エビデンスに基づく日本の保健医療制度の実証的分析

文献情報

文献番号
201403013A
報告書区分
総括
研究課題名
エビデンスに基づく日本の保健医療制度の実証的分析
課題番号
H26-地球規模-一般-001
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
渋谷 健司(東京大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 多田羅 浩三(日本公衆衛生協会、公衆衛生)
  • 岡本 悦司(国立保健医療科学院)
  • 橋本 英樹(東京大学、公共健康医学専攻保健社会行動分野)
  • 井上 真奈美(東京大学大学院、健康と人間の安全保障、疫学)
  • 康永 秀生(東京大学、臨床疫学・経済学)
  • 川上 憲人(東京大学、精神保健学)
  • 飯塚 敏晃(東京大学大学院、経済学)
  • 近藤 尚己(東京大学、公共健康医学専攻保健社会行動分野)
  • Stuart Gilmour(スチュアート ギルモー)(東京大学大学院、国際保健政策学)
  • Md Mizanur Rahman(エムディー ミジャヌール ラーマン)(東京大学大学院、国際保健政策学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 【補助金】 地球規模保健課題推進研究(地球規模保健課題推進研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
5,103,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 世界保健機関(WHO)の制度比較の枠組みを用いた近年の我が国の保健医療制度の包括的分析としては、多田羅・岡本らによる「Health Systems in Transition(HIT)」(2009年)レポート、渋谷・橋本らによる「英ランセット誌日本特集号」(2011年)がある。UHC(全ての人に基本的な保健サービスを支払い可能な価格で普及させること)が大きな政策目標となったグローバルヘルス分野において、我が国の知見がアジアを中心とした発展途上国から求められている。また、低成長と少子高齢化の中で多くの課題が噴出し、我が国がどのように対応して行くかが世界の注目を集めている。
 上記2つの包括的分析を行なった研究チームが共同で研究を実施し、WHOのAsia Pacific Observatory on Health Systems and Policies (APO)との連携のもと、HITの枠組みを活用し、我が国の保健医療制度の現状と課題、そして、将来像を実証的かつ包括的に分析し、グローバルヘルスにおける政策に資することを主な目的とする。本研究は、HITと2000年度版「世界保健報告:保健システムのパフォーマンス」の保健制度パフォーマンス分析の枠組みに則り行う。
研究方法
 厚生労働省および内閣府で公表済みのデータを用いて、日本の公共政策評価を行うため解析を実施した。我が国における健康とリスクに関する現状を把握するため、1980-2012年における日本と OECD 加盟国の経済変化や人口推移、および主要な保健衛生上の指標に関するデータを GBD プロジェクト2010が公表している特定疾患の負荷に関するデータと併せて統合した。 統合データに対して、1995年以降の保健支出パターンの解析を実施した。統合データは、ヘルスケアの種類や購入販売者間の関係、支払い方法に関する資源分配を決める上での意思決定がどのように行われているかを記述する上でも活用した。日本政府公開もしくは学術文献記載の政策改革に関しても、日本の衛生システムの物的もしくは人的資源における主要な変化も含めて本報告書にてまとめを述べる。
結果と考察
 我が国の保健システムに対する系統的な評価結果は、HITレポートに関する中間報告に含まれている。評価の実施により、非感染性疾患(以下NCDs)の増加と高齢化が日本社会に大きく影響していることが明らかになった。NCDsの負荷と高齢化はOECD加盟国のほとんどでも同様に進行中であるが、日本の保健システムにおける物的・人的資源はOECD加盟国内でも平均以下であることがわかった。GDPに占める日本の保健システムへの助成金額の比率はOECD加盟国の多数より低いこと、また自己負担額(out of pocket: OOP)の負荷は発展途上国に比べて高いにも関わらず、健康保険の財政破綻のリスクを示す事実はないことがわかった。また、薬の価格や支払い、また長期ケアシステムに関する政策改革の必要性が明らかになった。本プロジェクトは、現在の「日本の保健医療制度」、「日本人の健康状態」及び「非感染性疾患(以下NCDs)による疾病負担の増大及び高齢化社会といった政策決定者が直面する重要な課題」を体系的に評価した。また、近年行われた主な政策転換の概要及び変遷を提示し、これらが医療施設及び介護システムにもたらした影響について量的手法を用いて検証した。本プロジェクトの大部分は近年の我が国の政策の変遷を考慮に入れたHITの枠組みに基づくHITレポート改訂版の原案となっている。またレポートに加え、過去10年にわたる我が国の保健医療制度の変革から明らかになった教訓はAPOを通してアジアの発展途上国と共有され、各国のUHC達成への道しるべとなることが期待される。さらに、本研究は、21世紀の日本の保健医療制度に関する将来像を示し、2016年開催のG7/G8保健アジェンダとして寄与する。また日本がUHCの達成までに辿った道筋を、現在保健医療制度を構築する各国と共有するための方策を提示する。
結論
我が国の保健システムに関する最新の包括的な評価の予備的分析とHITレポートの初校を作成した。次年度は、今回得られた成果を元に HITレポートを完成するとともに、目的外申請によって取得したデータをもとに、より詳細な解析を実施する予定である。

公開日・更新日

公開日
2015-06-15
更新日
-

収支報告書

文献番号
201403013Z