文献情報
文献番号
201403006A
報告書区分
総括
研究課題名
国連ミレニアム開発目標の達成に関する研究
課題番号
H24-地球規模-一般-010
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
中村 安秀(国立大学法人大阪大学 大学院人間科学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 澤村 信英(国立大学法人 大阪大学 大学院人間科学研究科)
- 池上 清子(日本大学 大学院総合社会情報研究科)
- 横田 雅史(NPO法人 HANDS)
- 垣本 和宏(大阪府立大学 第1学群人文科学系)
- 小林 潤(琉球大学 大学院保健学研究科)
- 高橋 謙造(帝京大学 公衆衛生専門職大学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 【補助金】 地球規模保健課題推進研究(地球規模保健課題推進研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
1,682,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
2010年9月のミレニアム開発目標(MDGs)国連首脳会合において、菅首相(当時)は「希望を担う次世代への約束」として母子保健分野と基礎教育分野に焦点を当てた国際協力を言明した。このコミットメントが国際社会から好意的に受け止められた理由は、基礎教育においては、学校・コミュニティ・行政が一体となって包括的な学習環境改善を行うことをめざし、母子保健においては、妊産婦の定期健診、新生児ケア、病院へのアクセス改善、予防接種などのパッケージ化を意図しており、民間セクターやNGOなど市民社会の参画も期待されていた。
本研究では、この理想的なコミットメントを、(1)現実の国際協力の世界的な動向の中での意義やエビデンスを分析し、(2)その理論的な枠組みを構築することにより、(3)政策提言として広く国際社会に発信することにある。
本研究では、この理想的なコミットメントを、(1)現実の国際協力の世界的な動向の中での意義やエビデンスを分析し、(2)その理論的な枠組みを構築することにより、(3)政策提言として広く国際社会に発信することにある。
研究方法
本研究においては、以下の6項目の研究調査を実施する。これらの全体の統括を研究代表者である中村が行なう。従来のような研究分担者による個別の研究の寄せ集めではなく、本研究班は研究分担者全員の研究の融合を目指しており、上記の分担研究者の役割は相互に深く関連しあっている。
①ドナー支援状況調査:
②文献レビューによる政策分析:
③質問紙・インタビュー調査:
④DHS(Demographic Health Survey)の2次分析:
⑤理論的枠組みの構築:
⑥フィールド調査と国内フォーラム:
①ドナー支援状況調査:
②文献レビューによる政策分析:
③質問紙・インタビュー調査:
④DHS(Demographic Health Survey)の2次分析:
⑤理論的枠組みの構築:
⑥フィールド調査と国内フォーラム:
結果と考察
母子保健分野の日本の国際協力支援の現状分析、教育分野の日本の国際協力支援の現状分析、国際機関・2国間ドナーの戦略の分析、包括的文献レビューによる政策分析、第8回母子手帳国際会議(ケニア)における質問紙調査をはじめ、個々の分担研究者による調査研究を遂行した。
最終年度には、アフリカの母子保健に関する国際シンポジウムを国連大学において開催し、本研究班の成果を各国の専門家や国際協力機構などの国際協力機関や市民社会と共有することができた。また、日本国際保健医療学会と協働して、日本熱帯学会・日本国際保健医療学会の合同学術大会において、ポストMDGsシンポジウムを開催し、研究成果の社会的な発信を行った。
途上国だった戦後日本が世界最高水準の乳幼児死亡率や平均余命を誇るようになった背景には、貧しいなかで苦労しながら時代を切り拓いてきた先達の努力があった。私たちにとっては過去の遺産のようにみえるが、アジアやアフリカの視点からは、その貴重な経験と知恵はグローバル時代の今日的課題を解決するカギの一つである。戦後日本の保健医療における発展の軌跡がもつ現代的意義を再確認して、その成果を光だけでなく影の部分も謙虚に世界に発信することこそ、重要な国際協力であろう。
最終年度には、アフリカの母子保健に関する国際シンポジウムを国連大学において開催し、本研究班の成果を各国の専門家や国際協力機構などの国際協力機関や市民社会と共有することができた。また、日本国際保健医療学会と協働して、日本熱帯学会・日本国際保健医療学会の合同学術大会において、ポストMDGsシンポジウムを開催し、研究成果の社会的な発信を行った。
途上国だった戦後日本が世界最高水準の乳幼児死亡率や平均余命を誇るようになった背景には、貧しいなかで苦労しながら時代を切り拓いてきた先達の努力があった。私たちにとっては過去の遺産のようにみえるが、アジアやアフリカの視点からは、その貴重な経験と知恵はグローバル時代の今日的課題を解決するカギの一つである。戦後日本の保健医療における発展の軌跡がもつ現代的意義を再確認して、その成果を光だけでなく影の部分も謙虚に世界に発信することこそ、重要な国際協力であろう。
結論
本研究の期間中に、日本の国際保健を取り巻く環境は大きく変貌した。「希望を担う次世代への約束」として、2010年9月の第65回国際連合総会の冒頭の首脳会合において、当時の菅直人首相が表明した菅コミットメントは、いまや誰もその存在を振り返ろうともしない。また、ポストMDGsの議論は混迷を深め、当初の予定よりも大幅に遅れた形で、2015年9月の国連総会で新しいグローバル目標が発表される予定である。しかし、MDGsが世界を席巻し、アフリカやアジアの国々でカウントダウンが唱えられたような熱烈歓迎の意志表明は、先進国からも途上国からも聞こえてこない。目標設定とそれに関わる財源確保を求める冷めた視線が注がれているにすぎない。
そのような世界情勢のなかで、「社会を構成するすべての人々が、そのとき社会が提供できる最高の医療を受けることができるような体制を実現するためには、どのような制度的、財政的条件を整備したらいいか」と問いかける、社会的共通資本(Social Common Capital)としての医療の視点を再評価する必要がある。今後は、人間の安全保障(Human Security)という概念との整合性も考慮しつつ、コミュニティのempowermentと保健医療システム強化というprotectionを統合する形のプライマリ・ヘルスケアの将来像を見据えていくべきであろう。
そのような世界情勢のなかで、「社会を構成するすべての人々が、そのとき社会が提供できる最高の医療を受けることができるような体制を実現するためには、どのような制度的、財政的条件を整備したらいいか」と問いかける、社会的共通資本(Social Common Capital)としての医療の視点を再評価する必要がある。今後は、人間の安全保障(Human Security)という概念との整合性も考慮しつつ、コミュニティのempowermentと保健医療システム強化というprotectionを統合する形のプライマリ・ヘルスケアの将来像を見据えていくべきであろう。
公開日・更新日
公開日
2015-06-09
更新日
-