文献情報
文献番号
201403002A
報告書区分
総括
研究課題名
東アジア低出生力国における人口高齢化の展望と対策に関する国際比較研究
課題番号
H24-地球規模-一般-003
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 透(国立社会保障・人口問題研究所 人口構造研究部)
研究分担者(所属機関)
- 小島 宏(早稲田大学 社会科学総合学術院)
- 相馬 直子(横浜国立大学 大学院国際社会科学研究科)
- 菅 桂太(国立社会保障・人口問題研究所 国際関係部)
- 馬 欣欣(マ キンキン)(京都大学 大学院薬学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 【補助金】 地球規模保健課題推進研究(地球規模保健課題推進研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
3,150,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
2000年代に起きた韓国・台湾をはじめとする東アジアの急激な出生率低下は、日本を上回る急激な人口高齢化をもたらす可能性がある。一方で早くも1980年代に出生促進策に転じたシンガポールから、いまだに出生抑制策を続ける中国まで、東アジア諸国の少子化への対応は大きく異なる。経済発展の段階に加え政治体制も異なるため、雇用や社会保障に関する多様性も、東アジアでは特に大きい。このような状況の多様性のため、高齢化への対応として社会保障・福祉政策にとどまらず、家族・経済・雇用・移民といった関連する政策を統合的に把握する必要がある。
研究方法
これまで申請者らが行って来た研究では、韓国・台湾・シンガポールの出生率低下を含む家族人口学的変動と、出生促進策を中心とする家族政策を比較分析してきた。そうした土台に立って、本研究では人口高齢化とその社会保障・経済成長・社会変動に対する影響、および高齢者対策を中心とする人口政策について比較分析を行う。具体的には文献・理論研究(1年目)、比較分析(2年目)、政策評価・提言(3年目)の段階を踏んで、東アジア低出生力国における高齢化への対応が日本の政策展開に対して持つ示唆点と、日本が提示し得るモデルを明らかにする。
結果と考察
「未富先老」は中国で言われているが、準備が整わない中での急速な高齢化はほとんどの新興国・途上国に共通する問題と言える。経済発展には多様な要因が関わっているが、人口減少・高齢化が顕在化するほど経済発展が困難になるのは確実だろう。すでに人口ボーナスを使い果たしつつある中国が高度成長を長期にわたって維持するのは困難に思える。韓国では圧縮的都市化により家族支援の弱体化が進んだが、台湾は都市化が緩慢で高齢者の生活は韓国ほど悪化していない。中国は戸口制度によって、韓国のような極端な離農向都移動は抑制されていると考えられる。
結論
日本とシンガポールの公的移転は比較的充実しているが、ごく最近国民皆年金化が達成された台湾と中国は遅れており、韓国はその中間に位置する。家族移転は韓国が最も脆弱で、台湾は厚いように思われる。勤労所得や資産運用は、中国が最も脆弱と考えられる。中国は法的に親孝行を義務化し、家族主義の涵養によって社会保障制度の未整備を補完しようとしている世界でも稀な国で、移民の受入が不可能な点も特徴である。中国以外の四ヵ国では、高級人材の獲得競争が加熱する可能性があり、移民政策をめぐる真剣な議論が必要な時期に来ている。
公開日・更新日
公開日
2015-05-13
更新日
-