文献情報
文献番号
201407021A
報告書区分
総括
研究課題名
悪性中皮腫のヒト化CD26抗体療法の確立及び化学療法剤の有効性評価に有用な新規疾患関連バイオマーカーの開発
研究課題名(英字)
-
課題番号
H24-バイオ-一般-003
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
森本 幾夫(順天堂大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 山田 健人(埼玉医科大学)
- 岸本 卓巳(岡山労災病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【補助金】 創薬基盤推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
27,645,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
悪性中皮腫へのヒト化CD26抗体療法確立のため、病理組織上のCD26発現評価可能な抗体を開発し、コンパニオン診断薬及び患者血清中の可溶性CD26/DPPIV酵素活性測定診断系を確立し、更にCD26発現評価は化学療法剤の治療効果予測因子のバイオマーカーになり得るかも決定する。
研究方法
1. 病理組織標本でのCD26発現評価可能な新規CD26単クローン抗体の開発:
腫瘍病理組織のCD26発現評価に適したコンパニオン診断薬として新規CD26単クローン抗体を開発のためUrea bufferで変性処理した可溶性CD26をマウスに免疫しハイブリドーマを作製した。
2. CD26の組織発現評価は化学療法剤の治療効果予測マーカーか:
我々は悪性中皮腫組織上でのCD26発現評価は化学療法剤の効果予測マーカーとして有望であることを報告した(Clin Cancer Res 2012)。この時は化学療法施行評価症例は40例と少数であったため症例を追加して108例の悪性中皮腫について検討した。
3. 血清中の可溶性CD26/DPIV酵素活性値測定キットの開発:
ヒト化CD26抗体投与患者では血清中に存在する可溶性CD26/DPPIVが抗体と反応して低値をとる可能性があるため血清中のCD26 (sCD26)/DPPIV酵素値のモニターは重要である。従来の我々の開発したsCD26 ELISA系や複数の市販キットはヒト化CD26抗体存在下で可溶性CD26値は測定不可であった。新しいCD26エピトープを認識する9C11抗体を見いだし、本抗体を用いてELISA系を構築した。
腫瘍病理組織のCD26発現評価に適したコンパニオン診断薬として新規CD26単クローン抗体を開発のためUrea bufferで変性処理した可溶性CD26をマウスに免疫しハイブリドーマを作製した。
2. CD26の組織発現評価は化学療法剤の治療効果予測マーカーか:
我々は悪性中皮腫組織上でのCD26発現評価は化学療法剤の効果予測マーカーとして有望であることを報告した(Clin Cancer Res 2012)。この時は化学療法施行評価症例は40例と少数であったため症例を追加して108例の悪性中皮腫について検討した。
3. 血清中の可溶性CD26/DPIV酵素活性値測定キットの開発:
ヒト化CD26抗体投与患者では血清中に存在する可溶性CD26/DPPIVが抗体と反応して低値をとる可能性があるため血清中のCD26 (sCD26)/DPPIV酵素値のモニターは重要である。従来の我々の開発したsCD26 ELISA系や複数の市販キットはヒト化CD26抗体存在下で可溶性CD26値は測定不可であった。新しいCD26エピトープを認識する9C11抗体を見いだし、本抗体を用いてELISA系を構築した。
結果と考察
悪性中皮腫におけるCD26発現の病理診断に有用な新規CD26単クローン抗体2クローンを得た。これらの新規単クローン抗体は異なるロットでも安定した染色性を示し、4℃・-80℃ともに12ヶ月保存しても精製直後と同等の明瞭な染色強度を示すことが確認された。本クローン抗体は、これまでのR&D社のポリクローナル抗体と同等以上の染色性と特異性を有しており、さらに肉腫型においては、ポリクローナル抗体よりも感度が高い傾向であった。悪性胸膜中皮腫におけるCD26発現と臨床的要因との関連および生存解析を行った。CD26は上皮型中皮腫で発現頻度が高く、肉腫型中皮腫では発現頻度が低かった。CD26発現群で化学療法の治療効果がより良好で、また、CD26陽性群で陰性群より予後が良好であった。CD26発現と血清サイトカイン濃度との検討では、特にMIP-1βとCD26発現との関連を示唆する結果が示された。悪性胸膜中皮腫における血清および胸水中の可溶性CD26の臨床的意義について検討した。血清中の可溶性CD26は石綿ばく露者における胸膜中皮腫発症のスクリーニングあるいは早期診断マーカーとして、また胸水中の可溶性CD26は上皮型中皮腫の診断マーカーとして有用な可能性があり、さらに血清及び胸水中の可溶性CD26及びDPPIV酵素活性値は、胸膜中皮腫における予後評価の判定に用い得る可能性も示唆された。新しいCD26エピトープと反応するCD26抗体9C11を用いることにより血清中にヒト化CD26抗体存在下でも可溶性CD26/DPPIVを測定できる新ELISA系を確立した。ヒト化CD26抗体投与を行ったフランスの第Ⅰ相臨床試験患者血清においてもブロックされることなく可溶性CD26/DPPIV値は適切に測定することができた。可溶性CD26 ELISAアッセイシステムの性能はとても良好で反応時間も短縮できることが明らかとなった。しかしDPPIV酵素活性測定アッセイでは血清中に存在する干渉因子などの影響で検体の希釈倍率により測定値が異なる可能性が示唆され、また反応時間の簡便化もそれらの干渉因子などの影響により現時点では難しいことが示唆された。
結論
悪性中皮腫におけるCD26発現の病理診断に有用な新規CD26単クローン抗体2クローンを得た。本クローン抗体は、これまでのR&D社のポリクローナル抗体と同等以上の染色性と特異性を有しており、さらに肉腫型中皮腫においては、ポリクローナル抗体よりも感度が高い傾向が明らかとなった。CD26発現は上皮型腫瘍細胞で発現頻度が高く、肉腫型細胞で発現頻度が低かった。CD26発現群で化学療法の治療効果がより良好であった。また、CD26陽性群で陰性群より予後が良好であった。新しいCD26エピトープと反応するCD26抗体9C11を用いることにより血清中にヒト化CD26抗体存在下でも可溶性CD26/DPPIVを測定できる新ELISA系を確立した。フランスのヒト化CD26抗体投与の第Ⅰ相臨床試験患者血清においてもブロックされることなく可溶性CD26/DPPIV値は適切に測定することができた。
公開日・更新日
公開日
2015-06-01
更新日
-