医科学研究に重要な霊長類資源の繁殖・育成と疾患モデルの作製・解析

文献情報

文献番号
201407033A
報告書区分
総括
研究課題名
医科学研究に重要な霊長類資源の繁殖・育成と疾患モデルの作製・解析
課題番号
H25-創薬-指定-009
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
保富 康宏(独立行政法人医薬基盤研究所 霊長類医科学研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 山海 直(独立行政法人医薬基盤研究所 霊長類医科学研究センター )
  • 下澤 律浩(独立行政法人医薬基盤研究所 霊長類医科学研究センター )
  • 揚山 直英(独立行政法人医薬基盤研究所 霊長類医科学研究センター )
  • 岡村 智崇(独立行政法人医薬基盤研究所 霊長類医科学研究センター )
  • 高橋 一朗(独立行政法人医薬基盤研究所 霊長類医科学研究センター )
  • 鈴木 治(独立行政法人医薬基盤研究所 難病・疾患資源研究部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【補助金】 創薬基盤推進研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
28,931,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
創薬研究においては詳細な分子メカニズムの解析に続き、高度な動物実験により、効果や毒性の解析を行うことが必要である。さらに治験段階を迎えるには霊長類を用いた解析、検討は必須であり、その霊長類ももちろん実験動物として高度化されていなければならない。さらに近年、治験段階を迎えるには霊長類を用いた解析、検討の必要性も要求されるようになった。医薬基盤研究所霊長類医科学研究センターは我が国で唯一の医科学研究を目的とした霊長類センターであり、さらに1,500頭以上のカニクイザル系統を維持しSPF化している世界で唯一の機関である。本研究ではこれら高度な霊長類を用い、創薬につながる動物資源の繁殖技術の向上、動物資源の高度化および疾患モデルを検討し、医科学研究の基盤を構築することを目的とした
研究方法
麻酔投与下、仰臥位で固定後、鼻腔よりHPIV2を滴下し、10分間保持した。投与後0時間(コントロール)24時間後に解剖を行い、ホルマリン固定の後、HE染色にて鼻粘膜の病理的解析を行った。また、リンパ球抗原に対するモノクローナル抗体による免疫組織化学染色を行った。

(倫理面への配慮)
本研究では動物実験申請等の必要な委員会での承認は既に得ており、ヒトサンプル、情報等は一切用いていない。
結果と考察
以下の如く結果を得た。
1. 霊長類由来研究資源の保存技術の高度化 :カニクイザル凍結保存受精卵の質的な評価法をメチレーション関連遺伝子および免疫染色法を用いた新規手法を樹立した。2. カニクイザルのホルモン解析による繁殖技術の確立:カニクイザルホルモン測定による交配を行っているが、当該年度まで、従来の発情から計算したホルモン日測定法との受胎率の際は認められなかった。
3. カニクイザルのMHC 遺伝子発現解析:サルエイズウイルス(SIV)に感受性、抵抗性を付与するであろうMHCクラスIの解析を行った。
4. ワクチン開発における霊長類を用いた基盤的技術の開発:カニクイザルに感受性を持ち、新規ワクチンベクターとして期待されるヒトパラインフルエンザ2型ウイルスの経鼻投与における病変を検討したところ、病理学的な変化は認められなかったが、感受性のないマウスでは変化が認められた。
5. 循環器疾患モデルの作製とその解析:循環器疾患の測定値となる血液ガスについて調べ、ヒトと相同性のある測定項目と無い測定項目に知見を得た。
6.カニクイザルモデルを用いたウイルス感染症に関する研究:産地の異なるSPFカニ病態に差異はなかった。
7.PTEN抑制物質投与による霊長類誘起排卵数増加法の基礎的検討:カニクイザルでの排卵の上昇を期待したPTEN阻害剤投与はマウスにおいて時期特異的に性腺刺激ホルモンによる誘起排卵数を増加させ,その作用点は卵胞の顆粒層細胞および莢膜細胞であることが明らかとなった。

考察
医科学研究、創薬研究における実験動物の役割は極めて大きく、特にヒトに近い霊長類を用いた研究の重要性は近年世界中で認識されている。世界的にも新規の霊長類センターの開設や既存の霊長類センターの拡大を行っている。独立行政法人医薬基盤研究所霊長類医科学研究センターは我が国で唯一の医科学研究を目的とした霊長類センターであり、さらに1,500頭以上のカニクイザルの系統を維持し、SPF化している世界で唯一の機関である。これらカニクイザル資源に関しては世界的にも評価が高い。本研究ではこれらカニクイザルをさらに高度化し、創薬への利用の促進につなげることを試みている。
 実験動物としての霊長類はそれ自体をSPF等で高度化していくこと、高度化に結びつく種々の情報、さらにはモデル動物の作製や解析により、具体的な疾患への対応に対し高度化して有用性を高める必要がある。本研究ではこれらを同時に行い、創薬への有用性を示したと考えられたが、さらなる疾患への対応が今後も継続されることが必要絵あると考えられた。
結論
カニクイザルを実験動物としての高度化を行い、創薬への有用性を示した。

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-10-22
更新日
-

収支報告書

文献番号
201407033Z