京都大学臨床研究ハイウェイを活用した難治疾患・がん等の新規治療法の開発

文献情報

文献番号
201409054A
報告書区分
総括
研究課題名
京都大学臨床研究ハイウェイを活用した難治疾患・がん等の新規治療法の開発
研究課題名(英字)
-
課題番号
H24-実用化(国際)-指定-003
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
三嶋 理晃(国立大学法人京都大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 萩原 正敏(国立大学法人京都大学 医学研究科 形態形成機構学)
  • 喜井 勲(国立大学法人京都大学 医学研究科 形態形成機構学)
  • 高橋 良輔(国立大学法人京都大学 医学研究科 神経内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【補助金】 医療技術実用化総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
69,232,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究は、筋ジストロフィーに対する治療薬及びダウン症患者に好発するアルツハイマー病等の精神疾患に対する治療薬の創出を目的とする。
研究方法
【筋ジストロフィー】
 Duchenne型筋ジストロフィー(DMD)は、ジストロフィン遺伝子の異常により、骨格筋でジストロフィンが欠損することで発症する極めて重篤な遺伝病である。現在、DMDに対する有効な治療法はなく、エクソンスキッピング誘導治療の開発等が試みられている。我々は、エクソンスキッピングを誘導する低分子化合物(Clk阻害剤TG003)を世界で初めて発見した。本研究では、見出すことに成功した開発候補化合物を用いて製剤規格化、非臨床GLP試験、GMP製剤化を行った後、医師主導の臨床治験や臨床研究におけるPOCの取得を目指す。
【ダウン症患者におけるアルツハイマー病等の精神疾患】
 ダウン症候群は、母体の出産年齢が35歳以上で約400人に1人と高い割合で発症する染色体異常疾患である。ダウン症患者の脳内ではリン酸化酵素DYRK1Aの発現が亢進しており、開発候補化合物はそのDYRK1Aを標的とする。DYRK1Aの活性はアルツハイマー病発症の原因として有望視されているタウ蛋白質の異常リン酸化を誘導すると示唆されていることから、ダウン症候群の精神・神経疾患発症の原因である可能性が高く、その活性を阻害することで治療や予防が可能になると期待できる。本研究では、1~2年目にモデルマウスにおいて、バイオマーカーを用いた薬効評価を実施。2~4年目にはin vivo行動薬理評価、毒性試験・安全性薬理試験・薬効薬理試験・薬物動態試験・製剤化を検討する。4年目以降にGMP合成をすすめ、5年目以降に医師主導治験あるいは臨床研究に取り組む。また、開発資金を得るために、製薬企業への導出を目指す。
結果と考察
【筋ジストロフィー】
 毒性試験や安全性薬理試験を行うために経口投与可能な候補化合物の大量合成検討を実施した。また、TG003とは別の選択的スプライシング介入化合物RECTASを発見し(Proc Natl Acad Sci U S A. 2015;112:2764)、より多くの患者を治療できる可能性を見出した。
【ダウン症患者におけるアルツハイマー病等の精神疾患】
 様々な精神疾患モデル動物を用いた薬効評価を進め、アルツハイマー病モデル以外に、うつ病モデルにおいて治療効果を有することを見出した。一方で、ダウン症患者におけるアルツハイマー病の診断基準が定まっていないこと、認知機能とは異なる新規のエンドポイントを開発してPOC試験を組む必要があることが明らかとなり、一般のアルツハイマー病での治験は莫大な費用が必要となることから、対象疾患の見直しを行うとともに製薬企業へのライセンスアウトを目指して交渉を進めた。

 平成26年度の研究結果を踏まえ、本研究は、「筋ジストロフィー」と「ダウン症患者におけるアルツハイマー病等の精神疾患」ともに順調に推進している。
 平成26年度は筋ジストロフィー治療薬候補化合物の大量合成を実施し、平成27年度における毒性試験や安全性薬理試験の実施が可能となった。臨床試験へ向けて着実に前進していると考えられる。また、新規の選択的スプライシング介入化合物RECTASの発見は、特筆すべき成果であり、臨床応用への可能性が期待できることから、さらに検討を進めるべきであると考えられる。精神疾患治療薬候補化合物についても、平成26年度は遺伝毒性試験を実施した一方で、対象疾患の可能性を探る検討や製薬企業との交渉を進めており、プロジェクトの「出口」であるライセンスアウトに向けて推進していると考えられる。
結論
 「筋ジストロフィー」と「ダウン症患者におけるアルツハイマー病等の精神疾患」ともに順調に推進しており、特に、候補化合物の大量合成検討をすすめたことで、毒性試験や安全性薬理試験を行うことが可能となった。また、新たな選択的スプライシング介入化合物を発見したことで、これまで対象外としていた患者を治療できる可能性を見出した。精神疾患治療薬の開発においては、ダウン症患者を対象とした臨床開発が困難であると判明したことから、一般のアルツハイマー病での治験を視野に入れて製薬企業へのライセンスアウト交渉を進め、同時に、うつ病などの精神疾患のモデル動物における治療効果を見出した。対象疾患の見直しを行う上で、候補化合物のin vivoにおける薬効を明らかにした点は特筆すべきであると考えられる。これら難治性疾患に対する治療薬は、世界中の人々が渇望するものであり、これら候補化合物についての迅速な研究と臨床展開を進めることには大きな意義があると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2015-07-03
更新日
-

収支報告書

文献番号
201409054Z