文献情報
文献番号
201409025A
報告書区分
総括
研究課題名
ラジオ波焼灼システムを用いた腹腔鏡補助下肝切除術の多施設共同試験
研究課題名(英字)
-
課題番号
H24-被災地域-指定-010
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
若林 剛(岩手医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 金子 弘真 (東邦大学 医学部 )
- 前原 喜彦(九州大学 医学部 )
- 上本 伸二 (京都大学 医学部 )
- 宮川 眞一 (信州大学 医学部)
- 内山 和久 (大阪医科大学 医学部 )
- 馬場 秀夫 (熊本大学 医学部 )
- 北川 雄光 (慶応義塾大学 医学部 )
- 守瀬 善一 (藤田保健衛生大学 医学部 )
- 竹吉 泉 (群馬大学 医学部 )
- 久保 正二 (大阪市立大学 医学部 )
- 永野 浩昭(大阪大学 医学部 )
- 新田 浩幸(岩手医科大学 医学部 )
- 西塚 哲 (岩手医科大学 医学部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【補助金】 医療技術実用化総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
6,260,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、肝癌および肝良性疾患に対する腹腔鏡補助下肝切術(先進医療B)の安全性と有効性を多施設共同試験で評価することにある。
我々は、肝の授動を腹腔鏡下で、ラジオ波で肝実質の表層を熱凝固したのちの肝切離操作を腹腔鏡補助下(小開腹下)で行う独自の手法により、2002年から葉切除などの大きな肝切除を行った。高度な内視鏡手術手技を必要とせず、肝臓外科医が行いやすい術式である。2008年9月には初の高度医療として第一号認定され、肝癌および肝良性疾患に対して本術式を単施設で行ってきた。しかし、本研究を施行するにあたっては単施設で行っている現行の高度医療プロトコールでは症例数の確保が難しく、多施設での研究が必要である。本術式にはラジオ波焼灼システムを用いるが、ラジオ波による肝切離前熱凝固の出血量軽減効果は2002年に報告された。この手法に関連する合併症および死亡はなく安全性も示されているが、大規模な臨床試験の報告はない。
本術式(腹腔鏡補助下肝切除術)の小開腹創は一般的な開腹肝切除の創と比較して約1/5であり、体壁破壊の大きな軽減を図ることができる。また、過去の開腹肝切除と比較して手術時間に差はなく、有意な出血量の軽減と術後在院日数の短縮を認めた。ドナーにおける術後1年までの愁訴をみると、傷の痛みや違和感などの創部関連愁訴、食欲不振などの消化器症状が、生体肝移植ドナーに関する調査(日本肝移植研究会ドナー調査委員会,2005)での結果と比較し明らかに軽微であった。本術式は安全に施行可能であり、患者の手術侵襲を軽減する有用な術式と考えられる。
腹腔鏡補助下肝切除術の安全性と有用性を検討した多施設共同による大規模な臨床試験はない。また、ラジオ波による肝切離前熱凝固の有用性を示すことは、安全な肝切除を目指すうえで重要である。
我々は、肝の授動を腹腔鏡下で、ラジオ波で肝実質の表層を熱凝固したのちの肝切離操作を腹腔鏡補助下(小開腹下)で行う独自の手法により、2002年から葉切除などの大きな肝切除を行った。高度な内視鏡手術手技を必要とせず、肝臓外科医が行いやすい術式である。2008年9月には初の高度医療として第一号認定され、肝癌および肝良性疾患に対して本術式を単施設で行ってきた。しかし、本研究を施行するにあたっては単施設で行っている現行の高度医療プロトコールでは症例数の確保が難しく、多施設での研究が必要である。本術式にはラジオ波焼灼システムを用いるが、ラジオ波による肝切離前熱凝固の出血量軽減効果は2002年に報告された。この手法に関連する合併症および死亡はなく安全性も示されているが、大規模な臨床試験の報告はない。
本術式(腹腔鏡補助下肝切除術)の小開腹創は一般的な開腹肝切除の創と比較して約1/5であり、体壁破壊の大きな軽減を図ることができる。また、過去の開腹肝切除と比較して手術時間に差はなく、有意な出血量の軽減と術後在院日数の短縮を認めた。ドナーにおける術後1年までの愁訴をみると、傷の痛みや違和感などの創部関連愁訴、食欲不振などの消化器症状が、生体肝移植ドナーに関する調査(日本肝移植研究会ドナー調査委員会,2005)での結果と比較し明らかに軽微であった。本術式は安全に施行可能であり、患者の手術侵襲を軽減する有用な術式と考えられる。
腹腔鏡補助下肝切除術の安全性と有用性を検討した多施設共同による大規模な臨床試験はない。また、ラジオ波による肝切離前熱凝固の有用性を示すことは、安全な肝切除を目指すうえで重要である。
研究方法
本術式の対象疾患は原発性肝癌、転移性肝癌、肝良性疾患、術式は拡大葉切除、葉切除、区域切除(外側区域切除を除く)とする。耐術可能な肝予備能と全身状態を有する患者を対象とし、腫瘍径10cm以上、胆管切除またはリンパ節郭清を伴う症例、横隔膜や下大静脈への浸潤を認める症例は除外する。手術および術後早期の安全性と手術侵襲の評価項目として、術中出血量を主評価項目とし、副評価項目を手術時間、開腹移行率、合併症発生率、術後在院日数とした多施設共同試験とする。また、有効性評価項目として整容性・創部関連愁訴、QOLスコア(SF-8)についても検討する。目標症例数を80例とする。研究者とは関係のないデータセンター(東北大学病院臨床試験データセンターに依頼)をおき、データ管理を行う。平成26年までに症例の登録と解析を行い、その後結果を公表する。
結果と考察
平成27年3月31日までに57例の症例登録と手術を実施した。目標症例数であった80例には満たなかったが、57例での解析の結果、主要評価項目である術中出血量の平均値は319.5ml(範囲20-1600ml、平均値の標準誤差45.4)であり、試験治療の有効性が示唆された。副次項目である手術時間の平均値は326分、術後在院日数の平均値は15.1日、開腹移行例はなかった。重篤な術中偶発症および術後合併症はなく安全に施行できた。
57例での結果ではあるが、本術式の安全性と有効性が示唆された。本術式はエビデンスのある低侵襲手術として今後の普及が期待され、多くの肝切除に用いることができる。また、本研究により安全性が最も担保されるべきドナー肝切除への本術式の応用も期待される。これは、わが国で年間数百例行われている生体肝移植において、健常なドナーにかかる肉体的・精神的負担を大きく軽減出来ることを意味している。本術式の有用性が証明されれば、術後在院日数の短縮から医療経済にも有利であり、患者およびドナーの早期社会復帰が可能になることから、国民の保健・医療・福祉の向上を通じ社会への貢献が期待される。
57例での結果ではあるが、本術式の安全性と有効性が示唆された。本術式はエビデンスのある低侵襲手術として今後の普及が期待され、多くの肝切除に用いることができる。また、本研究により安全性が最も担保されるべきドナー肝切除への本術式の応用も期待される。これは、わが国で年間数百例行われている生体肝移植において、健常なドナーにかかる肉体的・精神的負担を大きく軽減出来ることを意味している。本術式の有用性が証明されれば、術後在院日数の短縮から医療経済にも有利であり、患者およびドナーの早期社会復帰が可能になることから、国民の保健・医療・福祉の向上を通じ社会への貢献が期待される。
結論
本結果は57例でのものであるが、解析により本術式の有効性が示唆された。
公開日・更新日
公開日
2015-10-21
更新日
-