進行卵巣癌・卵管癌・腹膜癌に対する腹腔内化学療法確立のための研究

文献情報

文献番号
201409006A
報告書区分
総括
研究課題名
進行卵巣癌・卵管癌・腹膜癌に対する腹腔内化学療法確立のための研究
課題番号
H24-臨研推-一般-007
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
藤原 恵一(埼玉医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 道前 洋史(北里大学 薬学部)
  • 杉山 徹(岩手医科大学 医学部)
  • 板持 広明(鳥取大学 医学部)
  • 吉川 裕之(筑波大学 医学医療系)
  • 青木 大輔(慶應義塾大学 医学部)
  • 鈴木 光明(自治医科大学 産科婦人科)
  • 青谷 恵利子(北里大学 臨床研究機構 )
  • 高野 忠夫(東北大学病院 臨床研究推進センター プロトコール作成支援部門)
  • 榎本 隆之(新潟大学 医学部)
  • 岡本 愛光(東京慈恵会医科大学 産婦人科学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【補助金】 医療技術実用化総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
50,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、癌性腹膜炎を伴った卵巣癌・腹膜原発癌・卵管癌に対して、現在標準治療法である静注(IV)パクリタキセル(パクリ)+IVカルボプラチン(カルボ)の併用療法と比べて、カルボを腹腔内(IP)投与することによって予後を改善できるかどうかを検討するものである。
研究方法
開腹手術を行い、進行期II期~IV期と診断された上皮性卵巣癌、原発性腹膜癌、卵管癌患者で、十分な臓器機能を有したものとする。
標準治療の方法
レジメン I:ddTC-iv療法,レジメン II:dd-TCip療法
有効性及び安全性の評価
Primary Endpoint: Progression-Free Survival (PFS)
Secondary Endpoint: Overall Survival (OS)、奏効率、QOL調査および医療経済評価
安全性評価は、血液毒性および非血液毒性をNCI-CTC AE Ver 4.0を用いて評価する。
すべてのデータは、北里大学臨床研究機構臨床試験コーディネーティング部門にデータセンターを置き、独立したデータ管理と統計解析を行う。本試験は、臨床研究に関する倫理指針に則り施行される。候補患者への説明は各施設の倫理委員会で承認された説明文を用い、文書で同意を得る。患者には、同意の自由、同意撤回の自由、本試験参加による利益、不利益を伝える。個人情報は適切に管理される。利益相反は各施設によって審査管理される。
結果と考察
平成26年度は、国内外からの症例登録数を増加させることに注力した。最も大きな進捗は、シンガポール国立大学との研究協力契約が締結完了し、同大学から9例症例登録がされたことである。
また、同大学と埼玉医科大学の間でトランスレーショナルプロジェクトの覚書を締結し、検体組織のやりとりが可能となるよう準備が進んでいる。
 具体的には進行卵巣癌の宿主免疫状態を明らかにする目的で、患者血清中のIL-2,IL-6,IFNγ,VEGF等のサイトカインや、末梢血中のCD8,CD4,CD14,CD56陽性細胞の比率等を解析するような実験系の立ち上げを行った。免疫染色のパネルにて腫瘍の特徴によりグループ化を行う準備もおこなった。また、同大学と本試験に関連したトランスレーショナルリサーチを共同で行うよう調整中である。これは高悪性度漿液性腺癌ではその半数に何らかのDNA相同組換え機構の機能不全があると考えられているが、この機能不全を推測し、プラチナ高感受性のバイオマーカーを確立するための研究である。現在IRBおよびMTA申請中である。
これまで行ってきた様々な努力で症例登録は進んできたが、登録数の伸びは期待よりも低かったため、平成27年2月5日プロトコルを改訂し、症例登録期間を平成28年11月に延長し、目標症例数を654例とした。

結論
 本試験は、現在世界中で行われている、三つの卵巣癌IP試験の一つである。他の試験と異なり、純粋にカルボのIP効果を検証できる試験であること、サブオプティマルな症例も対象としているユニークな試験であることから、国際的な注目度が高い。
このような医学的重要性に加えて、本試験は我が国における医療制度上の新しい試みを実践している。すなわち、新薬開発治験になじまない保険未承認の新規治療法開発を行う目的で、先進医療(旧高度医療評価制度)の下で、大規模ランダム化比較試験を遂行するためのロジスティックを構築した。多数例に対する薬剤無償提供の交渉と保管運搬、臨床試験保険の契約など、施設との「研究協力契約」締結など、医師の自主研究としては我が国初の経験であったため、準備に時間を要したが、症例登録が開始された。この経験は、今後、同様のプロジェクトを行う上で重要な情報源となると自負している。

公開日・更新日

公開日
2015-05-27
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2016-05-13
更新日
-

収支報告書

文献番号
201409006Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
65,000,000円
(2)補助金確定額
61,347,000円
差引額 [(1)-(2)]
3,653,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,468,793円
人件費・謝金 3,735,644円
旅費 3,298,514円
その他 37,844,290円
間接経費 15,000,000円
合計 61,347,241円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2016-01-28
更新日
-