文献情報
文献番号
201409051A
報告書区分
総括
研究課題名
免疫難病に対する先駆的治療薬開発-生物製剤を中心とした早期臨床試験拠点の医・薬集学的整備によるFIMの実施とPOCの確立
研究課題名(英字)
-
課題番号
H23-実用化(臨床)-指定-005
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
竹内 勤(慶應義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 河上 裕(慶應義塾大学 医学部)
- 佐谷 秀行(慶應義塾大学 医学部)
- 佐藤 裕史(慶應義塾大学 医学部)
- 三宅 真二(慶應義塾大学 医学部)
- 金井 隆典(慶應義塾大学 医学部)
- 金子 祐子(慶應義塾大学 医学部)
- 佐藤 俊朗(慶應義塾大学 医学部)
- 小川 葉子(慶應義塾大学 医学部)
- 長沼 誠(慶應義塾大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【補助金】 医療技術実用化総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
90,000,000円
研究者交替、所属機関変更
・研究分担者交替
松岡克善(平成26年4月1日~平成26年9月30日)→長沼 誠(平成26年10月1日~平成27年3月31日)
研究報告書(概要版)
研究目的
悪性腫瘍や幾つかの自己免疫性疾患に著効を示してきた生物学的製剤は,なお多くの免疫難病・稀少疾患においては臨床開発に際する困難が大きい.我々は消化器内科領域,リウマチ内科領域において既存あるいは新規化合物のPOC/FIM試験を行いこうした状況を改善することを本事業の目的とし,平成26年度には各領域における候補化合物の非臨床試験の完遂,医師主導型治験・企業主導治験・医師主導型臨床試験を進めることを目的とした.
研究方法
(1)消化器内科領域:①これまでに成功した腸管上皮幹細胞培養技術の開発と,ヒト細胞への応用を踏まえて,大動物(ブタ)を用いた内視鏡的な培養腸管上皮細胞の移植技術の開発を目的として,内視鏡的に腸管上皮粘膜を採取し,培養,レンチウィルスを用いたGFP可視化を行う.さらに線維芽細胞の培養法を確立し,共に内視鏡的に投与する.腸管上皮細胞の臨床グレードでの培養法確立のため,動物由来成分を含むマトリジェルの代替物のスクリーニングとWnt蛋白の活性化を試み,FIH試験への準備を進める.
(2)リウマチ内科領域:稀少疾患である成人スティル病に対する抗インターロイキン(IL)-6受容体抗体・トシリズマブの医師主導型治験(POC試験)を行い,同薬の有効性安全性を検証して,薬事承認を目指す. 対面助言を経て治験届を提出し,円滑かつ安全裡に組入れの進捗を図る.また,二重盲検試験で有効性が得られた患者を長期試験へ移行することを計画して,長期試験のプロトコールの作成と試験準備を進める.
(3)先端医科学研究領域:マウス慢性GVHDモデルを用いて、既存薬スクリーニングによって取得した薬剤(トラニラスト)の抗炎症・抗線維化効果を,GVHD動物モデルを用いて、薬物動態(PK)や薬効(PD)や副作用から検討する(レシピエントにおける涙液産生能、涙腺組織における病理組織像、線維化マーカーの発現について).トラニラストのin vivoでの抗炎症効果、線維化抑制効果、抗上皮間葉転換(EMT;epithelial-mesenchymal transition)効果および適切な投与量と投与期間、投与方法を定め, GVHD標的臓器の炎症の指標には免疫細胞浸潤やサイトカイン等の評価、線維化の指標には組織切片における単位面積あたりの線維化部位を用いる。これらの非臨床試験の結果を踏まえて臨床試験のプロトコールを完成し,倫理委員会の承認を得,トラニラストを用いた医師主導型臨床研究を開始する。
(2)リウマチ内科領域:稀少疾患である成人スティル病に対する抗インターロイキン(IL)-6受容体抗体・トシリズマブの医師主導型治験(POC試験)を行い,同薬の有効性安全性を検証して,薬事承認を目指す. 対面助言を経て治験届を提出し,円滑かつ安全裡に組入れの進捗を図る.また,二重盲検試験で有効性が得られた患者を長期試験へ移行することを計画して,長期試験のプロトコールの作成と試験準備を進める.
(3)先端医科学研究領域:マウス慢性GVHDモデルを用いて、既存薬スクリーニングによって取得した薬剤(トラニラスト)の抗炎症・抗線維化効果を,GVHD動物モデルを用いて、薬物動態(PK)や薬効(PD)や副作用から検討する(レシピエントにおける涙液産生能、涙腺組織における病理組織像、線維化マーカーの発現について).トラニラストのin vivoでの抗炎症効果、線維化抑制効果、抗上皮間葉転換(EMT;epithelial-mesenchymal transition)効果および適切な投与量と投与期間、投与方法を定め, GVHD標的臓器の炎症の指標には免疫細胞浸潤やサイトカイン等の評価、線維化の指標には組織切片における単位面積あたりの線維化部位を用いる。これらの非臨床試験の結果を踏まえて臨床試験のプロトコールを完成し,倫理委員会の承認を得,トラニラストを用いた医師主導型臨床研究を開始する。
結果と考察
各領域で定めた上記の候補化合物について,各々適宜医薬品医療機器総合機構の薬事戦略相談や対面助言で助言を得,プロトコールを確定した上で,各対象疾患における臨床試験の進捗と,非臨床試験の完遂を円滑に進めていった.概要は以下のとおりである.
1)消化器内科領域:潰瘍性大腸炎モデル動物において,内視鏡を用いた腸管上皮幹細胞の移植に関する非臨床試験に成功し,FIH試験への準備を進めた.また,クローン病患者におけるFirst in Patient (FIP)の第1/2相試験の進捗に注力した.
2)リウマチ内科領域:成人スティル病に対するトシリズマブの医師主導型治験を準備し,機構相談を経て2014年1月に治験届を提出し治験を開始し、2015年3月までに13名のスクリーニング、7名の登録・治験薬投与を行なった.長期試験の計画・準備を並行して進めた.
3)。先端医科学研究領域:トラニラスト経口投与により骨髄移植によるドナー細胞の生着が阻害されず生着することを骨髄移植後トラニラスト投与群と日トラニラスト投与群の末梢血により明らかにした.移植後21日目のGVHD発症時にはトラニラスト投与群ではPBS投与群に比しCD4陽性T細胞の増殖が抑制される傾向が認められた。以上の非臨床試験の結果を解析し,これを踏まえて医師主導臨床研究のプロトコール作成および倫理委員会承認、UNIM 登録、臨床研究保険加入を進めて,医師主導型臨床研究(POC試験)を開始した。
1)消化器内科領域:潰瘍性大腸炎モデル動物において,内視鏡を用いた腸管上皮幹細胞の移植に関する非臨床試験に成功し,FIH試験への準備を進めた.また,クローン病患者におけるFirst in Patient (FIP)の第1/2相試験の進捗に注力した.
2)リウマチ内科領域:成人スティル病に対するトシリズマブの医師主導型治験を準備し,機構相談を経て2014年1月に治験届を提出し治験を開始し、2015年3月までに13名のスクリーニング、7名の登録・治験薬投与を行なった.長期試験の計画・準備を並行して進めた.
3)。先端医科学研究領域:トラニラスト経口投与により骨髄移植によるドナー細胞の生着が阻害されず生着することを骨髄移植後トラニラスト投与群と日トラニラスト投与群の末梢血により明らかにした.移植後21日目のGVHD発症時にはトラニラスト投与群ではPBS投与群に比しCD4陽性T細胞の増殖が抑制される傾向が認められた。以上の非臨床試験の結果を解析し,これを踏まえて医師主導臨床研究のプロトコール作成および倫理委員会承認、UNIM 登録、臨床研究保険加入を進めて,医師主導型臨床研究(POC試験)を開始した。
結論
2014年8月に発足した臨床研究推進センターでは,TR部門を新設し,知財管理や産学連携に関する支援機能をも拡充している.上記各領域で開始した早期・探索的臨床試験(医師主導型治験)を予定通り進捗させるとともに,導出を含めた出口戦略の策定を進めて本事業最終年度における各計画の完遂を目指すにあたっては,センターのこれらの機能を最大限活用して円滑に運営を進める必要がある.免疫難病に特化した早期・探索的臨床試験拠点整備事業を通じて蓄積された研究開発の知識・技術は,同センターで一括管理する学内外の多領域のseedsの今後の開発推進に対しても十分応用できるものと期待される.
公開日・更新日
公開日
2015-06-01
更新日
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