文献情報
文献番号
201409009A
報告書区分
総括
研究課題名
デュシェンヌ型筋ジストロフィーに対するエクソン53スキップ治療薬による早期探索的臨床試験
課題番号
H24-臨研推-一般-010
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
武田 伸一(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター トランスレーショナル・メディカルセンター)
研究分担者(所属機関)
- 永田 哲也(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 遺伝子疾患治療研究部)
- 小牧 宏文(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 病院 小児神経診療部)
- 中村 治雅(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター トランスレーショナル・メディカルセンター 臨床研究支援部 臨床研究支援室)
- 村田 美穂(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 病院 神経内科診療部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【補助金】 医療技術実用化総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
Duchenne型筋ジストロフィー(DMD)に対して、アンチセンス核酸を用いたエクソン・スキップ医薬品の開発が進行している。特にエクソン51スキップ薬の開発が先行しているが、DMDの変異形式は多様なため、その対象患者の割合は全体の13%に留まる。我々はこのような状況を鑑み、次いで対象患者数が多いとされるエクソン53を対象とした治療薬の開発に着手した。日本新薬株式会社との共同研究を経て有効な配列を決定し、平成25年に医師主導治験を開始したところである。本研究は平成24年度に採択されており、3年目となる平成26年度は進行中の医師主導治験を継続し、同年度内に全ての被験者への投与を終了することを目標とした。また本研究は当該試験の円滑な推進を図るとともに、核酸医薬品等の新規医薬品、及びDMDなど希少疾病医薬品の開発に共通する課題について検討することも目的とする。
研究方法
実施中の臨床試験「デュシェンヌ型筋ジストロフィー患者を対象としたNS-065 /NCNP-01の早期探索的臨床試験」はGCP準拠で計画され、国立精神・神経医療研究センター治験審査委員会の承認を受け、医薬品医療機器総合機構に対する治験届出を行い実施されている。試験のプロトコールについては大学病院医療情報ネットワーク(UMIN)、及び米国国立医学図書館の clinicaltrials.gov に登録し、それぞれ UMIN000010964、 NCT02081625 として公開されている。
結果と考察
1. 早期探索的臨床試験の継続実施
本試験は平成25年6月に被験者組み入れを開始した。組み入れ予定の10名については同年7月より適格性スクリーニング検査を開始、同年10月よりコホート1の第1例目に対する投与を開始した。コホート移行に際しては安全性評価委員会を開催して検討を行ったが、いずれも問題となる事象は認めなかった。平成26年度内に全ての被験者に対する投与と観察を終了した。初期解析の結果、いずれの群においてもエクソン53がスキップしたジストロフィンのメッセンジャーRNAが検出され、さらに高用量群の一部の被験者においてはジストロフィンタンパクの発現が確認された。重篤な有害事象の発生はなく、投与を中止した例はなかった。一般的な有害事象としては、腎機能への軽度の影響や貧血が見られた。現在は必須文書の整理等を実施し、総括報告書の完成に向けた作業を進めている。
2. 次相試験に向けたDMD症例集積性の検討とoutcome measureに関する検討
本試験において患者レジストリーが果たした役割について検討した。今回の治験ではNCNPがすでに把握していた患者とRemudyの活用により、約2ヶ月で10名の患者を組み入れることができたが、このことは患者レジストリーを用いた症例集積性の向上は希少疾病の臨床試験において重要であることを実証した。また次相試験に向けたDMD治療薬開発における運動機能評価のあり方について検討した。現在のところその妥当性が十分に検証されたものは少なく、主要評価項目の多くは6分間歩行テストであるが、同テストの有効性について再評価が必要と認識されつつある。本邦でもoutcome measureに関する臨床研究を検討すべき時期にきており、本研究でも平成27年度よこれらの課題に取り組むことが妥当と考えられた。
3. DMD治療薬に係る規制当局の薬事動向と企業における開発動向について
2014年から2015年にかけての規制当局の動向について調査した。米国医薬食品局(FDA)や欧州医薬品庁(EMA)において、条件付き承認制度の活用や疾患自然歴を対照群とする試験デザインの採用など、疾患の重篤性や希少性を重視した柔軟な対応が取られつつあることが把握出来た。また海外主要2社の開発動向についても調査した。Prosensa社の2'-OMe製剤Drisapersenは2014年10月にはFDAへの新薬承認申請手続きの開始を発表した。Sarepta社のPMO製剤Eteplirsenは2014年に入りFDAから具体的な追加試験の指示を受け、2015年内の申請を目指すとしている。またエクソン53スキップ薬についても我々を含む3社が参入しているところであり、以上のよう状況を踏まえて今後の開発戦略を立案することが重要と考えられた。
本試験は平成25年6月に被験者組み入れを開始した。組み入れ予定の10名については同年7月より適格性スクリーニング検査を開始、同年10月よりコホート1の第1例目に対する投与を開始した。コホート移行に際しては安全性評価委員会を開催して検討を行ったが、いずれも問題となる事象は認めなかった。平成26年度内に全ての被験者に対する投与と観察を終了した。初期解析の結果、いずれの群においてもエクソン53がスキップしたジストロフィンのメッセンジャーRNAが検出され、さらに高用量群の一部の被験者においてはジストロフィンタンパクの発現が確認された。重篤な有害事象の発生はなく、投与を中止した例はなかった。一般的な有害事象としては、腎機能への軽度の影響や貧血が見られた。現在は必須文書の整理等を実施し、総括報告書の完成に向けた作業を進めている。
2. 次相試験に向けたDMD症例集積性の検討とoutcome measureに関する検討
本試験において患者レジストリーが果たした役割について検討した。今回の治験ではNCNPがすでに把握していた患者とRemudyの活用により、約2ヶ月で10名の患者を組み入れることができたが、このことは患者レジストリーを用いた症例集積性の向上は希少疾病の臨床試験において重要であることを実証した。また次相試験に向けたDMD治療薬開発における運動機能評価のあり方について検討した。現在のところその妥当性が十分に検証されたものは少なく、主要評価項目の多くは6分間歩行テストであるが、同テストの有効性について再評価が必要と認識されつつある。本邦でもoutcome measureに関する臨床研究を検討すべき時期にきており、本研究でも平成27年度よこれらの課題に取り組むことが妥当と考えられた。
3. DMD治療薬に係る規制当局の薬事動向と企業における開発動向について
2014年から2015年にかけての規制当局の動向について調査した。米国医薬食品局(FDA)や欧州医薬品庁(EMA)において、条件付き承認制度の活用や疾患自然歴を対照群とする試験デザインの採用など、疾患の重篤性や希少性を重視した柔軟な対応が取られつつあることが把握出来た。また海外主要2社の開発動向についても調査した。Prosensa社の2'-OMe製剤Drisapersenは2014年10月にはFDAへの新薬承認申請手続きの開始を発表した。Sarepta社のPMO製剤Eteplirsenは2014年に入りFDAから具体的な追加試験の指示を受け、2015年内の申請を目指すとしている。またエクソン53スキップ薬についても我々を含む3社が参入しているところであり、以上のよう状況を踏まえて今後の開発戦略を立案することが重要と考えられた。
結論
本研究課題の3年度目においてその進捗は概ね順調と考えられる。さらにNS-065/NCNP-01については有望な結果が得られたことから、次相試験の開始に向けた検討が重要であり、適切な試験デザインの構築、既存よりも優れたoutcome measureの探索、及びグローバル展開を見据えた開発戦略の立案など、本剤の承認に向けた取り組みを次年度以降は強化していくこととしている。
公開日・更新日
公開日
2016-01-28
更新日
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