈狭窄症の経過は欧米に近いと推定される。
(研究 7):脳卒中高リスク群に対する血管内治療の全体像に加え、未破裂脳動脈瘤治療における虚血性合併症の年次的減少や、頸動脈/頭蓋内動脈狭窄に対する血管内治療周術期の虚血性合併症に関連する因子等が明らかになった。
結論
以上7研究の結果は、脳卒中高リスク例の効率的な抽出と介入、すなわち脳卒中の0次~1.5次予防を考える上で非常に有益である。これらの研究結果を統合し、体系化することにより、無症候性頸動脈狭窄症、AF、TIA等の脳卒中高リスク疾患群を迅速かつ合理的に診断・治療するための医療システムの構築に寄与することができる。

公開日・更新日

公開日
2015-09-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2016-05-13
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201412023C

収支報告書

文献番号
201412023Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
15,000,000円
(2)補助金確定額
15,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 4,426,814円
人件費・謝金 2,567,430円
旅費 2,056,820円
その他 2,499,455円
間接経費 3,460,000円
合計 15,010,519円

備考

備考
自己資金 10,519円

公開日・更新日

公開日
2015-10-16
更新日
-