肝硬変に対する脂肪組織由来間質細胞を用いた肝再生療法実用化研究

文献情報

文献番号
201406006A
報告書区分
総括
研究課題名
肝硬変に対する脂肪組織由来間質細胞を用いた肝再生療法実用化研究
課題番号
H25-再生-一般-001
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
金子 周一(金沢大学 医薬保健研究域医学系)
研究分担者(所属機関)
  • 酒井 佳夫(金沢大学 医薬保健研究域医学系)
  • 高村 雅之(金沢大学附属病院)
  • 山下 竜也(金沢大学附属病院)
  • 山下 太郎(金沢大学附属病院)
  • 荒井 邦明(金沢大学医薬保健研究域医学系)
  • 砂子阪 肇(金沢大学附属病院)
  • 中村 裕之(金沢大学 医薬保健研究域医学系)
  • 長瀬 克彦(金沢大学附属病院 先端医療開発センター)
  • 手良向 聡(京都府立医科大学大学院医学研究科)
  • 今井 康人(金沢大学附属病院 先端医療開発センター)
  • 藤原 忠美(名古屋大学医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【補助金】 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
25,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
肝硬変は、慢性肝疾患の終末像であり、肝機能低下、肝不全に至る重篤な状態である。肝硬変に対する治療法には肝移植以外に根治的治療法はなく、新たな治療法開発が望まれている。間葉系幹細胞は、多分化能を有し、肝細胞への分化能も報告されている。脂肪組織由来間質細胞には間葉系幹細胞が豊富に含まれ、アクセスがよく、自己由来の細胞が獲得可能である。本研究では、自己脂肪組織由来間質細胞投与による肝再生療法実用化を目的としている。第20回ヒト幹細胞臨床研究に関する審査委員会(平成24年5月)にて実施を承認された安全性試験である「肝硬変に対する自己脂肪組織由来間質細胞の経肝動脈投与による肝再生療法の臨床研究」を実施する。
研究方法
「肝硬変に対する自己脂肪組織由来間質細胞の経肝動脈投与による肝再生療法の臨床研究」において、以下のエントリー基準を満たす肝硬変患者を対象とする。(1)血液検査、画像診断、病理学的検査の方法にて、肝硬変と診断されている患者で、以下の条件を満たす症例。原因については、原因不明以外は原則として問わない。(2)年齢が20歳以上、80歳以下、(3)総ビリルビン値が3.0 mg/dl以下、(4)血小板が7.0x10^4/μl以上、(5)プロトロンビン活性が70%以上、(6)血清クレアチニンが1.5 mg/dl以下、(7)試験の性質を理解する能力を有し、本試験の参加に関して同意が文書で得られる。対象者の腹壁、大腿、臀部のいずれかの皮下より脂肪組織を採取、脂肪組織分離装置(Cytori Therapeutics社、San Diego、米国)を用いて脂肪組織由来間質細胞を獲得し、経皮的に肝動脈へカテーテルを挿入し、細胞を投与する。実施予定症例数は4例、2例は3.3x10^5/Kg、2例は6.6x10^5/Kgの細胞を投与予定する。主要評価項目は、細胞投与後1か月における安全性評価である。金沢大学先端医療開発センターによるモニタリング、データマネジメントの下、実施する。余剰脂肪組織由来間質細胞浮遊液について、日本薬局法に準拠した無菌試験を実施する。細胞表面抗原解析として、ヒト間葉系幹細胞解析用 Human MSC Analysis Kit(R)(BD)を用いて、フローサイトメトリーにて評価する。また、余剰細胞の培養を試みる。余剰脂肪組織由来間質細胞、および継代培養した脂肪組織由来間質細胞について包括的遺伝子発現解析を行い、特性解析を行う。
結果と考察
平成27年2月までに、実施予定全4例の治療実施が終了、(登録番号HI-01、HI-03、HI-04、HI-05)、3例は評価期間を終了した。HI-01では、2.2x107個の細胞を経肝動脈的に投与した。投与後1か月間において重篤な有害事象を認めなった。重篤な有害事象の発生は認められなかった。HI-03は、2.2x10^7個の細胞を経肝動脈的に投与した。研究期間の1か月間の経過中、一過性のグレード1の血小板減少(67,000/μl)を認めたが、研究終了時には91,000/μlに回復し、重篤な有害事象は認めなかった。HI-04は、4.4x10^7個の細胞を投与した。一過性の迷走神経反射が生じたが、研究期間の1か月間の経過中、重篤な有害事象は認めなかった。獲得した余剰脂肪組織由来間質細胞の無菌試験を実施、無菌状態を確認した。HI-01、HI-03、HI-04の余剰脂肪組織由来間質細胞の表面抗原を解析、間葉系幹細胞マーカーを発現する細胞の存在を確認した。非培養および培養余剰脂肪組織間質細胞のDNAマイクロアレイによる遺伝子発現解析において、階層クラスタリング解析で非培養余剰脂肪組織間質細胞と培養脂肪組織由来間質細胞のクラスタが形成された。
安全性臨床試験後についての、医師主導治験あるいは先進医療Bでの臨床試験に関して、PMDAとの個別面談、事前面談、および厚生労働省医政局研究開発振興課との先進医療相談を実施した。PMDA相談では、治験にむけた対面助言実施のため必要と考えられる資料についての相談を実施した。
疫学研究「肝硬変患者の予後調査観察研究」では、肝硬変患者の血清アルブミン値、プロトンビン活性、血小板数の経過推移を評価、治験デザインにおける主要評価項目を決定する上で、参考となるデータが得られた。
結論
安全性試験である臨床研究「肝硬変に対する自己脂肪組織由来間質細胞の経肝動脈投与による肝再生療法の臨床研究」において、実施予定4例を実施、細胞投与による重篤な有害事象を認めず、安全性を確認した。データマネジメントによる確認を実施、総括報告書を準備中である。次年度総括報告を終了し、本治療法の医師主導治験のためのPMDA対面助言を実施、治験開始準備を行う予定である。

公開日・更新日

公開日
2015-05-25
更新日
-

収支報告書

文献番号
201406006Z