ヒト幹細胞を用いた再生医療の臨床実用化のための基盤構築に関する研究

文献情報

文献番号
201406021A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒト幹細胞を用いた再生医療の臨床実用化のための基盤構築に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H25-実用化(再生)-指定-001
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
中井 謙太(東京大学 医科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 今井 浩三(東京大学医科学研究所附属病院)
  • 藤渕 航(京都大学iPS細胞研究所)
  • 中畑 龍俊(京都大学iPS細胞研究所)
  • 中辻 憲夫(京都大学再生医科学研究所)
  • 岡野 栄之(慶應義塾大学医学部)
  • 梅澤 明弘(国立成育医療研究センター)
  • 西田 幸二(大阪大学 医学部)
  • 高橋 政代(理化学研究所)
  • 大和 雅之(東京女子医科大学 先端生命医科学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【補助金】 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
233,333,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現在、国内での再生医療に関する研究開発の多くは、研究機関単位で自立的に行われている。その結果、研究機関同士での情報共有・活用が十分でなく、研究の加速の妨げとなっている。例えば、ある研究機関に存在するデータはその場での関心の下でしか価値判断されないため、多角的な分析が十分に行われないまま埋もれてしまうケースや、他の機関との研究の重複によるリソースの浪費、研究内容の相違の確認に基づく研究の深化の実施不能等の課題が存在する。さらに今後、国内の研究機関において再生医療の臨床応用に向け治験などの手続きが急増することが予想されるが、その際に必要な知識や経験が研究機関間で十分に共有されないと、現場の研究者に不必要な労力を強いてしまい、結果的に臨床実用化を遅らせることにもなりかねない。このような構造的な課題を乗り越え、早期の臨床応用実現と持続的研究開発能力を確保するためにも、自律分散した研究機関間の連携を情報通信技術等の活用によって図り、機関間で研究結果の効率的活用を行う、一種のOpen Innovation環境を構築することが不可欠である。そこで、本研究ではヒト等の幹細胞を用いた再生医療技術の早期実用化に向け、再生医療に関わる我が国の研究機関が情報共有を図ることによって、オールジャパンともいうべき体制で研究を加速させるための情報基盤の構築を目的とする。
研究方法
1.第一線の研究者が安心して効率的に情報共有を行えるように、システム説明会(今年度は2回)等システムの安定的運用と改善に努めた。4種類のソフトウェア開発・改良を行った。また、前年度に引き続きセキュリティ規定の整備を行いパイロット的にセキュリティ監査を実施した。3拠点以上が関与する場合の倫理申請手順の大幅スピードアップを実現した。
2. データ共有と再利用の活性化
現在17の拠点間共同研究が進行中である。理化学研究所拠点から提供されたiPS細胞臨床試験のための申請書類も、共有を開始している。細胞の分化万能性をみるテラトーマ作成実験結果の画像データを収集したデータベースOpenTeinを構築し、外部に公開した。
3. ポストプロジェクト体制の模索
いわゆる準会員制度を実現するために、ownCloudというシステムを導入した。
4. データマイニングその他
以前から開発してきた、細胞間の類似性をその遺伝子発現プロフィールの比較により判定。検索するシステムのうち、検索を公共データに対して行うパートを外部公開し、非公開データ(約100サンプル)を横断的に検索するパートを内部向けに整備している。また、体内の種々の細胞の遺伝子発現パターンを多次元空間に投影し、がん細胞のそれと合わせて表示してみたところ、別班員提供の論文未発表の幹細胞の一部ががん細胞と似ていることが予想外に発見された。これは今後の幹細胞やその誘導細胞の移植を行う際の造腫瘍性をあらかじめ、遺伝子発現情報から予測できる可能性を示すもので、新しい共同研究として展開中である。
結果と考察
本研究の目標は、再生医療の研究者に広く使っていただくための汎用的システムの構築であったため、あえてプロジェクトに対して温度差のあるメンバー構成を保ち、粘り強くシステムに対する信頼感の醸成に努めてきた。その結果、すべての分担者からの協力体制を築き上げ、17件ほどの共同研究が立ち上がるところまで来ている。再生医療研究とゲノム科学研究との融合という点でも先駆的な貢献をしてきた。本研究は現在の予算枠で扱われている他の研究とは大きく性格を異にするものであり、そのことに起因する数々の困難を乗り越え、十分な成果をあげていることは、ここで再度訴えたい。
結論
我々は次世代の再生医療研究に必要なキーワードの一つは「IT技術を用いた情報共有と研究の情報科学化」であると考えている。これによって、たとえば、再生医療研究にビッグデータ情報解析技術を応用したり、複数の研究室がデータを出し合って、幹細胞研究の品質管理基準をつくったり、研究成果を産業化していったりすることが加速していけるはずである。

公開日・更新日

公開日
2015-06-16
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2016-05-13
更新日
-

文献情報

文献番号
201406021B
報告書区分
総合
研究課題名
ヒト幹細胞を用いた再生医療の臨床実用化のための基盤構築に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H25-実用化(再生)-指定-001
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
中井 謙太(東京大学 医科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 今井 浩三(東京大学医科学研究所)
  • 藤渕 航(京都大学iPS細胞研究所)
  • 中畑 龍俊(京都大学iPS細胞研究所)
  • 中辻 憲夫(京都大学再生医科学研究所)
  • 岡野 栄之(慶應義塾大学医学部)
  • 梅澤 明弘(国立成育医療研究センター)
  • 西田 幸二(大阪大学医学部)
  • 高橋 政代(理化学研究所)
  • 大和 雅之(東京女子医科大学先端生命医科学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【補助金】 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現在、国内での再生医療に関する研究開発の多くは、研究機関単位で自立的に行われている。その結果、研究機関同士での情報共有・活用が十分でなく、研究の加速の妨げとなっている。例えば、ある研究機関に存在するデータはその場での関心の下でしか価値判断されないため、多角的な分析が十分に行われないまま埋もれてしまうケースや、他の機関との研究の重複によるリソースの浪費、研究内容の相違の確認に基づく研究の深化の実施不能等の課題が存在する。さらに今後、国内の研究機関において再生医療の臨床応用に向け治験などの手続きが急増することが予想されるが、その際に必要な知識や経験が研究機関間で十分に共有されないと、現場の研究者に不必要な労力を強いてしまい、結果的に臨床実用化を遅らせることにもなりかねない。このような構造的な課題を乗り越え、早期の臨床応用実現と持続的研究開発能力を確保するためにも、自律分散した研究機関間の連携を情報通信技術等の活用によって図り、機関間で研究結果の効率的活用を行う、一種のOpen Innovation環境を構築することが不可欠である。そこで、本研究ではヒト等の幹細胞を用いた再生医療技術の早期実用化に向け、再生医療に関わる我が国の研究機関が情報共有を図ることによって、オールジャパンともいうべき体制で研究を加速させるための情報基盤の構築を目的とする。
研究方法
1. システムの構築(ハード面)
メインのマシンは諸災害なども考慮して北海道のデータセンターに置き、インターネット回線上の論理的なプライベートネットワークとして暗号化通信も可能な形で中核拠点や各拠点を繋げ、各拠点はデータを中央で共有するか否かを独自調節可能にした。実験室データや実験ノート電子化にも取り組んだ。
2. システムの構築(ソフト開発)
システム利用を促進するためのソフト開発を行った。また、計算機利用に不慣れな利用者のための定期的な説明を行い、講習会を開催した。
3. システムの運用・整備・再編成
利用者からの要望を反映させシステムをより安全で使いやすくするために、上述のソフト開発の他にも専門家や専門業者の協力を得て、セキュリティ規定を整備した。また、ELSI委員会を組織してデータ提供に関する規則を制定した。さらに3者間以上の共同研究を進める際の倫理申請手続きの整備を進めた。
4. ポストプロジェクト体制の模索
構築ソフトの持続的維持のために、現班員以外の研究者の参加方策をハード・ソフト両面で検討し、関連企業などのニーズを調査した。
5. データマイニングその他
デポジットされたデータを横断的に検索・解析し新しい知見を得るための研究を行った。
結果と考察
1. システムの構築(ハード面)
各拠点にサーバセット(ラックマウント型またはタワー型)を設置した。
2. システムの構築(ソフト開発)
最終的に4つのソフトを開発、一部は外部公開を行った。これらはすべて無料で公開の予定であったが、研究の急な終了により一時的に休止状態となっている。
3. システムの運用・整備・再編成
インシデント対応手順や情報セキュリティ対策のポリシーまで、情報セキュリティ規定の体系的な整備を行った。パイロット的に中核機関と他1機関のセキュリティ監査を実施した。
4. データ共有と再利用の活性化
平成26年度は拠点間共同研究が17立ち上がった。また臨床試験のための倫理申請書類の共有は班員から大変評価が高かった。さらにデータ共有を通してWet研究とDry研究の融合も大いに促進された。
5. ポストプロジェクト体制の模索
いわゆる準会員制度を実現するために安全性に優れているownCloudというクラウドサービスを導入したが、本格的運用のための運用実験までは叶わなかった。
6. データマイニングその他
データ共有から生まれた新規共同研究は現在も継続中。実験ノートのアーカイブ化については一定の品質が得られるような手順を策定した。
結論
本研究は通常の再生医療系の研究課題に比べ非常に異色で、評価が難しいとは思うが、再生医療研究者とゲノム・情報系研究者との協力体制構築が進み、最終的な成果創出と研究期間終了後の体制づくりの準備をしていたところで急遽研究打ち切りとなったため、研究成果を十分に公表せぬまま、研究期間外での後処理に奔走せねばならなくなった。幸いなことに、本研究をベースとしたワークショップがBMB2015という学会で採択されたため、そこで成果発表を行うが、これまで蒔いた種の収穫を十分できぬままに打ち切りとなったのは非常に残念である。今後は時間はかかってもこれまでの努力を発展させて新たな成果創出に結びつけていきたい。

公開日・更新日

公開日
2015-06-16
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201406021C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 
臨床的観点からの成果
 
ガイドライン等の開発
 
その他行政的観点からの成果
 
その他のインパクト
 

発表件数

原著論文(和文)
112件
原著論文(英文等)
15件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
76件
学会発表(国際学会等)
33件
その他成果(特許の出願)
3件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Sung-Joon Park, Terumasa Umemoto, Mihoko Saito-Adachi, et al.
Computational promoter modeling identifies the modes of transcriptional regulation in hematopoietic stem cells
PLoS One , 9 (4)  (2014)
原著論文2
Yosvany López, Alexis Vandenbon, and Kenta Nakai
A Set of Structural Features Defines the Cis-Regulatory Modules of Antenna-Expressed Genes in Drosophila melanogaster
PLoS One , 9 (8)  (2014)
原著論文3
Sung-Joon Park, Katsuhiko Shirahige, Miho Ohsugi and Kenta Nakai
DBTMEE: a database of transcriptome in mouse early embryos
Nucl. Acids Res , 43 , D771-776  (2015)
原著論文4
Ayako Suzuki, Hiroyuki Wakaguri, Riu Yamashita, et al.
DBTSS as an integrative platform for transcriptome, epigenome and genome sequence variation data
Nucl. Acids Res. , 43 , D54-91  (2015)

公開日・更新日

公開日
2015-06-18
更新日
2019-05-24

収支報告書

文献番号
201406021Z