都道府県がん登録データの全国集計と既存がん統計の資料の活用によるがん及びがん診療動向把握の研究

文献情報

文献番号
201411013A
報告書区分
総括
研究課題名
都道府県がん登録データの全国集計と既存がん統計の資料の活用によるがん及びがん診療動向把握の研究
課題番号
H26-がん政策-一般-013
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
松田 智大(独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センター がん統計研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 伊藤秀美(愛知県がんセンター研究所疫学・予防部)
  • 小笹晃太郎(公益財団法人放射線影響研究所疫学部)
  • 大木いずみ(栃木県立がんセンター研究所・疫学研究室)
  • 井岡亜希子(地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立成人病センターがん予防情報センター企画調査課)
  • 西野善一(地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター研究所がん疫学・予防研究部)
  • 加茂憲一(札幌医科大学医療人育成センター)
  • 伊藤ゆり(地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立成人病センターがん予防情報センター疫学予防課)
  • 柴田亜希子(独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センター がん統計研究部 )
  • 片野田耕太(独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センター がん統計研究部 )
  • 斎藤博(独立行政法人国立がん研究センターがん予防・検診研究センター検診研究部)
  • 雑賀公美子(独立行政法人国立がん研究センターがん予防・検診研究センター検診研究部)
  • 堀芽久美(独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センター がん統計研究部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
8,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
詳細な精度管理方法とデータ分析手法を突き詰め、がん登録データと既存の大規模データを併用したがんの実態把握方法の確立を目指す。これらが可能とする詳細ながん診療実態把握により、今後求められる、都道府県がん登録と全国がん登録体制との連動を、正しい方向で実現することを目的とする。
研究方法
都道府県がん登録における「目標と基準」を改訂し、「新精度管理基準」を策定する。第3次対がん研究班(代表:祖父江友孝)より全国がん罹患モニタリング集計(MCIJ)を引き継ぎ、2011年の罹患数・率を推計する。都道府県がん登録作業の更なる標準化や効率化、作業精度の向上、がん対策への活用方法、及び将来の全国がん登録と都道府県がん登録の連携を検討する。都道府県がん登録データと院内がん登録データの特性を比較する。がん診療連携拠点病院(以下、拠点病院)、県指定拠点病院、その他医療機関別に、機関内の院内がん登録体制や、受療患者特性を県別に把握する。がん関連公的統計として入手可能ながん診療情報を整理し、将来のリンケージを想定した研究方法を提案する。人口動態死亡統計や地域がん登録データがどのようにがん対策推進計画に活用されているかを把握する。全国がん登録体制においてのがん登録データと検診データの照合による精度管理を見据え、国、都道府県、市町村の役割を整理し、がん検診情報整備のあり方を検討する。がん対策の効果的な企画立案・評価に資するがん罹患・死亡・生存率の表現方法、がん患者や一般国民にとって理解しやすい形式を検討する。最新の統計手法を用いて、国や都道府県のがん対策に活用され、がん患者や一般国民が医療の選択をする際に役立つ統計値を算出する。
結果と考察
全国がん登録体制開始前の3年間における、都道府県がん登録精度管理目標値を検討し、MCIJ2011に適用した。40地域から罹患データを収集し、従来より高い精度を求める新基準を満たした14登録に基づき、2011年の全国がん罹患数・率を推計した。全国がん罹患数推計値は男女計で85.2万人であった。地域がん登録データと院内がん登録データの特性を把握し、拠点病院登録割合を観察した。栃木県における調査において、院内がん登録全国集計に基づく拠点病院登録割合は74.1%、地域がん登録に基づく拠点病院登録割合は59.8%であった。MCIJ2010の全国がん罹患数・率推計に使われている28地域の地域がん登録データと院内がん登録2010全国集計における自施設初回治療数から、拠点病院へのがん医療の集約化を評価した。各地域での集約化の傾向に共通性があることが示唆された。がん患者の生存率における社会経済格差の研究方法について手順をまとめた。大阪府がん登録資料を用いた分析では、1年生存率より5年生存率やサバイバー生存率における格差が大きい傾向にあった。全県で同様の分析を行うことで、地域におけるがん医療の均てん化の推進や健康格差の縮小に向けた対策を検討することが可能である。愛知県において地域がん登録と国民健康保険団体連合会の保有する医療費データを照合し、分析・評価する計画を策定した。第二期都道府県がん対策推進計画における、人口動態死亡統計や地域がん登録データの活用状況を把握した。罹患、生存率、進行度の記述は、第一期計画と比べて大幅に増加したが、推移の記述は少なかった。市区町村のがん検診事業評価のための検診データとがん登録データの照合について、がん登録推進法に基づく実現可能性を、検診の実施体制のパターン別に検討した。検診実施機関や医師会等において検診の精度管理が確実でなければ、実施が難しいことが明らかとなった。地域がん登録未実施県を含めた、47都道府県の2010年がん罹患数を推計した。モデルにおける拠点病院カバー率の調整による推計精度改善の可能性が示唆された。全国がん罹患数における過小評価を定量的に推定した。MCIJ2008の全国推計で利用された25地域のデータを用いた結果、全体で13%の過小評価を示唆する結果を得た。
結論
第3次対がん10か年総合戦略事業を引き継いで、現行の地域がん登録から、来年より開始される全国がん登録への移行に関して、様々な要因を考慮した提案をすることが出来た。都道府県がん登録と院内がん登録との連携強化と、既存の大規模がん統計資料との併用による詳細ながん診療実態把握の方法論を提示した。がん登録推進法第19条で想定されている、市町村によるがん検診の精度管理も、各県に合わせた現実的な方法を示すことが出来た。がん統計手法は、ニーズにあわせ、最新の方法を適用し、社会に還元する必要があり、継続した検討を要する。

公開日・更新日

公開日
2015-09-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201411013Z