文献情報
文献番号
201411016A
報告書区分
総括
研究課題名
小児・若年がん長期生存者に対する妊孕性のエビデンスと生殖医療ネットワーク構築に関する研究
課題番号
H26-がん政策-一般-016
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
三善 陽子(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
- 左合 治彦(国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター)
- 鈴木 直(聖マリアンナ医科大学 産婦人科学)
- 岡田 弘(獨協医科大学越谷病院 泌尿器科)
- 清水 千佳子(国立がん研究センター中央病院 乳腺腫瘍内科)
- 加藤 友康(国立がん研究センター中央病院 婦人腫瘍科)
- 藤崎 弘之(大阪市立総合医療センター 小児血液腫瘍科)
- 松本 公一(国立成育医療研究センター 小児がんセンター)
- 河本 博(国立がん研究センター 小児腫瘍科)
- 大庭 真梨(斉藤 真梨)(横浜市立大学附属 市民総合医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
6,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本邦における小児がん経験者(Childhood Cancer Survivors:CCS)の性腺機能と妊孕性の実態は把握されておらず、挙児希望のCCSに対する適切な評価と医療提供が行なわれていない。本研究はこれらの状況を改善するため、小児・若年がん長期生存者への情報提供と生殖医療ネットワークへの橋渡し、医療界への啓蒙活動、CCSの性腺機能と妊孕性に関する調査結果に基づくエビデンス形成と診療ガイドラインの基盤作成を目的とする。
研究方法
初年度(平成26年度)は小児・若年がん患者の診療に関わる各専門領域の多施設の医師(小児腫瘍医、小児内分泌医、産婦人科医、泌尿器科医、生殖医療専門医、腫瘍内科医、精神神経科医)からなる生殖医療ネットワークを構築し、各領域で取り組みを行った。
結果と考察
1、小児・若年がん患者自身のニーズに即した医療サービスの提供
(1)生殖医療ネットワークの形成
様々な専門領域の医師からなる研究班を構成し、若年がん患者の妊孕性温存を目的として形成された生殖医療ネットワークである日本がん・生殖医療研究会とも連携し、小児がんに限らずがん種を超えたネットワークとしての成熟をめざした。「がんと生殖に関するシンポジウム2015~小児・若年がん患者さんの妊孕性温存について考える~」を開催して多職種による情報交換を行った。
(2)ポータルサイトの開設
小児・若年がん患者と患者家族・医療関係者への情報提供を目的として、各専門領域の医師が分担して原稿を作成した。
(3)がん拠点病院における生殖医療連携のモデル作り
国立がん研究センター中央病院と近隣の生殖医療機関との生殖医療連携のモデル作りに取り組んだ。
2、小児・若年がん患者の妊孕性に関するエビデンスの形成
(1)CCSの性腺機能と妊孕性に関する実態調査
①日本小児内分泌学会理事・評議員対象アンケート調査
日本小児内分泌学会の理事と評議員178名(男性139名、女性39名)を対象に、「小児・若年がん患者に対する生殖医療に関するアンケート調査」を小児内分泌学会CCS委員会と協力して実施した。回答率は84.8%(178名中151名)と高く、小児内分泌医の高い関心がうかがえた。自由記載欄にも多くの医師が意見を記載し、医師の連携体制が必要という意見が最も多く寄せられた。看護師やカウンセラーなど多職種との連携が必要との意見もあり、医療界への広い啓蒙が必要と考えられた。
②CCS女性を対象とした性腺機能・妊孕性に関する多施設前向きコホート研究
研究計画書と調査票を作成して研究代表者の所属する大阪大学医学部附属病院倫理委員会へ申請し、承認され次第分担研究者の施設でも申請して調査開始する予定である。
③CCS自身へのアンケート調査
患者団体「Stand Up!」の会員を対象に「若年Cancer Survivorの方に対するアンケート調査」を配布した。
④CCSの妊娠・出産の実態調査
国立成育医療研究センター周産期・母性診療センターで2003年から2013年の間に妊娠12週以降管理を行ったCCSについて実態調査をおこなった。放射線照射後はイレウスや骨盤変形という一般的に妊娠との関連が指摘されることの多くないリスクを有することが判明した。
⑤がん患者の妊孕性に対する医師の意識調査
がん治療に伴う妊孕性に関する一般向け相談窓口のモデル作成に向けて、医師を対象にインターネットを用いた質問紙調査、横断観察的研究を実施した。
(2)若年早期乳癌患者に対する生殖技術の安全性および治療後の妊孕性に関するデータベース構築に関するパイロット研究
乳癌患者における生殖医療の安全性を検証するために、若年乳がん患者における生殖医療データベース構築の実行可能性やその規模の検討を目的としたパイロット研究を計画した。
(3)若年がん患者の妊孕性温存を目的とした未熟精巣組織凍結保存法の確立に関する研究
精子形成が始まっていない幼若精巣組織を凍結保存し、融解後の器官培養にて効率よく精子を誘導できるような幼若精巣組織凍結法の確立をめざした研究をおこなった。
(1)生殖医療ネットワークの形成
様々な専門領域の医師からなる研究班を構成し、若年がん患者の妊孕性温存を目的として形成された生殖医療ネットワークである日本がん・生殖医療研究会とも連携し、小児がんに限らずがん種を超えたネットワークとしての成熟をめざした。「がんと生殖に関するシンポジウム2015~小児・若年がん患者さんの妊孕性温存について考える~」を開催して多職種による情報交換を行った。
(2)ポータルサイトの開設
小児・若年がん患者と患者家族・医療関係者への情報提供を目的として、各専門領域の医師が分担して原稿を作成した。
(3)がん拠点病院における生殖医療連携のモデル作り
国立がん研究センター中央病院と近隣の生殖医療機関との生殖医療連携のモデル作りに取り組んだ。
2、小児・若年がん患者の妊孕性に関するエビデンスの形成
(1)CCSの性腺機能と妊孕性に関する実態調査
①日本小児内分泌学会理事・評議員対象アンケート調査
日本小児内分泌学会の理事と評議員178名(男性139名、女性39名)を対象に、「小児・若年がん患者に対する生殖医療に関するアンケート調査」を小児内分泌学会CCS委員会と協力して実施した。回答率は84.8%(178名中151名)と高く、小児内分泌医の高い関心がうかがえた。自由記載欄にも多くの医師が意見を記載し、医師の連携体制が必要という意見が最も多く寄せられた。看護師やカウンセラーなど多職種との連携が必要との意見もあり、医療界への広い啓蒙が必要と考えられた。
②CCS女性を対象とした性腺機能・妊孕性に関する多施設前向きコホート研究
研究計画書と調査票を作成して研究代表者の所属する大阪大学医学部附属病院倫理委員会へ申請し、承認され次第分担研究者の施設でも申請して調査開始する予定である。
③CCS自身へのアンケート調査
患者団体「Stand Up!」の会員を対象に「若年Cancer Survivorの方に対するアンケート調査」を配布した。
④CCSの妊娠・出産の実態調査
国立成育医療研究センター周産期・母性診療センターで2003年から2013年の間に妊娠12週以降管理を行ったCCSについて実態調査をおこなった。放射線照射後はイレウスや骨盤変形という一般的に妊娠との関連が指摘されることの多くないリスクを有することが判明した。
⑤がん患者の妊孕性に対する医師の意識調査
がん治療に伴う妊孕性に関する一般向け相談窓口のモデル作成に向けて、医師を対象にインターネットを用いた質問紙調査、横断観察的研究を実施した。
(2)若年早期乳癌患者に対する生殖技術の安全性および治療後の妊孕性に関するデータベース構築に関するパイロット研究
乳癌患者における生殖医療の安全性を検証するために、若年乳がん患者における生殖医療データベース構築の実行可能性やその規模の検討を目的としたパイロット研究を計画した。
(3)若年がん患者の妊孕性温存を目的とした未熟精巣組織凍結保存法の確立に関する研究
精子形成が始まっていない幼若精巣組織を凍結保存し、融解後の器官培養にて効率よく精子を誘導できるような幼若精巣組織凍結法の確立をめざした研究をおこなった。
結論
本邦で初めて診療科と施設を越えた小児・若年がん患者の妊孕性温存に向けた取り組みを開始した。がんの治療は「救命」することが最優先であるが、長期予後が改善した現在、治療後のQOL向上を視野に入れた治療戦略が求められている。小児・若年がん患者においてがん診療と妊孕性温存の両立をめざす「がん・生殖医療(Oncofertility)」の発展のために、診療科の枠を越えた取り組みと医療界への啓発が必要である。
公開日・更新日
公開日
2015-09-07
更新日
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