重度嗅覚障害を呈するパーキンソン病を対象としたドネペジルの予後改善効果に関する研究

文献情報

文献番号
201409018A
報告書区分
総括
研究課題名
重度嗅覚障害を呈するパーキンソン病を対象としたドネペジルの予後改善効果に関する研究
課題番号
H24-被災地域-一般-008
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
武田 篤(独立行政法人国立病院機構仙台西多賀病院 統括診療部)
研究分担者(所属機関)
  • 森 悦朗(東北大院医学系研究科 行動神経学)
  • 久永 欣哉(独立行政法人国立病院機構 宮城病院 臨床研究部)
  • 宇川 義一(福島県立医科大学医学部医学科 神経内科学)
  • 服部 信孝(順天堂大学大学院医学研究科 神経学)
  • 村田 美穂(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター病院 神経内科学・神経薬理学)
  • 長谷川一子(独立行政法人国立病院機構相模原病院、神経内科学)
  • 祖父江 元(名古屋大学大学院医学系研究科 神経内科学)
  • 伊東 秀文(和歌山県立医科大学大学院医学研究科 神経内科学)
  • 矢部 一郎(北海道大学大学院医学研究科 神経内科学)
  • 朝比奈正人(千葉大学大学院医学研究院 総合医科学講座)
  • 飯嶋 睦(東京女子医科大学 神経内科学)
  • 織茂 智之(公立学校共済組合関東中央病院 神経内科学)
  • 大熊 泰之(順天堂大学医学部附属静岡病院 神経内科学)
  • 徳田 隆彦(京都府立医科大学 神経内科学)
  • 菅原 正伯(秋田大学医学部附属病院 神経内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【補助金】 医療技術実用化総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
41,467,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
PD認知症やレビー小体型認知症に対して抗ChE薬が有効であることは既に示されている。しかしパーキンソニズムによる運動障害が重度で、強力なドパミン補充療法を要するPD認知症では、認知症発症後に治療を開始しても、しばしば幻覚・妄想などの精神症状が出現し治療困難に陥る。一方で早期にPD認知症を的確に診断する技術は未だ確立しておらず、治療介入のタイミングは遅れる事が多い。そこで本研究では重度嗅覚障害をバイオマーカーとし、認知症発症前のPD患者にドネペジルを投与、認知症へ移行するリスクが軽減できるかどうか検証することを目的とする。ドネペジルは既にPD認知症に於いて有効性とともに安全性・忍容性に優れていることが報告されており、進行期PDでしばしば問題となる転倒リスクを軽減する事も示唆されていることから特に選択した。
研究方法
認知症のない重度嗅覚障害を呈するパーキンソン病患者を対象として、ドネペジルの治療介入に関する二重盲検比較試験を実施する。観察期間は3年とし、エントリー目標は200例とした。研究は研究代表者及び分担者の施設(中核施設)さらに研究協力施設を合わせて、最終的に全国22施設で実施する体制とした。また、臨床研究の専門支援機関である株式会社 CLINICAL STUDY SUPPORTに臨床研究全体の管理を委託し、ドネペジルの実薬(5mg)とプラセボについては開発元であるエーザイ株式会社から有償で供給を受けることとした。本研究の予定期間は、全体としては平成24年度~29年度までの5年間を計画している。初年度(1年目)は全体の実施準備を行い(例、症例報告書の作成、データ収集システムの構築、研究事務局の設置 )、実施環境が整った施設(例、倫理審査委員会の実施承認、施設における実施体制の構築)から、随時患者登録を開始した。1年間(1~2年目)の患者登録の後、3年間(1~4年目)の追跡を実施する計画である。最終年度(5年目)にはデータ解析を実施し、結果の評価及び考察を行い、研究報告書を作成する予定である。
結果と考察
平成26年4月末までに目標を超える204例のエントリーを完了した。現在までにエンドポイントへの到達例が1例、脱落例が33例報告されており、170例について研究を継続中である。これまでの有害事象発生例数は115件(62例)であり、内8件について重篤な有害事象と報告されたが、そのうち試験薬との関連が有りまたは不明とされた3件についてはいずれも試験薬の中止により回復しており、他は試験薬とは関連なしと判断された。現在残りの170例について継続して経過を観察中である。
結論
現在までのところエンドポイント到達例は未だ一例のみであり、キーオープンもされていないため認知症発症に対する介入効果の有無は明らかではないが、現時点で試験薬と関連が有り回復不能であった重篤な有害事象は報告されておらず、少なくとも重度嗅覚障害を呈するパーキンソン病患者に対してドネペジル5mgは安全に投与できることが示唆された。

公開日・更新日

公開日
2015-06-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2016-01-28
更新日
-

収支報告書

文献番号
201409018Z