ヒト型抗CD4抗体の癌免疫細胞療法への適応を目指した前臨床開発研究

文献情報

文献番号
201411045A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒト型抗CD4抗体の癌免疫細胞療法への適応を目指した前臨床開発研究
課題番号
H25-実用化(がん)-一般-002
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
松島 綱治(国立大学法人東京大学 大学院医学系研究科分子予防医学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 上羽 悟史(国立大学法人東京大学 大学院医学系研究科分子予防医学分野 )
  • 中面 哲也(国立がん研究センター 早期・探索臨床研究センター 免疫療法開発分野)
  • 佐藤 暁洋(国立がん研究センター 研究支援センター 研究企画部)
  • 尾崎 雅彦(国立がん研究センター 東病院 治験管理室 治験事務局)
  • 塚崎 邦弘(国立がん研究センター 東病院 血液腫瘍科)
  • 北野 滋久(国立がん研究センター 早期・探索臨床研究センター 先端医療科)
  • 竹田 和由(順天堂大学大学院医学研究科研究基盤センター細胞機能研究室)
  • 伊藤 哲(IDACセラノスティクス株式会社)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
99,720,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者交替 渡邊協孝(平成26年4月1日~平成26年8月31日) → 尾崎雅彦(平成26年9月1日~平成27年3月31日)

研究報告書(概要版)

研究目的
新規ヒト型化抗CD4抗体は、種々のがん治療・免疫細胞療法などとの併用が期待される。本研究ではGMP基準抗体の生産とそれを使用したGLP基準での安全性・毒性試験の実施計画立案と実施、固形がん患者における抗体単独投与による医師主導第1相臨床治験プロトコール作成および様々ながん治療への応用可能性を検証するための前臨床研究を主な目的とする。
研究方法
マウス皮下腫瘍モデル:
LLC(Lewis lung carcinoma), Colon 26およびB16F10 (melanoma)皮下腫瘍モデルを作成する。B16F10モデルでは、目的に応じてmelanoma抗原gp100特異的MHC class 1拘束性TCR (Pmel-1)を遺伝子導入したTgマウス由来CD8+ T細胞を養子移入する。抗体投与は、腫瘍移植後5および9日目に抗CD4抗体を、抗PD-1, PD-L1, CTAL4, LAG-3, TIM-3, BTLA, GITR抗体は、腫瘍移植後4, 8, 12, 16日目に200ug腹腔内投与する。抗腫瘍効果は、腫瘍体積ならびに必要に応じて生存解析を行い、評価する。
結果と考察
GMP製造:
委託先英国のCobra社で順調に各stepが進行している。今年度の一番大きな進捗はMaster Cell Bank(MCB)の樹立である。MCBの感染性否定試験も無事クリアした。培養サイズも順次サイズを上げ、抗CD4抗体の製造を実施した。Tox-lot製造も行ない、安全性試験遂行準備ができた。

PMDA対面助言:
対面助言に向けての事前相談を平成25年12月26日に受け、東京大学・がん研究センター・IDACの担当者が相談しながらPMDAの対面助言に向け質問事項の整理を実施し、正式に平成26年9月9日に対面助言を受けた。

GLP安全性試験:
安全性試験委託先会社として英国のHuntingdon Life Science (HLS)社を選定した。抗体医薬品のFDA対応等の実績が最も多く、又我々が必要としている免疫系パラメータ測定系のvalidation済の系を最も整備した状態で提供できる事が選定における判断材料となった。既にHLS社へIDACから技術移管できるものから移行している。またCobra社からHLS社へTox-lotが引き渡されていて、PK/PD試験が始まっている。

抗CD4抗体の抗腫瘍効果:
B16F10皮下腫瘍モデルを用いて、抗CD4抗体および種々の抗immune checkpoint抗体の単剤としての抗腫瘍効果を評価した。抗CD4抗体投与群では、比較した全ての抗immune checkpoint抗体投与群を上回る腫瘍増殖抑制および生存延長を認めた。また、抗CD8抗体によりCD8+ T細胞を除去することで抗CD4抗体の抗腫瘍作用が消失することから、抗CD4抗体の抗腫瘍作用にはCD8+ T細胞が関与することが明らかになった。
B16F10皮下腫瘍モデルでは、腫瘍移植14日目の腫瘍局所におけるCD8+ T細胞の浸潤が抗CD4抗体投与群において著明に増加しており、この増加したCD8+ T細胞は、PD-1+ CD137+腫瘍反応性集団ならびにIFNg+ 細胞集団の割合が高く、LAG-3, Tim3, CTLA4などの免疫チェックポイント分子を発現し、ex vivoでB16F10と共培養すると高い殺腫瘍機能を示す腫瘍反応性CD8+ T細胞であった。腫瘍所属リンパ節におけるCD4+ 細胞によるCD8+ T細胞応答の抑制を解除することが、腫瘍特異的なCD8+ T細胞応答の増強に繋がっているものと考えられる。
結論
抗体のGMP生産は、委託先英国のCobra社にて順調に各stepが進行している。今年度の一番大きな進捗はMaster Cell Bank(MCB)の樹立である。Tox-lot製造も行ない、安全性試験遂行準備ができた。安全性試験委託先会社として英国のHuntingdon Life Science (HLS)社を選定した。Cobra社からHLS社へTox-lotが引き渡されていて、PK/PD試験が始まっている。抗PD-1/L1抗体と抗CD4抗体併用において劇的な相乗効果があることが明らかにした。抗腫瘍効果を最大限に発揮する抗CD4抗体の至適投与回数・間隔についてFIH試験では安全性を確保できるように、投与量、投与回数、投与間隔については、PMDAとも議論していきながら慎重にプロトコールを策定する方針が確認された。

公開日・更新日

公開日
2015-09-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201411045Z