インターネットを通じて国際流通する医薬品の保健衛生と規制に関する調査研究

文献情報

文献番号
201403027A
報告書区分
総括
研究課題名
インターネットを通じて国際流通する医薬品の保健衛生と規制に関する調査研究
課題番号
H26-地球規模A-指定-003
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
木村 和子(金沢大学 医薬保健研究域薬学系)
研究分担者(所属機関)
  • 谷本 剛(同志社女子大学 薬学部)
  • 坪井 宏仁(金沢大学 医薬保健研究域薬学系)
  • 吉田 直子(金沢大学 医薬保健研究域薬学系)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 【補助金】 地球規模保健課題推進研究(地球規模保健課題推進研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
4,924,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
一般用医薬品のインターネット販売が広く認められ、消費者のアクセスが増加する。しかし、ネット上の医薬品販売サイトには許可サイトの他に、個人輸入代行サイトが多数存在する。海外から個人輸入した医薬品には模造薬、無承認薬等が紛れ込み、処方箋未確認、不適正使用の誘発、無資格販売など重大な問題が存在する。消費者には正規サイトと犯罪サイトの判別は困難。模造薬の特徴や侵入方法を明らかにし輸入回避すると共に、真贋判定法を開発し、欧米の対策や健康被害実態から、我が国の模造薬対策の強化に資する。
研究方法
1)欧州・米国の模造医薬品規制法令の施行:①文献検索・情報収集②国際会議参加 2)模造薬による健康被害に関する調査:PubMedで検索式「(counterfeit OR fake OR bogus OR falsified OR spurious)AND(medicine OR drug)」でヒットした2013年以降の英語論文の内容を確認し、模造薬による健康被害論文を抽出 3)個人輸入オメプラゾール製剤(OPZ)の真正性と品質に関する研究:真正性調査、品質試験、解析 4)個人輸入シアリスの真正性に関する研究:外観写真と質問票をEli Lilly and Company米国本社に送付し、真正性の回答を得た。5)個人輸入フルコナゾール製剤(FLCZ)の真正性と品質に関する調査:FLCZを個人輸入し観察試験、真正性調査、品質試験、ラマン散乱分析 6)不純物プロファイル(IP)によるシルデナフィルクエン酸塩製剤(SIL)の真贋判定:個人輸入代行及びカンボジアで現地購買したSIL 104検体を入手、HPLCによる定量とIP作成し、含量に関する品質評価と同一銘柄間での差異鑑別による真贋判定へのIP適用の可能性を検討。
結果と考察
1)欧州・米国の模造医薬品規制法令の施行:欧州評議会医薬品犯罪条約、正規サイトのEU共通ロゴ、処方せん薬個包装の安全機能、米国医薬品供給網の段階的保安強化など、欧米の法令施行の進展を紹介 2)模造薬による健康被害に関する調査:2013年以降、中国で眼科手術で模造ベバシズマブ硝子体内注入による視野障害発生、日本で模造精力増強剤に含まれた多量のグリベンクラミドによる低血糖症例を報告 3)OPZの真正性と品質に関する研究:個人輸入OPZは外観に問題があったが、局方に準拠した品質試験に概ね適合した。しかし、東南アジアで品質不良だったOPZと同じ製造者の製品がインターネット上で販売され注意が必要である。薬事法(現薬機法)および特定商取引法(特商法)遵守サイトは皆無と思われた。個人輸入は服薬指導もなく副作用被害救済制度も適用されないが、国内で医療保険制度下で購入するより高額だった。日本語サイトで処方せん確認サイトは皆無。4)個人輸入シアリスの真正性に関する研究:真正性調査により45製品中、9製品(20%)が真正品、32製品(71%)が模造品、4製品(9%)は不明。模造品は、未承認規格販売5サイトと住所または責任者名不特定の12サイトを介して入手した。また、真正品は、シンガポールまたは米国から発送され、模造品は、中国、香港または日本から発送された。模造品の価格は、真正品より有意に安かった。5)個人輸入FLCZの真正性と品質に関する調査:日本語個人輸入代行12サイトからFLCZを2製品、12サンプル入手した。購入時に処方箋要求サイトは無し。薬事法および特商法遵守サイトは皆無と思われた。真正性調査で1サンプルが模造品と判定されたが、シルデナフィルを含有している可能性があった。模造品が真正品と比べて安価だった。6)PIによるSILの真贋判定:SILの先発品と後発品のPIを純正品と比較解析することにより各製品に使用された主薬原料が純正品のそれと同一か識別することが可能となり、各製剤の真正性が鑑定可能となった。純正品が入手できなくても、不純物プロファイルの解析と品質試験はその真正性の鑑定や偽造性を推定する有力な方法。後発品にも偽造品が出現している可能性があった。
結論
インターネットの個人輸入代行で薬事法および特商法の遵守サイトは皆無と思われた。処方箋を確認する日本語サイトも皆無だった。英米では処方箋未確認サイトは違法サイトとして取締られている。このようなサイトからDiflucanとCialisの模造薬が販売された。欧米では模造医薬品法令が相次いで新設・強化され施行段階に入り効果が期待される。日本にもインターネットを通じて模造薬が流入しており、模造性機能改善薬による健康被害症例が国際誌に報告された。模造薬は真正品に比べ安価だが、薬価収載品は、薬局で購入したほうが個人輸入より安い。医薬品をインターネットで個人輸入することは保健衛生上危険なだけでなく、経済的にも益がない。

公開日・更新日

公開日
2015-07-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201403027Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
6,400,000円
(2)補助金確定額
6,400,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,595,866円
人件費・謝金 1,025,836円
旅費 97,500円
その他 204,798円
間接経費 1,476,000円
合計 6,400,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-06-08
更新日
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