文献情報
文献番号
201408008A
報告書区分
総括
研究課題名
非侵襲血中RI濃度測定を可能にするウエアラブル・サブミリ解像度PET装置の開発
課題番号
H25-医療機器-一般-001
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 浩之(東京大学 大学院工学系研究科 原子力国際専攻)
研究分担者(所属機関)
- 大野 雅史(東京大学 大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻)
- 島添 健次(東京大学 大学院工学系研究科 バイオエンジニアリング専攻)
- 鎌田 圭(東北大学 未来科学技術共同研究センター)
- 百瀬 敏光(東京大学 医学部付属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【補助金】 医療機器開発推進研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
50,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は非侵襲型血中Radioisotope(RI)濃度測定を可能とする、ウエアラブルサブミリ分解能PET装置の開発である。近年の超高齢化に伴い、癌、アルツハイマー病患者数は激増(癌6万年/年、アルツハイマー病12万人/年)している。Positron emission tomography (PET)は癌細胞の検知・アルツハイマーの部位の同定などに用いられる医療画像技術であり、早期診断法としての有効性から需要が増加し、機能向上も切望されている。一方、PET診断では、診断精度向上のため、投与したRIの分布を表すPET画像を定量化する必要がある。このため体内へのトレーサーの供給量、すなわち、動脈血液中のRI濃度を高精度かつ連続測定することが必要不可欠である。現状は長時間カテーテルを刺し続け断続的な採血を行うため、患者の苦痛が大きく、大きな負担となる。そのため、採血不要の非侵襲かつ高精度、軽量な連続的かつリアルタイム測定可能なRI濃度測定装置が強く求められている。上述の要請に答えるべく、Ce:Gd3Al2Ga3O12(GAGG)系の国産シンチレータを用いたサブミリピクセル結晶アレーと軽量、薄型のSi半導体受光素子アレーを組み合わせた、超高分解能PET装置を開発する。小型軽量なウエラブルPET装置により診断中に手首に装着することで非侵襲血中RI濃度測定が可能となる。
研究方法
本プロジェクトでは研究目的を達成するため下記の研究方法により行う。
①GAGG系シンチレータの高感度・短寿命化:μ-PD法という従来法の50~1000倍高速な単結晶作製が可能な融液成長法を駆使し、単結晶作製を行う。シンチレーション特性を測定解析し、高密度かつ蛍光寿命の短い組成を検討する。②結晶作製、シンチレータアレー作製:アレーの作製のため、微細かつ高精度な結晶加工技術と高速かつ安価なアレー作製を実現する組立治具の開発を行う③電子回路、放射線検出器の開発:GAGGを用いた微細シンチレータアレーとAPD、SiPMアレーをアッセンブリした検出器を試作する。ASICを含めた電子回路、SiPMは既存品を改良および新規開発する。④PET装置試作・評価・画像再構成:開発した放射線検出器4~8個を用いPET装置を構成する。PETリングについては手首に密接かつ、ウエアラブルにできるようなリング構造を採用する。画像再構成については、既存のAPD-PETの画像再構成法のジオメトリを変更し、最適化して対応する。試作したPETについては、PMDAとの相談の上、点線源、チューブファントム等による性能試験、専用ファントムを用いた画質評価やプールファントムによる散乱補正といった評価を経て基礎性能を確認し、装置仕様を決定する。⑤臨床試験:試作したプロトタイプPET装置を用いて東大病院において臨床試験を行う。
①GAGG系シンチレータの高感度・短寿命化:μ-PD法という従来法の50~1000倍高速な単結晶作製が可能な融液成長法を駆使し、単結晶作製を行う。シンチレーション特性を測定解析し、高密度かつ蛍光寿命の短い組成を検討する。②結晶作製、シンチレータアレー作製:アレーの作製のため、微細かつ高精度な結晶加工技術と高速かつ安価なアレー作製を実現する組立治具の開発を行う③電子回路、放射線検出器の開発:GAGGを用いた微細シンチレータアレーとAPD、SiPMアレーをアッセンブリした検出器を試作する。ASICを含めた電子回路、SiPMは既存品を改良および新規開発する。④PET装置試作・評価・画像再構成:開発した放射線検出器4~8個を用いPET装置を構成する。PETリングについては手首に密接かつ、ウエアラブルにできるようなリング構造を採用する。画像再構成については、既存のAPD-PETの画像再構成法のジオメトリを変更し、最適化して対応する。試作したPETについては、PMDAとの相談の上、点線源、チューブファントム等による性能試験、専用ファントムを用いた画質評価やプールファントムによる散乱補正といった評価を経て基礎性能を確認し、装置仕様を決定する。⑤臨床試験:試作したプロトタイプPET装置を用いて東大病院において臨床試験を行う。
結果と考察
平成26年度はGAGGのMg添加による減衰時定数の短寿命化に成功し、現在主流となっているLYSOを越える時間分解能を達成した。この結果よりGAGGは自己放射能の少なくエネルギー分解能が高い結晶であるため、従来方式と比較して同等かそれ以上の時間分解能を有し、かつ非常に低バックグラウンドにおいてのPET測定が可能になると考えられる。また本年度500マイクロmピクセルおよび200マイクロmピクセルアレーの作成技術の確立を行った。今後の光センサの開発により高分解能化が可能であることが示唆された。集積回路開発においてはToT-ASICの開発を行い、結晶との組み合わせにより良好な分解能を有していることが確認された。本ASICを用いたシステムにより従来方式に比較して2桁以上の高計数率への対応が可能となることが考えられる。また、古河機械金属社に依頼し、プロトタイプPETシステムの作成を行った。加えて500マイクロmピッチのSiPM光センサの設計開発を行っているがシンチレータとの接合において光の拡散を抑えるため、マイクロレンズなどの集光機能を有する構造が必要とされることが判明した。次年度においてはこの部分も含めてシステムとしての改善および評価を継続する。
結論
GAGG結晶の高感度、短寿命化、ピクセル型結晶アレーの製作、電子回路、光検出器の作成、放射線検出器の開発、臨床試験の準備およびPMDAへの事前相談において全体として順調に進展した。500マイクロmピクセルおよび200マイクロmピクセルGAGGアレーの製作、64channel 500マイクロmSiPMアレイの試作が完了した。またサブmm分解能用のPET装置の試作をおこなった。加えて既存のPET装置を用いた血管模擬ファントムの撮像を行い、PET装置試験環境の構築をおこない、PMDAへの事前相談を実施した。次年度はサブmm分解能PET装置の改良を進める。
公開日・更新日
公開日
2016-01-28
更新日
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