臨床研究・治験のIT化推進のための実施プラン策定に関する研究

文献情報

文献番号
201409042A
報告書区分
総括
研究課題名
臨床研究・治験のIT化推進のための実施プラン策定に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H25-医療技術-指定-016
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
松村 泰志(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 楠岡 英雄(国立病院機構 大阪医療センター)
  • 横井 英人(香川大学医学部附属病院)
  • 紀ノ定 保臣(岐阜大学大学院医学系研究科)
  • 三原 直樹(大阪大学医学部附属病院)
  • 山口 光峰(医薬品医用機器総合機構)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【補助金】 医療技術実用化総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
15,390,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者交替 桑田成規(平成26年4月1日~26年12月17日)→氏名(平成26年12月18日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
ITを活用することで臨床研究・治験をより効率化し、信頼性を高める方法が求められている。以下の4つの課題について目標を定め検討した。
1)患者数調査のためのデータベースの構築:治験ネットワークの被験者リクルートの支援のために、各医療施設で診療している各疾患の患者数を統一の方法で求め、施設間で比較可能とする方法を提示する。
2)治験審査資料の電子化による治験審査の効率化:治験審査資料の電子化の現状を調査し、治験事務局業務を効率化させるための課題を明確にする。
3)病院情報システムとEDCの連動による症例報告書作成とデータ収集の支援:電子カルテシステムへの入力データを引用して電子症例報告書を作成し、データセンターのEDC/CDMSに送付するシステムをめざし、その機能要件をまとめる。
4)リモートSDVによるモニター業務の効率化: 一般に普及可能なリモートSDVの仕組みを考案し、その実現性を検証するとともに運用上の留意点をまとめる。
研究方法
1)患者数調査のためのデータベースの構築:レセプトの病名データ、DPCのEFファイルの投薬データを用い、薬剤から治療対象病名を推定する方法を検討した。細分類病名まで推定可能とするなど、昨年度の処理方法を精緻化し、大阪大学医学部附属病院のデータに適用し、51人の患者についてカルテレビューにより評価した。
2)治験審査資料の電子化による治験審査の効率化:医療機関における治験関連文書の電子化の状況をアンケートにより調査した。
3)病院情報システムとEDCの連動による症例報告書作成とデータ収集の支援:具体的な機能要件をまとめた。
4)リモートSDVによるモニター業務の効率化:通信回線を使い医療機関の電子カルテを遠隔から閲覧させる方式でシステムを構築し、実現可能性を検証した。
結果と考察
1)患者数調査のためのデータベースの構築: 51人の患者について161件(1人平均3.2件)の病名が推定され、うち正しい推定が108件(67.1%)、妥当な推定が37件(23.0%)、不適な推定が16件(9.9%)であった。本法は、DPCを適用するどの施設でも利用できる。また、サンプル病院においてデータウェアハウスを利用して被験者条件に合致する患者数を割り出し、本法の患者数との比から全体の被験者候補者数を推定できる。
2)治験審査資料の電子化による治験審査の効率化: 145施設から回答を得、約6割の施設が治験関連文書の電子化に取り組んでいること、授受を電子的に行っている施設は多いのに対し、保存又はIRB委員への配布資料についての電子化は進んでいない状況であった。電子化による効果は、施設により大きな隔たりがあった。また、電子化に着手している施設の半数以上が標準手順書を作成していないなどの課題が明確になった。
3)病院情報システムとEDCの連動による症例報告書作成とデータ収集の支援:電子カルテシステムへの入力データを引用して症例報告書を作成しデータセンターに送付するCRFレポータシステムの機能要件をまとめた。また、CRFレポータと電子カルテシステムとのインターフェイス仕様の詳細をまとめ、プログラムを開発し、実現可能性を確認した。更に、CRFレポータとEDC/CDMSとの通信方式をまとめ、大阪医療センターと大阪大学間でODM通信の実証実験を行い検証した。
4)リモートSDVによるモニター業務の効率化:医療機関の電子カルテを通信回線で遠隔から閲覧させる方式でリモートSDVのシステムを構築した。提案モデルでは、ハブセンターを設置し、モニター側施設、医療機関のそれぞれがハブセンターにVPNネットワークを接続し、コネクションブローカで各依頼者施設と各医療機関を接続し、リモートデスクトップ、或はクライアント環境仮想サーバにより医療機関の電子カルテ画面を閲覧可能とする。本モデルの実現が可能であることを確認し、運用上の留意事項をまとめた。本法によりモニタリングのコストを大きく低減できると考えられる。
結論
ITを活用することで臨床研究・治験を効率化し、信頼性を高める方法を検討した。医事データを用い、薬剤から病名の推定ロジックを組み込むことで、90%の精度で施設の患者数を推定可能であり、被験者数の把握に有効であることを示した。治験審査資料の電子化は進んでいるが、部分的であり、治験事務局業務の効率化を実感している施設は少ない実態が明らかとなった。電子カルテシステムへの入力データを引用して電子症例報告書を作成し、データセンターのEDC/CDMSに送付するシステムの技術的目途が立った。リモートSDVの実現方法として、複数医療機関、複数依頼者施設をVPNネットワークでハブセンターを介して繋ぎ、各医療機関の電子カルテを遠隔から閲覧させる方式が比較的安価に実現可能であることを示した。

公開日・更新日

公開日
2015-06-16
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-10-21
更新日
-

収支報告書

文献番号
201409042Z