成人T細胞白血病の治癒を目指した病因ウイルス特異抗原を標的とする新規複合的ワクチン療法:抗CCR4抗体を併用した樹状細胞療法 第I/II相試験

文献情報

文献番号
201411046A
報告書区分
総括
研究課題名
成人T細胞白血病の治癒を目指した病因ウイルス特異抗原を標的とする新規複合的ワクチン療法:抗CCR4抗体を併用した樹状細胞療法 第I/II相試験
課題番号
H25-実用化(がん)-一般-003
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
末廣 陽子(独立行政法人国立病院機構九州がんセンター 血液内科)
研究分担者(所属機関)
  • 神奈木 真理(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 免疫治療学分野)
  • 赤司 浩一(国立大学法人九州大学大学院 医学研究院 臨床医学部門)
  • 松岡 雅雄(国立大学法人京都大学ウイルス研究所 ウイルス制御研究領域)
  • 石田 高司(名古屋市立大学 大学院医学研究科 腫瘍・免疫内科学)
  • 渡辺 信和(独立行政法人国立病院機構 九州がんセンター 細胞治療科)
  • 福田 哲也(東京医科歯科大学 血液内科)
  • 白土 基明(国立大学法人九州大学病院 内分泌代謝糖尿病内科)
  • 下川 元継(独立行政法人国立病院機構 九州がんセンター 臨床研究センター 腫瘍情報研究部 腫瘍統計学研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
157,300,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者 渡辺信和 東京大学医科学研究所(平成26年4月1日~27年2月28日) →九州がんセンター(平成27年3月1日以降) 

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、ATLの新規治療法開発を目的に既治療ATL患者を対象としてウイルス特異抗原であるTaxを標的とした樹状細胞(DC)ワクチン療法の安全性、忍容性の検証を行う。平成26年度は、DCワクチンの実用化を目指し、次世代のワクチン療法として抗CCR4抗体を併用し制御性免疫の抑制、残存病変の縮小効果による効率的な抗腫瘍免疫の誘導をする「複合的免疫療法の第Ia/Ib相医師主導治験」の準備を推進し、治験登録を開始した。また先行して実施した樹状細胞ワクチン単独療法の臨床研究3症例の追跡調査を行った。
研究方法
1.ATLに対するTax特異的樹状細胞ワクチン単独療法の第I相臨床研究追跡調査
平成24年度に実施したTax特異的DCワクチン単独療法(第I相臨床研究)完遂例の追跡調査(2年間)を実施した。2.抗CCR4抗体を併用した複合的免疫療法第Ia/Ib相医師主導治験 2-1. 治験製剤(ATL-DC-101)PMDA薬事戦略相談を通して治験薬製剤(ATL-DC-101)の製造工程における生物由来原料基準の検証、最終製品規格及び工程内管理試験、規格試験の妥当性を検討した。GMP組織整備、関連文書を作成し健常人アフェレーシス検体を用いた治験薬製造工程バリデーション、および治験薬の品質・安定性の検証、製剤規格試験の検出感度の検証を行った。更に同一ロットの検体を用いて非臨床試験(マウス毒性試験、造腫瘍性試験)を実施した。並行して多施設での治療応用に向けた製剤搬送システムを整備中である。2-2. GCP組織整備治験開始に向けて九州がんセンターに治験調整事務局を設置し、GCP関連書類の整備および情報一元化のためのEDCを導入した。その他、安全性情報部門を九州がんセンターに設置し、モニタリング、監査、データセンター、統計部門は外部委託とした。平成26年11月に九州がんセンターのIRB承認が得られ、厚生労働省に治験計画届書を提出した。2-3.付随研究 本治験に伴う付随研究として、Tax特異的細胞傷害性T細胞(CTL)の誘導、HTLV-1ウイルス特異的液性免疫の誘導、HTLV-1感染クローンの解析、制御性免疫の抑制効果における解析の予備検討を実施した。
結果と考察
1.ATLに対するTax特異的樹状細胞ワクチン療法の第I相臨床研究追跡調査 樹状細胞ワクチンを単独投与した3症例の被験者においてgrade3以上の非血液学的毒性を認めず、接種開始後27-32ヶ月の経過で安全性は確認された。部分寛解が得られた2症例は2年以上外来で無治療経過観察中であり、内1例は6ヶ月後の評価で完全寛解の評価が得られ、現在も寛解維持ができている。本樹状細胞ワクチンの特徴は、被験者の全身状態が保たれ長期間外来経過観察が可能な点であり、今後、移植非適応の高齢者に十分対応可能な治療となることが期待される (Suehiro, Br J Haematol, 2015)。
2.抗CCR4抗体を併用した複合的免疫療法第Ia/Ib相医師主導治験 平成26年度はPMDA薬事戦略相談対面助言に基づき治験薬製造における生物由来原料を見直し(培地、試薬変更)、製造手順書、指図書・記録書を修正した。また治験薬の品質・安全性を検証するため、健常人アフェレーシス検体を用いた製造工程のバリデーションを実施し、工程内管理試験、規格試験、使用期限の適切性を確認した。非臨床試験に関しては、免疫不全マウスを用いた反復投与毒性試験で、本剤投与に起因する重篤な毒性は認められず、造腫瘍性試験では、サイトカイン非依存性増殖能および足場非依存性増殖能を獲得する可能性はないと判断された。平成26年11月に施設IRB承認を経て治験計画届書を厚生労働省へ提出し承認された (開発国際誕生日: 26年12月17日)。平成27年3月には、治験実施体制のGCP監査後に九州がんセンター、九州大学病院の2施設で治験の症例登録を開始した。製剤搬送における製剤品質・安定性の検証が最終段階に入り、27年度中には実施施設の追加(東京医科歯科大学、名古屋市立大学)が実現する見込みである。製剤搬送が実現すれば、将来的には国内多施設での治療応用が可能となり、第II相試験およびその後の承認申請を視野に入れたより普遍的な治療として展開させることができる。
結論
ATLに対するHTLV-Ⅰ Tax特異的DCワクチン単独療法第I相臨床研究の追跡調査で安全性が確認された。本研究課題では、医師主導臨床治験「抗CCR4抗体を併用した複合的ワクチン療法」を推進し、改正薬事法による再生医療等製品として製造法の改良を行った。施設IRB承認を経て治験計画届書を厚労省へ提出、治験の症例登録を開始した。今後は、治験の付随研究を通してバイオマーカーの探索、ATL細胞、HTLV-1感染細胞の排除機構を明らかにしていく。

公開日・更新日

公開日
2015-09-09
更新日
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研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-09-09
更新日
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収支報告書

文献番号
201411046Z