精神・神経疾患特異的iPS細胞を用いた創薬研究

文献情報

文献番号
201406033A
報告書区分
総括
研究課題名
精神・神経疾患特異的iPS細胞を用いた創薬研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H25-実用化(再生)-指定-021
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
岡野 栄之(慶應義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 佐谷 秀行(慶應義塾大学 医学部 )
  • 小崎 健次郎(慶應義塾大学 医学部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【補助金】 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
41,160,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
iPS細胞技術が開発されるまで、ヒトの神経系で起きている現象を生体外で再現する方法がなかった。本研究の目的は、神経疾患特異的iPS細胞を用いてこれまで解明されなかった中枢神経疾患の発症機序を解明し、機序に基づく効率的な創薬システムの構築を通して創薬シーズを同定し、効果的な治療法を確立することである。
研究方法
1. 疾患特異的iPS細胞の樹立
患者末梢血にエピソーマルベクターを用いて初期化因子を遺伝子導入し、iPS細胞を樹立する。複数株よりベクターの残存、神経系細胞への分化能、染色体構造異常を確認し、創薬スクリーニングに使用できるiPS細胞株を選定する。統合失調症、双極性障害については、症状と関連すると考えられるCNVをもつ患者を次世代シーケンサーにより選定した。
2. 神経分化誘導系・表現型解析系の開発
2-1. 神経分化誘導系の開発:既に当研究室で確立している、胚様体を介した神経幹細胞への分化誘導や低分子化合物を組み合わせた神経幹細胞への分化誘導を創薬スクリーニングに最適化する。効率、神経幹細胞収量、iPS細胞株によるばらつき、分化誘導期間を指標に、最適な小分子の組み合わせを検討する。
2-2. 表現型解析系の開発
IN Cell Analyzerを用いた複数項目一括解析システムを構築した。本システムは細胞形態とタンパク質の局在をリンクさせることができる。多重染色を用いて多角的な病態解析を実施した。薬剤添加の前後、健常者由来の細胞と比較検討を行う。
3. 薬剤スクリーニング
 ヒト型双腕ロボット「まほろ」によるシステムの構築を骨肉腫癌幹細胞を使用し行った。2.で構築した神経分化誘導基盤・表現型解析システムを用いて疾患の表現型をエンドポイントとして既存薬スクリーニングを実施した。スクリーニングに用いる薬剤は「まほろ」を用いて96ウェルプレートに分注されており、高精度かつ安定な既存薬ライブラリー提供が可能である。
結果と考察
1. 疾患特異的iPS細胞の樹立
CNV異常を認める統合失調症患者2名をし、iPS細胞を樹立した。双極性障害患者26名よりCNV異常を認める3名を選定し、1名よりiPS細胞を樹立した。精神疾患において、共通する染色体構造異常を有する患者由来細胞を用いることで、系統だった病態解明が可能となり、効率的な治療薬の開発に応用が可能である。
2. 神経分化誘導系・表現型解析系の開発
6つの神経変性疾患について、病変が確認される脳領域のに分化誘導し、定量的な表現型解析システムを開発した。
2-1. 神経分化誘導系の開発
 運動ニューロン誘導:今までの誘導方法に小分子を添加し幹細胞性を抑制した。迅速かつ高効率な分化誘導方法に改良した。運動ニューロンマーカー発現率は60%となった。
2-2. 表現型解析系の開発:主だったものについて下に記す。
A. 筋萎縮性側索硬化症(FUS変異)
 患者iPS細胞由来運動ニューロンを用い、神経突起長解析、FUSタンパク異常局在、FUSタンパクを伴うストレス顆粒形成、細胞死、アポトーシスマーカー発現解析を実施した。
 長期培養により神経突起長減少を認め、同時期に運動ニューロンマーカー(ChAT)陽性率が減少した。患者群においてFUSタンパク異常局在率が有意に増加した。FUSタンパクとストレス顆粒との共局在を認めた。FUS-iPS由来運動ニューロンにおいてCleaved Caspase-3上昇、LDH漏出率増大を認めた。これらよりALS病態において運動ニューロン選択的な細胞障害性・細胞死の促進が生じていると考えられた。
B. Pendred症候群
我々独自の誘導方法でiPS細胞より内耳PENDRIN陽性細胞を誘導が可能である(純度100%)。本年度は、患者由来iPS細胞(Pendred-iPS)由来内耳細胞で細胞内凝集体を認めた。また患者iPS由来内耳細胞ではプロテアソーム阻害薬による細胞ストレスへの脆弱性を有意に認めた。本疾患はヒトと同様の疾患表現型を呈するモデル動物が存在せず、病態生理が不明であった。本研究により神経変性疾患に類似した病態であることが分かり、新規治療薬に繋がると考える。
3. 薬剤スクリーニング
 非臨床POCとして既存薬スクリーニングを行い、現時点でFUS-ALSで3種類、Pendred症候群で2種類の治療薬候補を見出した。「まほろ」によるシステム構築を行い、細胞散布、化合物調整、細胞増殖の定量について高い再現性を有し、清潔操作に問題を認めなかった。
結論
疾患特異的iPS細胞の樹立、神経系細胞への分化誘導と病態解析、多検体を処理できる実験系が整い、複数の疾患で候補薬が挙がっている。本方法により、多くの疾患の新しい治療法の確立や創薬シーズの同定が期待される。

公開日・更新日

公開日
2015-05-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201406033Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
53,508,000円
(2)補助金確定額
53,509,429円
差引額 [(1)-(2)]
-1,429円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 28,680,850円
人件費・謝金 8,231,984円
旅費 1,098,200円
その他 3,150,395円
間接経費 12,348,000円
合計 53,509,429円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2016-01-28
更新日
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