いわゆる脱法ドラッグの迅速分析法に関する研究

文献情報

文献番号
201405033A
報告書区分
総括
研究課題名
いわゆる脱法ドラッグの迅速分析法に関する研究
課題番号
H26-特別-指定-031
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
花尻 瑠理(木倉 瑠理)(国立医薬品食品衛生研究所 生薬部)
研究分担者(所属機関)
  • 渕野 裕之(独立行政法人医薬基盤研究所薬用植物資源研究センター)
  • 内山 奈穂子( 国立医薬品食品衛生研究所 生薬部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 【補助金】 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
5,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は,次々と新規化合物が市場に登場する危険ドラッグに対応して,危険ドラッグ成分を網羅的に,かつ迅速に分析する手法を確立することを目的とする.厚生労働省では危険ドラッグに対する規制強化を実施し,指定薬物数は平成27年3月末時点で1470物質となった.また,平成26年4月から指定薬物の所持・使用にも罰則が加えられた.しかし一方で,平成26年度においては薬理活性が極めて強い危険ドラッグも登場し,救急搬送事例や交通事故も続出した.これら危険ドラッグの実効的な取締りには,分析鑑定機関において原因化合物を迅速に同定することが重要である.
研究方法
危険ドラッグ製品中化合物を,前処理なしに直接イオン化することが可能なDART(Direct Analysis in Real Time)に,高性能なタンデム質量分析計を連結したDART-MS/MS(四重極/Orbitrap型質量分析装置)を用いて,45種類の指定薬物を対象とした迅速分析法を検討した.危険ドラッグ使用を推測するための手法として,LC-QTOF(四重極/飛行時間型質量分析装置)及びLC-MS/MS(三連四重極型質量分析装置)を用い,危険ドラッグ成分及び代謝物の迅速スクリーニング法を検討した.また,危険ドラッグの迅速な構造確認法として,LCに核磁気共鳴装置(NMR)を連結したLC-NMRを検討した.さらに,危険ドラッグ市場において流通が確認されている合成カンナビノイドの代表的な骨格を元に薬理活性について文献を検索し,今後新規流通が懸念される化合物を予測した.
結果と考察
DART-MS/MSによる危険ドラッグ製品の分析法を検討した結果,乾燥植物細片混合製品の溶媒溶出液,または液体製品を連続分析用モジュール専用ステンレスメッシュに直接塗布して測定することで,MS及びMS/MSスペクトルを効率よく測定することが可能であった.危険ドラッグ6製品において,すべての含有化合物の[M+H]+に相当するイオンが観測され,MS/MSスペクトルが標準試薬のものと一致した.DART-MS/MSでは前処理をほとんど行うことなく,効率良く危険ドラッグ製品分析が可能であり,さらにMS/MS測定により構造類似体や異性体分析にも威力を発揮すると考えられた.一方,危険ドラッグ使用を推測する手法として,LC-QTOF及びLC-MS/MSによる生体試料中危険ドラッグのスクリーニング法を検討した.まずLC-QTOF分析において,危険ドラッグと代謝物362化合物を対象とし,保持時間情報及びプロダクトイオンのモノアイソトピック質量情報を取得して,化合物ライブラリーを作成した.薬物含有生体試料抽出物を用いてLC-QTOF分析を行い,構築した化合物ライブラリーを用いて含有化合物の検索を行った結果,3~5 ng/mL以上の化合物について化合物情報が正しく得られた.また,国内流通危険ドラッグ及び代謝物174化合物を対象とし,LC-MS/MSにおける保持時間情報を取得するとともに,MRM測定条件を最適化した.このMRM測定条件を用いて標準化合物の検出限界を求めた結果,0.05~0.1 ng/mLであった.薬物含有生体試料抽出物について,本法を適用しスクリーニング分析を行ったところ,ターゲットとした全ての危険ドラッグ成分が検出可能であった(0.10~0.59 ng/mL).網羅的なスクリーニング分析が可能なLC-QTOF分析と,ターゲットとする微量化合物の分析が可能なLC-MS/MS MRM分析を組み合わせることにより,より有用な結果が得られると考えられた.危険ドラッグの迅速な構造確認法を検討するために,危険ドラッグ2製品を対象とし,LC-NMRによる分析法を検討した.その結果,1製品からは,目的とする2化合物のNMRスペクトルが観察されたが,もう1製品では,夾雑している別の化合物含量が多く,目的化合物ピークと重なるため,再検討が必要であった.しかし本分析法は,分離精製などの工程を省略でき,迅速に化合物の構造を確認する手法として適していると考えられた.平成26年度に検出された合成カンナビノイドの代表的な骨格を元に文献を検索し,カンナビノイドCB1受容体に対する親和性をとりまとめた結果,1H-indazole-3-carboxamide誘導体の多くの化合物は強力な親和性を有しており,今後危険ドラッグとしての流通が懸念された.
結論
平成26年度後半に危険ドラッグに対する取締りが強化され販売店舗は激減したが,今後も引き続き,危険ドラッグ流通を注視していく必要がある.本研究で提示した,今後出現する可能性がある化合物群予測,迅速スクリーニング法及び構造確認法は,危険ドラッグ成分を網羅的に,かつ迅速に分析する手法として有用であると考えられる.

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201405033C

収支報告書

文献番号
201405033Z