文献情報
文献番号
201412018A
報告書区分
総括
研究課題名
日本人の食生活の内容を規定する社会経済的要因に関する実証的研究
課題番号
H24-循環器等(生習)-一般-006
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
村山 伸子(新潟県立大学 人間生活学部)
研究分担者(所属機関)
- 福田 吉治(山口大学 医学部)
- 中谷 友樹(立命館大学 文学部)
- 石川 みどり(国立保健医療科学院)
- 大内 妙子(山本 妙子)(神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部)
- 西 信雄(国立健康・栄養研究所)
- 林 芙美(千葉県立保健医療大学 健康科学部)
- 武見 ゆかり(女子栄養大学 栄養学部)
- 横山 徹爾(国立保健医療科学院)
- 阿部 彩(国立社会保障・人口問題研究所)
- 石田 裕美(女子栄養大学 栄養学部)
- 草間 かおる(青森県立保健大学 健康科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
7,950,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
既存データベースを用いて社会経済的な要因と食生活の関連の有無と程度の全体像を把握する。社会経済的に不利な層として「子どもの貧困」と「高齢者の買い物弱者」に焦点をあて食物摂取量への影響の実態を把握する。食生活の内容を反映するフードセキュリティ指標を開発する。
研究方法
研究1 既存のデータベースを用いた社会経済指標と食生活・栄養状態との関連
1)国民健康・栄養調査データを用いた検討
世帯年収のデータが含まれる平成22年23年の国民健康・栄養調査のデータを用い、世帯の年間収入間で、食品群別摂取量、栄養素等摂取量、体格、臨床検査値を比較した。
2)内閣府食育調査データを用いた検討
平成21年「食育の現状と意識に関する調査」と平成23年「食育に関する意識調査」のデータを用いた。主観的な暮らし向きおよび世帯の年間収入と、家族との共食との関連について検討した。
研究2 世帯の社会経済状態と子どもの食生活・栄養状態との関連
平成25年に東日本4地域19小学校に在籍する5年生全数(長期欠席等を除く)1447人の児童と保護者に調査協力を依頼し、1196人(82.6%)から同意を得、解析対象とした。保護者、児童に対し各自記式質問紙調査、児童の食事記録(記録法と写真法)、児童の体格を健診結果から把握した。
研究3 食料品店への近接性と高齢者の食生活・栄養状態との関連
平成25年に4県6市町に協力を得て、1次調査として住民基本台帳から独居高齢者全数9961人に対し質問紙調査を依頼し、5386人から回答を得た(54.1%)。その内、平日2日間の食事記録に同意が得られた534人に食事調査を実施した。
研究2、3は、「疫学研究に関する倫理指針」を遵守し、所属機関の倫理審査で承認を得た。
1)国民健康・栄養調査データを用いた検討
世帯年収のデータが含まれる平成22年23年の国民健康・栄養調査のデータを用い、世帯の年間収入間で、食品群別摂取量、栄養素等摂取量、体格、臨床検査値を比較した。
2)内閣府食育調査データを用いた検討
平成21年「食育の現状と意識に関する調査」と平成23年「食育に関する意識調査」のデータを用いた。主観的な暮らし向きおよび世帯の年間収入と、家族との共食との関連について検討した。
研究2 世帯の社会経済状態と子どもの食生活・栄養状態との関連
平成25年に東日本4地域19小学校に在籍する5年生全数(長期欠席等を除く)1447人の児童と保護者に調査協力を依頼し、1196人(82.6%)から同意を得、解析対象とした。保護者、児童に対し各自記式質問紙調査、児童の食事記録(記録法と写真法)、児童の体格を健診結果から把握した。
研究3 食料品店への近接性と高齢者の食生活・栄養状態との関連
平成25年に4県6市町に協力を得て、1次調査として住民基本台帳から独居高齢者全数9961人に対し質問紙調査を依頼し、5386人から回答を得た(54.1%)。その内、平日2日間の食事記録に同意が得られた534人に食事調査を実施した。
研究2、3は、「疫学研究に関する倫理指針」を遵守し、所属機関の倫理審査で承認を得た。
結果と考察
研究1 成人について既存のデータベースを用いた研究
平成22年23年の国民健康・栄養調査のデータを再解析した。その結果、年間収入が600万円以上に比べて、200万円未満の人に次の特徴がみられた。穀類の摂取量が多く、野菜類、果物類、魚介類、肉類等の摂取量が少ない。栄養素摂取量で、エネルギー摂取源として炭水化物が多く、たんぱく質や脂質が少なく、いくつかのビタミン、ミネラル摂取量が少ない。臨床検査値として随時血糖値と中性脂肪値が高く、コレステロール値が低い。低所得者に生活習慣病のリスクファクターをもつ人が多く、その背景に食物摂取、食生活が関与していることが示された。内閣府の食育調査のデータの分析により、生活のゆとりが無い人は家族との共食頻度が少なかった。
研究2 世帯の社会経済状態と子どもの食生活・栄養状態との関連
世帯年収が貧困基準以下の子どもと保護者に、次の特徴がみられた。子どもの朝食欠食が多く、野菜摂取頻度が少なく、肉加工品やインスタント麺の摂取頻度が多い。3地域の食事記録で、たんぱく質、ビタミンやミネラルの栄養素摂取量が少ない。炭水化物エネルギー比率が高いことと符合していた。世帯の年収が貧困基準以下の場合、保護者の子どもの食事への知識が少ないこと、経済的な理由で食物が買えなかった経験があることから、年収が子どもの食事に与える影響のルートとして、食物が買えないという物理的なルートとともに、知識を経由するルートがあることが示唆された。子どもへの質問紙と、保護者への質問紙により、子どものフードセキュリティ指標としていくつかの項目の妥当性が示された。
研究3 食料品店への近接性等と高齢者の食生活・栄養状態との関連
GISを用いた食料品店からの距離が遠いほど(移動手段を持たない場合)、質問紙から把握した「買い物の容易さ」が容易でないほど食品摂取の多様性が低いこと、一方移動手段をもつ人は、実際の食料品店からの距離と食品摂取の多様性に関連がみられないことから、食料品店との近接性や移動手段の確保が有効であると考えられる。また、買い物代行や食物をもらうなどのソーシャルサポートがある人は、食品摂取の多様性が高いことから、ソーシャルサポートも栄養改善に有効であると考えられる。経済状態については、世帯年収100万円未満の人の特徴として、食品摂取の多様性スコアが低く、食事記録による栄養素摂取量が推定平均必要量未満の栄養素が多く、経済状態が食品摂取と関連することが示された。高齢者への質問紙で、独居高齢者のフードセキュリティを把握する項目として、主観的な「買い物の大変さ」が最も妥当であることが示された。
平成22年23年の国民健康・栄養調査のデータを再解析した。その結果、年間収入が600万円以上に比べて、200万円未満の人に次の特徴がみられた。穀類の摂取量が多く、野菜類、果物類、魚介類、肉類等の摂取量が少ない。栄養素摂取量で、エネルギー摂取源として炭水化物が多く、たんぱく質や脂質が少なく、いくつかのビタミン、ミネラル摂取量が少ない。臨床検査値として随時血糖値と中性脂肪値が高く、コレステロール値が低い。低所得者に生活習慣病のリスクファクターをもつ人が多く、その背景に食物摂取、食生活が関与していることが示された。内閣府の食育調査のデータの分析により、生活のゆとりが無い人は家族との共食頻度が少なかった。
研究2 世帯の社会経済状態と子どもの食生活・栄養状態との関連
世帯年収が貧困基準以下の子どもと保護者に、次の特徴がみられた。子どもの朝食欠食が多く、野菜摂取頻度が少なく、肉加工品やインスタント麺の摂取頻度が多い。3地域の食事記録で、たんぱく質、ビタミンやミネラルの栄養素摂取量が少ない。炭水化物エネルギー比率が高いことと符合していた。世帯の年収が貧困基準以下の場合、保護者の子どもの食事への知識が少ないこと、経済的な理由で食物が買えなかった経験があることから、年収が子どもの食事に与える影響のルートとして、食物が買えないという物理的なルートとともに、知識を経由するルートがあることが示唆された。子どもへの質問紙と、保護者への質問紙により、子どものフードセキュリティ指標としていくつかの項目の妥当性が示された。
研究3 食料品店への近接性等と高齢者の食生活・栄養状態との関連
GISを用いた食料品店からの距離が遠いほど(移動手段を持たない場合)、質問紙から把握した「買い物の容易さ」が容易でないほど食品摂取の多様性が低いこと、一方移動手段をもつ人は、実際の食料品店からの距離と食品摂取の多様性に関連がみられないことから、食料品店との近接性や移動手段の確保が有効であると考えられる。また、買い物代行や食物をもらうなどのソーシャルサポートがある人は、食品摂取の多様性が高いことから、ソーシャルサポートも栄養改善に有効であると考えられる。経済状態については、世帯年収100万円未満の人の特徴として、食品摂取の多様性スコアが低く、食事記録による栄養素摂取量が推定平均必要量未満の栄養素が多く、経済状態が食品摂取と関連することが示された。高齢者への質問紙で、独居高齢者のフードセキュリティを把握する項目として、主観的な「買い物の大変さ」が最も妥当であることが示された。
結論
世帯の経済的状態が低い場合、成人、子ども、独居高齢者とも、健康の観点から食品の多様性、栄養素等摂取量のバランスが悪く、国民全体の生活習慣病予防、健康格差の縮小のためには、低所得者層が必要な栄養素、食品を確保できる施策が必要である。また、独居高齢者の食物へのアクセスの確保も栄養対策として必要である。
公開日・更新日
公開日
2015-09-11
更新日
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