東日本大震災被災地の小児保健に関する調査研究

文献情報

文献番号
201410022A
報告書区分
総括
研究課題名
東日本大震災被災地の小児保健に関する調査研究
課題番号
H24-次世代-指定(復興)-007
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
呉 繁夫(東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 千田 勝一(岩手医科大学 小児科学)
  • 細矢 光亮(福島県立医科大学 小児科学)
  • 山縣 然太朗(山梨大学大学院総合研究部医学域 社会医学)
  • 栗山 進一(東北大学災害科学国際研究所 疫学)
  • 奥山 眞紀子(国立研究開発法人国立成育医療研究センター病院 小児精神医学)
  • 増子 博文(福島県立医科大学 神経精神医学講座)
  • 八木 淳子(岩手医科大学 神経精神科学講座)
  • 藤原 武男(国立研究開発法人国立成育医療研究センター社会医学研究部 疫学)
  • 菅原 準一(東北大学 東北メディカル・メガバンク機構)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
115,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成23年3月11日に発生した東日本大震災は、その規模、死者・行方不明者の数など、あらゆる観点からみても、近代日本が経験したことがない激甚災害であった。災害時の小児保健医療と産科医療の課題を把握するために、被災地における母子の健康状態を体と心の両面から、経時的、多面的、かつ統一的視点で、広域を対象に調査・分析する事を目的とする。更に、被災地の母子保健医療の課題を把握するために、被災地の小児科や産科医療機関の調査を行い、災害時の課題や復旧状況を把握する事を目的とする。これらの目的のために、①被災地の子どもの発育状況等に関する調査研究、②被災地の子どもと親のメンタルヘルスに関する調査研究、③被災した医療機関や妊産褥婦への震災時の対応に関する調査研究、の三つの研究を実施する。

 
研究方法
①被災地の子どもの発育状況等に関する調査研究
被災3県を含む、自治体の乳幼児健診データ、保育園の検診データ、を収集・分析し、被災地の子供の発育状況の評価や必要な小児保健的介入等について検討する。平成27年度はこれまでの収集した自治体検診データ、および保育所検診データの収集、エスカレーション、データ固定を実施した。
②被災地の子どもと親のメンタルヘルスに関する調査研究
震災時に保育園に在籍していた子ども達を対象に、岩手、宮城、福島の被災児および三重の対照群となる子ども達とその親および保育士に被災の状況(暴露状況)とメンタルヘルスに関する面接調査・質問紙調査を行った(合計178組)。
③被災した医療機関や妊産褥婦への震災時の対応に関する調査研究
平成26年度までに収集した聞き取り調査の結果について災害時の母子保健・周産期医療の課題を検討する。地域の周産期医療協議会などを活用して、産科災害医療-保健ネットワーク基盤形成を行う。
結果と考察
①被災地の子どもの発育状況等に関する調査研究
岩手県の30自治体から8,688人、宮城県の17自治体から5,122人、福島県の31自治体から10,189人分、対照地として山形県の21自治体と鹿児島県川内市から4,284人分の児童検診データを収集・データ固定を行った。また、保育所調査では平成18年度生まれのこどもにおいて、震災後の過体重の子ども割合を検討した結果、被災3県の子どもは、対照県の子どもに比べ過体重の割合が有意に高値であった。また、個人レベルで被災体験と有病の関連を検討した結果、津波を経験した男児におけるアトピー性皮膚炎、津波を経験した女児の喘息の有病率が有意に高かった。
②被災地の子どもと親のメンタルヘルスに関する調査研究
震災3年後の平成25年度の調査結果を分析し、内向的問題行動を持つ子どもの割合が18.2%、外交的問題行動の割合が13.1%、総合的問題行動が16.5%で、1年前の同調査に比べ約10%の減少が認められた。震災から3年が経過した時点で、PTSD症状を持つ子どもの割合は17.4%であり、1年前の調査結果の15.2%と有意差はなかった。
③被災した医療機関や妊産褥婦への震災時の対応に関する調査研究
被災弱者である妊産婦への情報伝達方法、および各機関で得られた妊産婦情報の共有についての多角的な調査の結果、産科領域に特化した災害時対応の具体的整備状況には、全国的に大きな地域差があることが明らかになった。
結論
以上の調査・分析により、過体重のこども、アレルギー疾患を有するこども、問題行動をもつ子ども、PTSDをもつ子ども、の各割合に関して被災地域では非被災地と比べ、有意の差を認め、これらの対策が必要である。また、災害時の妊産婦、母子への情報提供マニュアル、平時・災害時の情報共有ネットワークを地域性を考慮した新たな形を模索する必要がある。

公開日・更新日

公開日
2015-06-23
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201410022Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
140,000,000円
(2)補助金確定額
135,397,000円
差引額 [(1)-(2)]
4,603,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 9,023,937円
人件費・謝金 62,243,426円
旅費 12,534,307円
その他 26,596,079円
間接経費 25,000,000円
合計 135,397,749円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2016-07-21
更新日
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