脳卒中急性期医療の地域格差の可視化と縮小に関する研究

文献情報

文献番号
201412004A
報告書区分
総括
研究課題名
脳卒中急性期医療の地域格差の可視化と縮小に関する研究
課題番号
H25-心筋-一般-002
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
飯原 弘二(九州大学大学院医学研究院脳神経外科)
研究分担者(所属機関)
  • 小笠原 邦昭(岩手医科大学脳神経外科)
  • 塩川 芳昭(杏林大学脳神経外科)
  • 宮地 茂(大阪医科大学脳神経外科)
  • 吉村 紳一(兵庫医科大学脳神経外科)
  • 豊田 一則(独立行政法人国立循環器病研究センター脳血管内科)
  • 西村 邦宏(国立循環器病研究センター予防医学・疫学情報部)
  • 嘉田 晃子(独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター臨床研究センター臨床試験研究部生物統計研究室)
  • 中川原 譲二(国立循環器病研究センター脳卒中統合イメージングセンター)
  • 松田 晋哉(産業医科大学医学部公衆衛生学)
  • 奥地 一夫(奈良県立医科大学救急医学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
4,250,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
超高齢社会を迎え、緊急性の高い脳卒中治療の集約化、広域化と連携強化は喫緊の課題であるが、厳然とした地域格差があるとされている(Toyoda et al. Stroke 2009, Nakagawara et al. Stroke 2010)。高度な急性期脳卒中医療を適正に整備をするには、まず二次医療圏毎に、診療施設の脳卒中センターの推奨要件(人的要因、診断機器、インフラ、外科・介入治療、教育研究活動)の充足度を、継続的に調査することが重要であり、その上で急性期脳卒中症例の施設集中度、推奨要件の充足度が、アウトカムに与える影響を検証する必要がある。本研究では、全国のDPC/レセプトデータを用い、地域の特性に応じた救急医療体制、脳卒中センターの適正な配置を構築して行く上で必要な情報を解析することを目的とする。
研究方法
1)日本の脳神経外科医療の可視化に関する研究・全数調査
 平成25年11月~平成26年5月の期間で、日本脳神経外科学会の教育訓練施設847 施設の中で、本研究に参加することを同意した施設を対象とした。ICD-10コードから破裂脳動脈瘤、未破裂脳動脈瘤、内頚動脈狭窄症の症例を抽出し、治療法およびCase volumeがアウトカムに与える影響を解析した。
2)脳神経血管内治療の可視化に関する研究
 J-ASPECT Studyで集積してきた脳卒中医療に関する登録項目、評価指標の妥当性を検討することを目的として、従来型の登録研究である日本脳神経血管内治療登録研究(JR-NET)参加施設に、本研究のvalidation studyへの参加を依頼し、各施設でDPC匿名化データから該当する患者に関しての、登録項目、評価指標の正確性を検証した。
3)脳卒中患者退院調査
 脳卒中(脳梗塞、一過性脳虚血発作、脳内出血、くも膜下出血、もやもや病)および関連疾患のICD-10病名を含む症例を抽出し、脳卒中大規模データベースを作成した。また、平成22年より平成25年までの3年間のデータを用い、平成22年度に「脳卒中診療施設調査」をもとに提唱した包括的脳卒中センターのスコア(CSCスコア)と、死亡率との関連を解析した。
結果と考察
1)日本の脳神経外科医療の可視化に関する研究・全数調査
 破裂脳動脈瘤:ICD-10コードのI60くも膜下出血(SAH)かつ緊急入院の8620例の中からクリッピング群3264例、コイリング群1590例を抽出した。コイリング群はクリッピング群と比較し、1.29倍死亡率が高かった。退院時mRSは、クリッピング群、コイリング群とも同等であった。Case volumeと総死亡、脳梗塞、退院時mRSの関連はクリッピング、コイリング群ともに認められなかった。未破裂脳動脈瘤:未破裂脳動脈瘤(ICD-10コードI671、脳動脈瘤、非破裂性)14580例を抽出し、クリッピング群3710例とコイリング群2619例にわけた。脳梗塞ではコイリング群が、術後合併症ではクリッピング群が有意に高かったが、死亡率とmRSでは2群間に差は認めなかった。Case volumeによる影響はクリッピング、コイリング群ともに認められなかった。頚動脈狭窄症:手術コードの動脈血栓内膜剥離術(CEA)(K6092)1655件、経皮的頸動脈ステント留置術(CAS)(K609-2)2533件 の症例を元に解析した。入院時死亡、脳梗塞、脳出血などについては差がなかった。入院中の合併症はCEA群で有意に多かった。Case volumeの影響は、CEA、CASともに有意な結果はなかった。いずれの疾患においても、validation studyが必要と考えられた。
2)脳神経血管内治療の可視化に関する研究
 JR-NETとJ-ASPECT studyの比較において、動脈瘤治療、頚動脈ステント留置術、脳動静脈奇形塞栓術を施行した患者の主病名に関して、94~100%の一致率であった。両データベースを突合し、検討することで、データの正確性の評価が可能であると考えられた。
3)DPC情報、電子レセプト情報をもちいた脳卒中救急疫学調査
 平成22年4月より平成25年3月までの3年間で218579件のデータベースが作成された。3年間における脳梗塞、脳出血、くも膜下出血の死亡率はいずれも、死亡率の軽減とCSCスコアが有意に相関した。
結論
包括的脳卒中センターのスコアが、脳卒中の入院時死亡率の軽減に有意に関連することが再現性を持って明らかとなった。また、本研究によって脳神経外科医療の可視化が可能であったが、validation studyによってより信頼性の高いデータとなると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2015-09-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201412004Z