文献情報
文献番号
201412010A
報告書区分
総括
研究課題名
地域におけるアルコール対策に関する観察・介入研究
課題番号
H26-循環器等(政策)-若手-001
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
梅澤 光政(獨協医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
5,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
我が国において、酒は単なる食品の一種として存在するだけでなく、生活習慣と深く関わり、文化の一翼を担っている。しかしその一方で、不適切な飲酒は健康を害することが知られている。健康日本21(第二次)においては、がんや循環器疾患を予防するため、リスクを高める飲酒を減らすことが目標とされている。特定健診・特定保健指導においては、アルコールのリスクに着目した保健指導を行うためのツールとして、AUDIT(アルコール使用障害同定テスト:Alcohol Use Disorders Identification Test)とBI(減酒支援簡易介入:Brief Intervention)が紹介されている。
本研究は、これらのツールを用いて、現在の日本における飲酒の状況やアルコールによる問題を把握し、そして問題に対する対策を地域ごとの事情を勘案しつつ立案・実施し、その効果を検証することを目的とする。また、これらのツールを用いる上で生じる問題点等を整理し、これらを解消するための方策を考察・実施する。
本年度は健康診査の受診者を対象にAUDITを実施し、現在の日本人におけるAUDITの点数別分布を明らかにするとともに、AUDITの成績と健診項目の横断的な評価を行った。
本研究は、これらのツールを用いて、現在の日本における飲酒の状況やアルコールによる問題を把握し、そして問題に対する対策を地域ごとの事情を勘案しつつ立案・実施し、その効果を検証することを目的とする。また、これらのツールを用いる上で生じる問題点等を整理し、これらを解消するための方策を考察・実施する。
本年度は健康診査の受診者を対象にAUDITを実施し、現在の日本人におけるAUDITの点数別分布を明らかにするとともに、AUDITの成績と健診項目の横断的な評価を行った。
研究方法
対象は、茨城県筑西市の2014年度健康診査の受診者である。そのうち、本研究への参加に同意した40歳以上の男女2,549人(男性1,037人、女性1,512人)を分析対象とした。AUDITは健康診査の問診の一部として実施し、受診者の飲酒量を正確に把握するため、飲酒量と飲酒頻度についてはアルコール飲料の種類と量、頻度を聞き取った。
対象者全体、対象者のうち40~74歳の者、特定保健指導における階層化の対象者、特定保健指導の対象者のそれぞれについて、AUDITの点数分布を求め、また健診成績の集計を行った。さらにAUDITにより問題飲酒の指摘された者(AUDIT点数8点以上)と問題飲酒のない者(AUDIT点数7点以下)の健診成績の比較を、対象者全体と特定保健指導の対象者についてそれぞれ行った。
対象者全体、対象者のうち40~74歳の者、特定保健指導における階層化の対象者、特定保健指導の対象者のそれぞれについて、AUDITの点数分布を求め、また健診成績の集計を行った。さらにAUDITにより問題飲酒の指摘された者(AUDIT点数8点以上)と問題飲酒のない者(AUDIT点数7点以下)の健診成績の比較を、対象者全体と特定保健指導の対象者についてそれぞれ行った。
結果と考察
AUDITの点数分布については、男性では、問題ない飲酒レベルと判定された者(AUDIT点数0~7点)の割合は72.9~79.7%の間にあり、問題はあるが依存症には至らない飲酒レベルと判定された者(AUDIT点数8~14点)の割合は17.7~23.8%の間にあった。その割合は、対象者全体よりも、階層化対象者、特定保健指導対象者において高かった。一方、女性では、問題ない飲酒レベルの者の割合が97.2~98.3%、問題はあるが依存症には至らない飲酒レベルの者の割合が1.4~2.1%であった。年代別では男女ともに若い年代に問題飲酒が多い傾向がみられた。これらの結果は、樋口らが2003年に行った20歳以上の一般住民を対象とした調査の結果と比べ、男女ともに問題飲酒の割合が若干低い。これは調査対象者の年齢層が本研究の方が高いこと、樋口らが一般住民を対象としたのに対し、本研究は健康診査の受診者を調査対象としていることなどが影響したと考えられた。
AUDITの成績と健診成績の比較については、対象者全体での分析では、男性において、問題飲酒のない群(AUDIT点数0~7点)に比べ、問題飲酒を指摘された群(AUDIT点数8点以上)では血圧、中性脂肪、GOT、GPT、γ-GTP、HDL-コレステロールの平均値が高く、LDL-コレステロールの平均値が低かった。また、問題飲酒を指摘された群では高血圧者、肝機能異常者の割合が高かった。女性では問題飲酒のない群に比べ、問題飲酒を指摘された群でGOT、GPTの平均値が高く、LDL-コレステロール、HbA1cの平均値が低かった。問題飲酒を指摘された群では肝機能異常者の割合が高かった。特定保健指導対象者の分析では、男女ともに、問題飲酒がない群に比べ、問題飲酒がある群で血圧、中性脂肪の平均値が高かった。これらの結果は、過去の疫学調査によって示されている飲酒と生活習慣病の関連と合致するものであった。
AUDITの成績と健診成績の比較については、対象者全体での分析では、男性において、問題飲酒のない群(AUDIT点数0~7点)に比べ、問題飲酒を指摘された群(AUDIT点数8点以上)では血圧、中性脂肪、GOT、GPT、γ-GTP、HDL-コレステロールの平均値が高く、LDL-コレステロールの平均値が低かった。また、問題飲酒を指摘された群では高血圧者、肝機能異常者の割合が高かった。女性では問題飲酒のない群に比べ、問題飲酒を指摘された群でGOT、GPTの平均値が高く、LDL-コレステロール、HbA1cの平均値が低かった。問題飲酒を指摘された群では肝機能異常者の割合が高かった。特定保健指導対象者の分析では、男女ともに、問題飲酒がない群に比べ、問題飲酒がある群で血圧、中性脂肪の平均値が高かった。これらの結果は、過去の疫学調査によって示されている飲酒と生活習慣病の関連と合致するものであった。
結論
健康診査受診者を対象にAUDITによる調査を実施した。これにより現在の日本人における、問題のある飲酒を行っている者の割合が明らかとなった。また、特定保健指導の対象者において、問題のある飲酒行動のある者では血圧や中性脂肪の平均値が高いことを明らかとした。これらの結果は、アルコール対策を進めるための基礎データとなるものであった。
公開日・更新日
公開日
2015-09-11
更新日
-